シリーズインデックス:わが社の事業承継

【第41回】迫り来る問題、それでも理念は手放さない 綜合印刷出版(株) 代表取締役社長 田村 仁美氏(鳥取)(2017.02.27)

田村仁美社長 綜合印刷出版(株) 代表取締役社長 田村 仁美氏(鳥取)

「人財育成」、組織・ルールの見直し、そして自己変革

社内の様子01  綜合印刷出版(株)(田村仁美社長、鳥取同友会会員)の創立は1949年。終戦の4年後に祖父の植木隆夫氏が鳥取駅前に立ち上げたのが始まりです。最盛期には大阪営業所、松江支社も合わせて社員120名を超えたこともありますが、現在は鳥取市で約25人の社員と印刷業を営んでいます。

 現在社長の田村氏は、34歳になると同時に3代目に就任しました。先代である父は当時62歳。なぜこのタイミングで、女性の田村氏が就任だったのか?それには、2代目社長(現在は会長)の4人姉妹の長女であったことと、2代目の大病、初代の事故死が大きくかかわっています。

 田村氏が大学生の時、2000年に先代社長の父(当時48歳)が生死を分かつ大手術をし、余命10年の宣告をされました。さらに会長だった祖父は突然の交通事故で2002年に亡くなります。そして、2003年田村氏が入社しました。この時父から「10年なんとか生きるから、10年後には、社長交代するぞ」と言われ、父娘で決心しました。一般的に早いといわれた事業承継は、このような経緯の中で交わされた10年前の約束だったのです。

 2004年11月、鳥取市は「平成の大合併」により、官公庁頼りの仕事が激減。電子入札制度も導入され、売上が約1億円ダウンしました。社長の頭には、小ロット高品質で攻めていく、という方針は頭にはありましたが、社員には理解されず、「方針がない」と不満の声があがります。 そんな頃、鳥取同友会を紹介され2008年に入会します。入会後初の例会で翌月より「経営指針を創る会」が開講されることを知り、参加。半年かけてやっとつくった経営指針を経営会議で発表するも、当時の経営幹部は「まあ、いいんじゃない」。社員への発表は「代が変わってからすれば」と無反応でした。

社長交代までの実践

 経営会議で、幹部より先代社長との方針の違いを指摘されます。このままではいけない、経営理念と経営方針の共有やすり合わせが必要と感じ、懇願して社長と同友会の例会に数回参加しました。さらに翌年の2009年、2代目社長にも経営指針を創る会への参加をしてもらいました。

 この成文化を通して、二人とも「良い会社にしたい」との思いが同じであることを確認しました。また、労使見解(中小企業における労使関係の見解、中同協発行『人を生かす経営』所収)上の二人の思いが、「社員はもっとも信頼できるパートナー」に一致し、新理念が完成しました。

 そして、理念実現をめざす取り組みとして、「西町文庫」と「ARTECO」の新部門を2つ立ちあげ、理念の浸透のためには、「チャレンジシート」(理念と3つの方針、今年度の課題と個人の今年度の役割・課題・目標、それを達成するための手段・計画をシートにしたもの)や、同友会例会のグループ討論方式の「勝ちグセ研究会」、さらに、理念実践力向上のための「デザイン研究会」をスタートしました。

 2011年には、少し改訂した経営指針を発表し、またいろいろな取り組みを始め、頑張ってくれた社員に感謝をしたいとの思いで「一燈(いっとう)賞」という表彰を始めました。

 2012年は、理念の「お客様の繁栄を支援する」の部分を向上するために営業改革を、また、次世代のリーダーを育てたいと思い「品質向上研究会」を開始しました。

 そうして、2013年5月は専務面談をして、9月に社長を交代しました。

社長交代、迫り来る問題 疲れて見失う「働きがい」

社内の様子02  そんな取り組みの間に、社員からさまざまな声があがってきます。

 社員(1)新規採用したパート勤務の女性に、「一年後正社員を考えよう」と言っていましたが、「いつになったら、私正社員になれるんですか?」「本当に私は必要とされていますか?」と迫られ、財務状況を会長とで検討し、もう少し見送ることにすると、「信じていたのに」と失望されてしまいました。
社員(2)いろいろと問題の多い営業社員「社員の生活をどう考えていますか?」「もう少し社員のこと考えたほうがいいですよ」と詰め寄られます。
社員(3)印刷課の社員「うつと診断されました。僕はどうすればいいですか?」対応する周りの社員は「こっちがノイローゼになりそうです」と言われます。
社員(4)営業課の妹社員「ちょっと、お姉ちゃん、大変!」「社長が何考えているかわからないって!」「みんな辞めるって言ってるよ!」。
社員(5)新工場長候補と新課長補佐から「経営会議って、たいしたことしてないですね」
社員(6)会社に長く居たい派対早く帰りたい派が存在。
社員(7)もっとコミュニケーション派対黙って仕事派もいます。

 いろいろなことが次々と迫ってきて、「もういやだ!」「いきいきと働くって何?そんな理念があるから苦労する?」「いっそ理念からはずそうか」と思い悩みます。しかし「私らしくない、勝ちパターンじゃない」「前はもっと、社員やお客様、地域の人の気持ちに沿って仕掛けていた」「あのころの感覚を思い出そう」と、発想の転換を図り踏み出しました。

自己変革〜「人財育成」〜組織・ルールの見直し

 ストレス発散、研修会参加、同友会の幹事会・理事会に参加、少し遠方のお客様へも会いに出張、たくさんの人と出会うなどし、「Happyを注入」することで、自分を取り戻します。

 その後「人財共育」として、勝ちグセ朝礼開始。また、現状で不足と感じた、コミュニケーション・アサーション、ファシリテーション、ディベート、そして2015経営労働問題全国交流会(鳥取開催)で「働きがい」について学びます。

 そして「組織・ルールの見直し」として、経営会議設計・資料刷新、経営方針策定の仕組みの見直し、課長刷新、役割分担の見直しを実践しました。

社員への対策

 そして今まで苦心していた社員への対応を見直し、下記のように計画的に対策を実践していきました。

社員(6)それぞれの役職に対応して「事案の性質による判断者のレベル」を改定。
社員(2)(4)(5)経営会議を作戦会議に、方針策定月間・人災育成月間・生産性向上月間・人事評価月間・働き方月間を取り入れ、順次課題解決。
社員(7)職場のコミュニケーション講座「意思疎通」「自分とは違う他人」アサーション(あなたも私も肯定)。
社員(2)(4)(5)(6)(7)管理職では再編成として課長総入れ替え、補佐の役割再設定(課長の補佐役、社員の規範)、課長補佐以上はビジネスマネージャー検定の受検。
社員(4)改善し続ける会社づくりで対応。
社員(2)(4)個人面談で経営指針書説明・勝ちグセ朝礼(意思が伝わる朝礼へ)

あの社員は今

 その結果、あのときの社員はというと、こんなに変わりました。

社員(1)製本課パートは正社員に。「私、めっちゃ働きます!」
社員(2)営業課因縁の社員は別の会社へ。
社員(3)生産課スタッフは回復。
社員(4)営業課妹社員は、お客様にまっすぐ。
社員(5)課長補佐(元工場長補佐)、新課長の右腕、研究熱心、すぐ改善。
社員(6)新課長は「自分たちでやれることは、やればいいとわかった。改善チーム組ませてください」といってくれた。会議の時間厳守、喫煙室利用は17:30まで。残業は生産管理のため、申請。
社員(7)もっとコミュニケーション派(変革したい人)は他人の考えが分からない自分の考えが通らないことへの不満があった。反対に黙って仕事派(熟練した人)は今のやり方でよいと思っている人。そこで変革したい人を新課長に据え、主となり改善を進めることで改善。

 そして、現在は「一丸となってお客様へサービス体制!」を進めています。

課題は克服すればいい

 いろんな問題が起こりましたが、「自己変革」したことで「組織・ルールの見直し」ができ、そして「人財共育」できました。どんな課題でも克服していけばよい。これからも、いきいきと働き、社員と共に幸せになりたいと思っています。

経営理念

知恵と優しさの育つ美しい社会づくりに貢献します
1.お客様の繁栄と豊かな表現活動を支援します
2.社員ひとりひとりが いきいきと共に働き 育ち合う会社をめざします
3.健やかで美しい社会づくりに貢献します

会社概要

設 立:1949年
資本金:1,000万円
年 商:2億円
事業内容:印刷・出版に関する製造と、企画・デザイン
従業員数:25名
所在地:鳥取県鳥取市西町1-215
TEL:0857-23-0031
URL:http://www.sogoprint.co.jp

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