シリーズインデックス:わが社の事業承継

【第42回】“チンピラ経営者”からの変革 (有)三和興産 代表取締役社長 渡部 伸哉氏(愛媛)(2017.03.22)

渡部伸哉社長 (有)三和興産 代表取締役社長 渡部 伸哉氏(愛媛)

 (有)三和興産は現社長渡部伸哉氏の祖父が設立し、二代目の父親から継承して三代目です。主な事業は土木と塗装工事の二本柱。石油精製工場内で装置のメンテナンスに関わる土木工事や原油・石油製品タンクの外面塗装・内部のコーティングをするなど、受注型企業です。愛媛同友会は入会して14年目。これまでに社員教育委員長を歴任し、現在は今治支部幹事長を務め、2017年度は愛媛同友会「経営フォーラム」実行委員長でもあります。

ワンマン経営の父親からの継承

社屋  もともと渡部氏は学生時代から自ら後継者になる意識もなく過ごし、大学卒業後も東京本社の大手建設会社へ就職。2003年に退職し、28歳で後継者として地元の愛媛へ戻り、(有)三和興産へ入社しました。当時はすべて社長の采配で会社のことが決まり、社員が会社について何もわからない典型的なワンマン経営でした。渡部氏は現場社員と同じ仕事で、ワンマン体制を嫌って社長のマネジメントの仕事を自ら行うように意識していきました。

 ところが、当時の渡部氏は体制をとにかく変えたい気持ちが先走り、自分の考えだけですべて会社を変えようとし、もうけのことばかりを考える、いわば「チンピラ経営者」だったと言います。当時は社員からの積極的な提案も「これではもうけられない!」ともうけだけで評価して怒鳴りあげ、会社の発展のために「みんな残って残業をしよう!」と残業を推進する後継者でした。父親が何もかも決めているのを嫌っていたのに、自分も全く同じことを繰り返していたことに気づくまで時間が相当かかり、今では考えられない状態だったと振り返ります。

“記念”すべき経営指針社内発表

 愛媛同友会の出合いは今治支部設立時に親戚の越智堅太郎氏(現・今治支部長)に紹介されたのがきっかけです。同友会では例会の座長を1年間ずっと務め、同友会大学で愛媛同友会草創期の方々の報告を聞いて自社の経営課題をどう解決していくかを学び、全国行事にも積極的に参加。当時の同社には社是や経営理念がなく、経営指針策定の必要性に共感し、経営理念をつくって同友会で学んだことを自社で実現させていきたいという思いでした。

 経営指針成文化セミナーに参加して指針書を策定し社内発表へ期待を燃やしていたところ、セミナーの発表会では参加者からの意見に「この指針書は、あんたの思っていることだけで社員のことが何も書かれていない」と指摘を受け、「内心カチンときた」と言います。

 後日、社員を集めて社内発表会を行うも、このときの社員の冷ややかな目は「一生忘れることができない」針のむしろ状態だったと語ります。発表すれども会社は何も変わらず、逆に反発する社員さえたくさんいました。“記念”すべき第1回目の指針発表会でした。

ターニングポイント〜社員の“直言”〜

 「チンピラ経営者」からの脱却と変革のターニングポイントは新卒採用を始めて社員教育に力を入れ始めたことと、社員の直言を受けてワンマンな考えを切り替えたことでした。

 あるとき同友会で、社員のシミュレーション年表を作って将来を「見える化」することを学びます。社員数を増やして売上を倍にしたいという単純な計画でお金の数字や社員名を年表へ入れていったところ、10年後には定年退職で社員が半分以上いなくなることに初めて気づきました。この時から危機感をもって新卒採用に取り組み始め、会社の成長には今から入る社員の教育が重要だと訴えたところ、社員も実は危機感を持っていて、共感して取り組み始めるきっかけとなりました。また、社長就任後のあるとき、現在でも中心となっている社員に「社長の思いはよく分かる。けれど、給料が何も上がらなければ辞めるしかないよ」と直言され、このとき渡部氏は素直にうれしかったと言います。

 すぐに社員にこたえるべく昇給制度や資格取得による給与制度を設け、新卒を迎え入れるためにも就業規則を整備。それまでは休暇の手続きも分からない会社で、今は各自きちんと有休も取得しています。年1回の社員面談も始め、社長だけでなく上司と自己評価もあわせて行っています。社員教育では、これまで自分が常にすべて考えてきたことを社員へ「任せる」ことにして自らは営業に徹し、いまでは毎昼6人のリーダーだけで打ち合わせ、お金や予算も預けて1カ月間・1週間の工程、納期の管理も行っています。「任せる」ことで社員も変わり、言わなくても意欲を持って現場が進むようになり、何かあれば「社長、これはおかしい」と素直に言ってくれることは何よりの財産です。

 社員教育の重要な教訓は、いかに社員と向き合えるかに気づけるかです。同友会で学び仕組みを多くつくり変えても、社員と向き合えていなかったのではないか。何でも言ってもらうように改革しています。経理公開も始めて今では会社の利益は社員全員が把握し、交際費も公開しています。社長の交際費が多い月次には、会議の中で社員が「交際費が高いな」と話すなど何でもしゃべれるようにしています。このことは公私混同をせず社長自身の戒めにもなっています。

 一度はデスクにしまった指針書も見直しを再開し、今では更新8回目。これまで社員に指針書を配布してもすぐロッカーにしまわれていました。指針書を手帳サイズにして現場仕事で水にぬれてもよい指針書を製作。ふだんから身につけて「魂はここにある」と認識してもらうために常に持ってもらっています。

経営理念

私たちはお客様との信頼関係を基本に、綺麗で安全な製品づくりを通じて、お客様への安心をご提供いたします
私たちは建設を通じて心と技術の向上を目指し、お客様との繋がりを深め、皆が幸せになれる会社を目指します

会社概要

設 立:1972年
資本金:300万円
従業員数:23名
事業内容:建設業(土木建築業、とび土木工事業、塗装工事業、事業系一般廃棄物収集運搬業)
所在地:愛媛県今治市菊間町種4555-1
TEL:0898-54-4923

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