【第12回】「絞る」ことで見えた自社の財産 (株)大顕設備 代表取締役 佐竹 壮夫氏(岐阜)

佐竹壮夫社長

(株)大顕設備 代表取締役 佐竹 壮夫氏(岐阜)

 経営者になりたいという夢に向かい、若いころから資格取得やマネジメントの勉強を続けていた佐竹 壮夫氏((株)大顕設備 社長、岐阜同友会会員)。縁があって、自身の病のため、後継者を探していた(株)大顕設備の前社長と出会い、会社を引き継ぐことになります。ただ、この会社は、実質開店休業状態。社員ゼロ。取引先ゼロ。さらに、佐竹氏自身も業界経験ゼロという状態で、2003年に社長に就任しました。

 社長就任の一年ほど前から、給排水衛生設備などの工事の基礎を慌てて学び、就任後は、会社の伝票から以前の取引先を探し、営業して仕事の確保に奔走します。そのかいがあって、大手の下請けを中心に少しずつ仕事を増やしていきました。

 同時に「仕事が増えたら人を雇う」を繰り返し、最高でパート、アルバイトを含め15名ほどの会社に成長しました。

どうすれば社員が働きやすい環境をつくれるか

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 当時の仕事は、遠くの現場がほとんど。現場に着く時間を考え、社員は会社に朝早く出勤し、同じ時間をかけて帰るので帰社は夜遅くなるという毎日でした。また、給与は日給月給制で現場が休みの時は出勤なし、月の給与も安定しないという状態でした。

 あるとき、会社に泥棒が入ったため入口に防犯用の録画装置をつけたところ、帰社した社員の「こんなものつけるのに投資するくらいなら、自分たちの待遇をもっとよくしろ!!」という言葉が録音されていました。佐竹氏は今でもその言葉が忘れられません。

 それでも、まずは会社の売上を拡大安定させることが重要で、収益や待遇は後で改善すればよいと考えて何の手も打ちませんでした。

 しかし、ついに社員の不満が爆発します。前兆は、2006年の会社の忘年会。なんと正社員全員が欠席、その翌年、ほとんどの社員が退職し、1年後には、2名の正社員しか残っていませんでした。
 この事件で、佐竹氏は大きな衝撃を受けます。さすがに今までのやり方では立ち行かないと痛感、会社の方向性を模索し始めます。とはいえ、現状では、辞めた社員の仕事の分もあり、自ら現場に入らなくてはなりません。時間のないなか、現場に向かう行き帰りの車の中で、さまざまな講演会のCDを聞きながら、「どうすれば社員が働きやすい環境をつくれるか」を懸命に考えます。そして行き着いた答えは「営業する地域を地元の養老地域中心(車で片道30分の距離)に絞り、元請けを増やすこと」でした。地域を限定すれば、朝早く出社、夜遅くの帰社ということはなくなる。また、元請けならば、自社で価格を決めることができるため、利益の出る体質に変えられる。不安もありましたが、方向転換を意識し、経営指針書を作成。2008年に発表し社内外に向けて宣言しました。

 以後、新聞折り込みチラシや看板、電話帳などによるマーケティングに注力し、現在は営業範囲1万世帯に対して、顧客数は1,500件と実績を上げています。

 給与も日給月給制から完全月給制に変え、さらに「働きやすい会社」へと一歩を踏み出しました。

「お客様の笑顔」と「頼られる喜び」という財産

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 下請時代は、他社と値段競争になって疲弊していましたが、地域を絞り元請けになったことで、値段ではなく、地元のお客様の喜ぶ顔が見えるようになりました。あるお客様から受注した仕事は、別の会社の方が得意で値段も安くできるため紹介したところ、「いいから、あんたのところでやってよ」と言われました。「これは、社員にも、私もとてもうれしかったですね。地域にとって『なくてはならない会社』になりたい。そのために、お客様が困って自社に頼まれたときこたえられるように、水周りの仕事以外でも自社でできるように幅を広げたい」と語る佐竹氏。

 苦境から脱け出るために会社の体質を変えようとした「決意」と経営指針の作成・発表という「宣言」が、(株)大顕設備に「お客様の笑顔」と「頼られる喜び」という新たな財産を生み出しています。

経営理念

感謝・感激・感動を与える・いただく・分かち合う

会社概要

創 業:1962年
設 立:1975年
資本金:1,000万円
事業内容:給排水衛生設備工事・住宅リフォーム工事
従業員数:7名
所在地:岐阜県養老郡養老町大坪559
TEL:0584-32-0768
FAX:0584-32-0782
URL:http://daiken2.net/