【第17回】「顧客の絞り込み」で躍進 スズキ機工(株)代表取締役 鈴木 豊氏(千葉)

鈴木社長

スズキ機工(株)代表取締役 鈴木 豊氏(千葉)

幾多の試練を乗り越え、小さな町工場が全国・世界を視野に挑戦

 千葉県松戸市で産業用自動機械の設計・製作を手掛けているスズキ機工(株)(鈴木豊社長、千葉同友会会員)。同社は鈴木豊氏の父が1976年に創業し、18リットル缶製造機械のメンテナンスからはじめ、経済成長の波を受けて製缶機械の開発・販売に事業を拡充し発展してきた企業です。

バブル崩壊後の経営困難の試練と克服

 1991年のバブル経済崩壊後、同社は次第に経営状況が悪化しました。鈴木氏は父の懇請を受けて1997年28歳で入社するものの売上の9割以上を占める前記の主力事業が年々縮小し、将来の見通しが立たないという厳しい現実に直面しました。また前職の食品関連商社の営業マンとしての縁から食品業界に対応した産業用自動機械事業への転換につながりました。支払い引き延ばしや主力社員の引き抜きを行った取引先が倒産し、年商1億円程度の時に4,000万の貸し倒れが発生するというピンチにも遭遇しました。しかし、文系出身にもかかわらず鈴木氏自身の猛烈なCAD設計・電気制御の勉強と持ち前の営業力が功を奏し、新たな取引先を広げ危機を突破します。

社員の退職を契機に「経営計画書」づくりに取り組む

社内の様子

 入社して10年、明るい兆しが見え始め、38歳で代表取締役に就任しました。しかし、多忙な割に利益が出ない日々が続きます。社長が営業に飛び回る間に、社員から不満が出され、会長の父の一喝で辞職するという出来事もあり、社員との付き合い方を考え直すきっかけになりました。そのころ「経営計画書のつくり方」という本に出合い、「これこそ自社に欠けていたもの!」と気づき、2011年より経営理念、行動指針、社長・社員の心得、人事、給与・賞与などの会社運営に関するあらゆる基本方針を明文化しました。

取引先とのトラブルをきっかけに「顧客の絞り込み」

 しかし、またもやトラブルが発生しました。それは他県の大手食品メーカーより緊急の製作依頼で、見積書と図面を提出しましたが、その案件が“方針変更”と言われて流れました。後日別件で工場に行くと、同社が提出した図面通りの装置が設置されていることに驚がくします。思わず激高、今後すべての取引を停止し、受注案件も全て破棄すると告げて戻るという事態になりました。あらためて冷静になって考えたところ、この工場には片道2時間半もかかり、打ち合わせだけで1日が終わり、その人件費や納品後の不備の解決に何度も通えば到底利益が出ないことを痛感しました。この件を機に思い切って一点物の装置をつくる産業用自動機械事業については、「クルマで1時間以内の顧客との取引に特化する」という基本方針を打ち立てました。

 狭いエリアに経営資源を集中することによって、顧客からの部品交換や特急の製作・納品にも即対応できるなど重宝がられ、売上・利益ともに伸びる結果につながっていきました。また、全社員で毎朝30分、徹底的に作業環境の掃除・整備に取り組むことによって作業効率も驚異的に向上するようになりました。

顧客密着による新製品・サービス開発

ベルハンマー

 そのころ「中期経営計画」と、それを実現するべく「新規事業基本方針」を策定しました。産業用自動機械事業で得られる顧客との密接な関係の中でユーザーの声を収集し、新製品・サービスの提供に結びつける手法を採用。潤滑剤の「ベルハンマー」(金属相互の摩擦を減らしてスムーズに動くようにするもの)や現場用掃除機ノズル「ベルマート」、「パケットリールシステム」、プロ仕様工業用ハサミ「ベルシーザー」などを開発・販売し、数多くの特許や実用新案を取得しています。

 このようなオリジナル商品は、距離の制約を受けないで全国展開できる可能性があることから、全国に拡販するべく「プロモーション戦略」を構築。東京ビッグサイトや幕張メッセで開かれる展示会に精力的に参加し、2015年5月のテレビ番組で「ベルハンマー」が取り上げられ、注文が殺到します。あっという間に売り切れ、知名度が急速に高まるようになりました。

国内外からの見学者

 同社は、現在、環境整備を徹底した効率の良い町工場として、国内外から多数の見学者が来訪するようになり、現在、物流効率の向上や4万件を超える顧客データの合理化に取り組んでいます。また同社が手掛ける製造・加工工場のさまざまな潜在的ニーズは国際的にも必要とされると予想し、アジアや世界にも広げられると構想実現に向けて意欲満々です。

 鈴木氏は「10年前のネット環境では自社の現状の取り組みは不可能だったろう」と言います。

障害者が働く生活介護事業所を支援

 また、2013年には現在の工業団地に移転。旧工場を他社に貸出する際、他社より安い賃貸料ではあったものの、地域社会への貢献を考え、社員全員の合意のもと、松戸市内の社会福祉法人が運営する障害者が働く生活介護事業所の作業スペースとして貸し出し、経済的な自立を支援するという仕組みを考え実施するなど、地域との関わりを意識した経営も実践中です。

 2016年12月に千葉同友会に入会し、共同求人活動に参加し、インターンシップの工夫など、さまざまな手立てを構築中です。

社員とともに

経営理念

(循環する3つの誓い・会社の存在目的)
1.スズキ機工は
社員とその家族の安定した幸せな生活を実現し
物心共に活力に満ちあふれた
皆が集う大切な場所になることを目指します

2.そのために
運命共同体の同志である社員一丸となり
努力精進し成長いたします

3.そして
お客様が感動する商品・サービスの提供を通じて
社会の発展・繁栄に貢献します
私たちスズキ機工は3つの誓いがスパイラルを描き
発展していくことを
経営理念=会社の存在目的
に掲げます

会社概要

設 立:1976年
資本金:3000万円
事業内容:産業用自動機械の設計・製作、潤滑油ベルハンマー等の製造販売
従業員数:16名
所在地:千葉県松戸市松飛台316-3
TEL:047-385-5311
FAX:047-385-5313
URL:http://www.suzuki-kikoh.com/