シリーズインデックス:わが社の事業承継

【第33回】理念の理解が未来を創る (株)つくば食品 代表取締役 八巻 大介氏(茨城)(2016.12.28)

八巻大介社長 (株)つくば食品 代表取締役 八巻 大介氏(茨城)

(株)つくば食品(八巻大介代表取締役社長、茨城同友会会員)は液体調味料製造を行っている会社であり、お客さまの要望に合わせた味作りをするというのがスタンスです。圧倒的な対応力を強みに、全国のスーパーやコンビニなどの中食と呼ばれるカテゴリーを中心に液体調味料を提供しています。

 八巻氏が高校2年生の時に父親が脱サラをして起業。地元企業をへて父の会社へ入社してからは、社長の息子として会社を継ぐことを意識しながらも、何をしたらよいのか分からないという時期を4年ほど過ごしていました。父もこのままではいけないと思い、その後取引先に丁稚奉公に出ることになりました。

「人格を変える」事業承継への覚悟

社屋外観  丁稚奉公先は大手の食品商社であり、配属された場所がコンビニエンスへ食材を供給するハードワークな部署でした。同世代のビジネスマンと接するにつれ、必要以上の努力をしていない自分をとても恥ずかしく思いました。さらにその職場には父のよく知る人がたくさんおり、初めて父の仕事の成果を感じ、父や自分を受け入れてくれた方々の顔に泥を塗るわけにはいかないという気持ちが芽生えました。

 そして「人格を変えよう」という決意をしました。業界のことも何も知らないなか、そこで出会った仕事仲間との交流の中で成長し、20代後半にしてようやく社会人としてのスタートラインに立ちました。

 社外に出たことで人間的にも成長することができ、何より人はいつでも変われるということを体感し大きな自信となりました。3年強の月日をへて以前は不安だった事業承継も迷いなく自社へ戻りました。

 2010年ごろから本格的に代替わりの話を始め、創業20周年となる2015年に事業承継をすることが決まりました。タイミングよく茨城同友会にもその年の11月に入会しました。

事業承継への準備と変化していく会社

社内の様子  2007年、八巻氏が会社に戻ってからは、採用をすべて新卒者に切り替えました。以前は中途採用が中心でしたが、入っては辞めるという状態を繰り返す身内しか働き続けることができない職場環境を変え、社員をしっかり育てようと新卒採用を行うことにしました。

 新卒社員を積極的にOFF‐JT(職場外訓練)に出し、経営計画発表会を全員参画型に変更。同友会型のグループ討論を行い、社内イベントを社員主導で開催するなど、同友会で手法を学び即実践することで、社内が大きく変化していきました。

 社員も定着して手ごたえを感じ、自分も含め幹部社員が盛り上がっている矢先、新卒で採用した人たちが次々に辞めていきました。新卒者の相次ぐ退社で、幹部の人間関係にも歪みが出てしまいました。そんな状態の幹部のもとで、退職者にも拍車がかかっていきました。

 事業承継という大きな出来事を前に行動の目的を見誤っていました。事業承継は通過点であり目的でない。これまで計画的に行ってきたことは、会社の維持発展のためではなく、事業承継を円滑に乗り切るために必要な事でした。事業承継=目的になってしまっていたのです。

 なぜ自分が会社を継ぐのか、経営者としてどんな会社にしていきたいのか、何もないままの変革。想いがないから幹部もバラバラ。会社の存在意義・夢・理想が何もないまま環境だけが大きく変化し、振り回された社員が次々と離れて行きました。

「やり方」より「考え方」

 そんな中で気づいたことが、「やり方」より先に「考え方」を持たないといけないということです。同友会の先輩経営者の人材育成に対する考え方の中に、「鬼と金棒」というものがあります。「鬼」は、生き方や考え方、「金棒」は知識や技術のことです。鬼が育たないと金棒を大きくしても振り回されてしまうから、鬼を大きくして、より大きな金棒を持ちなさいという考え方です。「これが自社の現状に当てはまっていました。経営者としての人格ができていなかったのに、同友会で得た手法を使うことで、社員を振り回してしまっていたのです」と八巻氏。

 そこでもう一度、自社の経営理念を理解することに努め、経営ビジョンを考え、自社での定義をしっかりと形にしていきました。自分の言葉で理念を成文化し、幹部とも話をして未来を描けるようになりました。

 当時、幹部社員の成長にはあまり期待をせず投資もしていませんでした。しかし会社の未来をつくる上で、幹部社員の成長が必要不可欠だと思い至り、タイミング良く立ち上がった茨城同友会幹部社員研修に幹部社員にも参加してもらいました。研修当初、自社よりも規模の大きい会社の経営幹部を前に尻込みしていましたが、意識の高い仲間たちに揉まれ努力し、自社の理念を理解する中で彼は劇的に成長しました。

「事業承継から約1年半が経ち、経営者として自社での取り組みの中で、『共感と合意』を大切にしています」と八巻氏は言います。共感は得られなくても合意までは必ず得てから物事を決定するということです。昨年の幹部社員研修会に参加した幹部が、評価制度の作成を課題にしました。以前トップダウンの形でつくった時は運用を継続できませんでしたが、社員が作成することにより社長が応援する形になり、共感と合意を得やすい形になりました。また社員と共に経営理念の作成や新卒採用活動を行う中で共感と合意が形成されていきます。

計画的事業承継で気づいた大切なこと

 計画的事業承継で最も大切なことは「ありたい姿」、夢や理想を自分と向き合って作っていくことです。社員や家族、お客様や地域社会、いろいろな人たちとどんな未来を歩んでいきたいのか考えることが事業承継のスタートです。特に後継者は、この人に変わったら会社はどうなってしまうのかと不安を持たれやすいため、企業理念に沿って考えられている事が大切です。「理念は社内での判断基準となるものです。共感も合意もなく、社長が決めたから仕方ない、という結論は最悪です。事業を進めるうえで理念を基に社員の共感を得ていくことがとても大切です」と八巻氏は語ります。

 代替わりをして1年半、本当の成果を出すのはこれからです。
従業員の皆さんとともに

会社概要

設 立:1995年
資本金:1,900万円
事業内容:業務用液体調味料製造業
所在地:茨城県古河市下大野2000-25
従業員数:42名(その内パート・アルバイト19名)
TEL:0280-91-3841
URL:http://www.tsukubasyokuhin.com

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