シリーズインデックス:キラリと光る小さな企業

【第10回】職人の「対応力」こそ会社の強み (株)高栄塗装 代表取締役 久高 洋司氏(静岡)(2017.07.12)

久高洋司社長 (株)高栄塗装 代表取締役 久高 洋司氏(静岡)

指針成文化から生まれた職人たちとの距離

社屋と久高社長  静岡県静岡市清水区、東名高速道路清水インターチェンジのすぐそばに、(株)高栄塗装(久高洋司社長、静岡同友会会員)があります。戸建住宅や橋梁、公共施設まで幅広く塗装工事を請け負っています。

 同社の代表取締役である久高氏は26歳の時、地元の後輩に声をかけ、勢いで高栄塗装を創業。2年目には10人ほどの規模になり、皆で楽しく仕事をしていましたが、5年目に入ると利益率や職人仲間との意識のずれなどから、会社経営に限界を感じます。「もうやりたくない」そんな風に考えていた折に、建設業の会員から勧められて静岡同友会に入会。同時に、「経営指針を創る会」(以下「創る会」)に参加しました。創る会の課題に悪戦苦闘するも、「会社を良くして、利益の出る仕事がもらえる会社にする」と心に決め経営指針づくりに取り組みました。

 1年後、試行錯誤を重ねた経営指針書が完成しました。さっそく社員に説明しましたが、今まで「職人」だった久高氏が突然「経営者」になって経営指針を語る姿は、職人たちになかなか受け入れられませんでした。むしろ、一生懸命語るほど社員と離れ、どんどん孤立していきました。

自己変革と指針の実践で会社を「塗り替える」

 悔しさにさいなまれ、「会社を良くしようとしているのに何で分かってくれないんだ」と思い悩む日が続きました。そんななか、今一度、自分が何のために仕事をやっているのかを自問しました。「自分がつくりたい会社は、下請けから脱却し、適正な価格でお客様に喜ばれる仕事をし、社員が家族を養えるような会社。そのような会社になるためには、自分が親方ではなく経営者にならなければならない。大変な道だが、下請けの辛さに比べたら、社員教育や指針の実践の難しさの方が、よほど挑む価値がある」。そう考えた久高氏は、あらためて本気で社員と向き合うことを決意します。そして「私が結果を出さなければ、いくらきれいごとを並べても社員が言うことを聞くわけがない」と気づき、まずは社内でだれよりも早く出勤すること、勉強の場に積極的に出向くことなどすぐに取りかかれることから自分の行動を変えていきました。すると、徐々にその変化を感じた社員が久高氏の言葉に耳を傾けるようになっていきました。

 久高氏はその後、5カ年計画に掲げた会社の法人化、社屋の移転、給与体系の整備などを実現していきました。その中でも特に力を入れたのが、公共工事の受注でした。「勢いで始めた塗装屋が、市から指名を受けられるようにまでなった、と明確な結果として実感することができる」と、こだわりの理由を語る久高氏。そして2016年度、ついに公共工事の指名を受けることができました。「社員全員の目に見える形で、会社の変化を感じることができた」と久高氏は目を細めます。

 現在は、新たな就業規則の作成に取り組んでいます。建築業界では就業規則を整備していない会社も少なくない中で、社会保険労務士の協力を得ながら、さらなる社内環境の充実を図っています。また、雇用創出は企業の地域・社会貢献という観点から、人材採用を積極的に行っています。現在の社員の平均年齢は38歳。創業当初からずっと働いている人もいます。社員を大切にしながら新たな人材を確保し、さらなる会社の発展をめざしています。

会社を輝かせ成長へと導く、2つの「対応力」

 経営者の自己変革から、社員も会社も変わり、成長へと転じた同社。その強みを久高氏は、二つの「対応力」だと語ります。一つは、接遇面の対応力。職人気質でぶっきらぼうな人の多い建築業界で、お客様から一社会人として良い評価を得られるような対応を、皆で心がけています。このような社員・職人が育つよう、社員教育では感謝の気持ちを持って接すること、そして、会社のルールや方向性に背くことや、他者に対して横柄な姿勢を取ることは見過ごさず徹底的に話し合うことを行っています。

 もう一つは、幅広い技術を持つ多能工に支えられた対応力。一般住宅の外壁塗装から公共工事、屋根の防水工事、さらにはトンネルなどで使われるコンクリートの長寿命化対策の工事も受注しています。多能工の積極的な育成は、経営方針として掲げ取り組んでいます。久高氏は根気強く丁寧に語りかけることを繰り返し「今これをやっておけば将来こうなれるんだ」と伝えてきました。新たな現場に行くということは、職人にとってチャレンジですが、会社にとってもチャレンジです。このことを職人に伝え、実践していくことが、他社との差別化につながっています。

 現在は一次下請5割、元請3割。二次、三次の下請けではなかなか利益の出ない業界で、塗装技術だけでなく社員の人間性と対応力で仕事を受注しています。元請けの仕事をやるようになって収益性が改善されただけでなく、その立場を経験したことによって相手の立場に立った対応ができるようになりました。

 「何のために経営しているのか」の問いに「社員やその家族のため、地域・社会のため」と答える久高氏。「会社の売上は、どれだけ私たちの会社が世の中に必要とされているかという指標であり、その利益は私たちの会社の力を表している」と語ります。

 社員の人間性を高め合う会社づくりで「売上3億円」の目標に向かい、さらなる「よい会社づくり」にまい進しています。
社員とともに

経営理念

1 私たちは技術・品質・知識の向上に努め、お客様の要望に正確に答えます。
2 街を彩り、安全・安心な環境を創ります。
3 健全で、前向きに人間性を高めあえる職場を創ります。

会社概要

創 業:2001年
資本金:500万円
事業内容:塗装工事業、防水工事業、とび、土木工事業
従業員数:15名
所在地:静岡県静岡市清水区八坂町481-1「KOEIビル」
TEL:054-659-3645
URL:http://koeitoso.com/

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