【第36回】社員と共にブランド化めざす (有)広島金具製作所 代表取締役 水ノ上 貴史氏(広島)

水ノ上貴史社長

(有)広島金具製作所 代表取締役 水ノ上 貴史氏(広島)

世代交代5カ年計画から始まった企業改善

社屋

(有)広島金具製作所(水ノ上貴史社長、広島同友会会員)は、水ノ上氏の祖父が1961年に創業した、建築金物製造の会社です。水ノ上氏が同社に入社したのは1995年。当時の会社は、祖父・父親・叔父がいる同族会社で、所狭しと物があふれる乱雑な工場でした。それでも技術への評価は高かったため、受注は好調でした。

ところが1998年になると、競争激化で利益の出ない状況に陥ります。社内の高齢化も進んでいます。

「なんとかしなければ、自分の時代は大変だ」と感じた水ノ上氏は、「どうやって父ら3人の仕事を引き継ぐか」を考え、2006年にこっそり「世代交代5カ年計画」を作成。若い人の採用に踏み切っていきます。2008年には「3Q6S」を掲げて、工場の改善をスタート。会社の実務の大半を担当するようになっていきました。

リーマンショック後、税理士さんの紹介で広島同友会に入会し、すぐに経営理念を作成して、2013年に「ヒロカネ行動指針」を制定。2014年には経営指針を作成し、さらに2015年には就業規則の全面見直しを行いました。「社員さんとの会話を大事にして、ポイントはどこかをすり合わせることを大事にしてきました」。

並行して、社内の改善作業に取り組みました。「社員のみんなと、どうすれば楽になるかと考えて、小さな改善を進めてきた成果です。電気配線以外は、ほとんど社員さんの手作り。そんな風土になってきたのがうれしいですね」と水ノ上氏は言います。

自社オリジナル製品開発と販路開拓

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自社オリジナル製品の開発に取り組んだのは2003年。初代の「くるピタ君」です。お客様の「壁に直接ビス止めできるかっこいい金具は作れないか」の声に触発されたのが始まりでした。なんとか製品化し、特許も取得しましたが全く売れませんでした。「当時は、PR方法がわかりませんでした。問屋さん任せでは、だれも商品価値など気にも留めずに売ってもらえなかったのです」と水ノ上氏は振り返ります。

そんな同社の転機は2015年。改修需要が高まる中、ホームページを見た方からの問い合わせが少しずつ増え、商品への自信を深めていきます。

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オリジナル製品である「ペタン君+くるくる君改」「くるピタ君」の特長は、狭い場所でも取り付けやすい、アンカー部分が折れて埋没していても固定できるなど、既存の排水設備を撤去させずにいかすことができるほか、作業時間の大幅削減ができるように工夫されているところです(特許取得済み)。これらの工夫は、現場からの声をくみ上げ、実用化したものです。さまざまな軒先曲げラジアル形状の折版屋根に対応可能な、30秒で取り付けられる吊金具「吊ピタ君R」も開発し特許取得しました。

このような現場でのお困りごとを解決するという製品開発テーマは、施工業者には製品のメリットを理解してもらいやすいものでした。そこで取り組んだのが、全国の施工業者へのDM発送でした。キャッチコピーは「人手不足にジャストミート!」。今では全国から問い合わせが来るようになりました。

製品の販売は、各地の同社製品を取り扱う問屋さんを通じて行い、注文や問い合わせがあれば、その問屋さんを紹介します。その地域に既存の取扱い可能な問屋さんがない場合は、さらに上位の商社経由にするか直販を行います。「各地域で問屋さんが持っている信用機能は大事ですから」。

めざせ、ファーストコール

同友会の「企業変革支援プログラム」に取り組んで気づいたのが、顧客満足度調査ができていないことでした。もっとも簡単な方法として、オリジナル製品の箱の中に「アンケート」をしのばせ、直接返信してもらえるようにしました。この結果、施工業者さんからは、作業のたやすさ、美観などで高い評価を受けていることがわかりました。改善提案や要望も寄せられるようになり、得意としているオーダーメイドの問い合わせも増えてきました。

「ヒロカネブランドを構築したい」と語る水ノ上氏。2017年に、10年ビジョンに「めざせ!ファーストコール」を掲げました。現在、全国各地の施工店を回りながら、要望や感想などのヒアリングを進めています。ただ、同社ではこれを営業活動とは呼ばず、新たな付加価値を提案するための「布教活動」と呼んでいます。

「バブル期の建物のほとんどが改修時期を迎えている現在は、大きなチャンスの時代。金融機関や行政機関にも前向きな評価をしてもらえていますし、時代の流れが大きく変わり始めた中で背中を押されている感じです」と、水ノ上氏は目を輝かせています。

経営理念

価値の創造
①関係企業総幸福(GCCH)を追求し続けます。[存在価値]
②ものづくりへの責任と自覚を持ち、自由な発想で挑戦し続けます。[付加価値]
③全てのステークホルダーより必要とされる企業として社会貢献し続けます。[社会的価値]

ヒロカネ行動指針

①相手のためにどうすれば良いか考えて行動します。
②失敗しても「なぜ」ではなく「次にどうするか」を考えます。
③絶えず勉強と実践を繰り返し、常に進化し続けます。

企業概要

創 業:1961年
設 立:1988年
資本金:1,000万円
従業員数:10名
事業内容:雨とい金具・折版屋根部材・別注建築金物などの製造販売
所在地:広島県福山市南本庄2-12-10
URL:http://www.hirokane-m.co.jp/