シリーズインデックス:人が育つ中小輝業

【第11回】あなたと働きたい、生きていきたい ていくあい(有) 代表取締役 竹村 ひとみ氏(奈良)(2018.08.22)

竹村ひとみ社長 ていくあい(有) 代表取締役 竹村 ひとみ氏(奈良)

めざすのは「その人が生きる支援」

 ていくあい(有)(竹村ひとみ社長、奈良同友会会員)は、古い一軒家を借りて通所介護(ディサービス)、訪問介護、居宅介護支援を行っています。竹村氏は元看護師の専業主婦でしたが、訪問看護制度の始まりとともにその道へ入り、やがて自分がめざす看護・介護を実現したいという思いから2004年に同社を創業しました。

 竹村氏がめざす介護を象徴するのが「ミュージック・ケア」という音楽療法です。音楽の特性を生かして、認知症や障害の有無、年齢にかかわらず「その人らしさ」を持って集団音楽療法の場に参加し、周囲と安心感を築きながら一体感を得る体験――その一連の援助を通して生まれる「だれかと一緒にいる」「人に必要とされる」という関係性。同社では、人はそのような関係性にこそ生きている実感を得ると考え、日常生活の中でも「その人が生きる支援」を積み重ねることを大切にしています。

経営者責任として共に育つ社風をつくる

 奈良同友会には創業直後に入会します。やがて「ユネスコ学習権宣言」や「共育」に触れる中で、関係性の中で生きる実感を得るのは、介護される側だけではなく仕事として介護する社員たちも同じだと確信を深めます。また経営指針成文化セミナーで労使見解に出合い、めざす介護も職場も、実現する全責任は経営者である自分にあると気づき、さまざまな社内研修や制度によって学び育ち合う社風づくりに取り組んでいきました。

 薄い冊子を配布して、感想文を提出してくれた社員に給与支給時に3,000円プラスする取り組みを3年続けるところから始め、「本を読む」「自分で考える」「自分の言葉で書く」「仲間と考えを共有する」とステップを踏んでいきました。毎年開催する1泊2日の理念研修では、一人ひとりが自分の考えを発表し質問し合い、お互いを理解し合う時間を重ねています。7年目となった今年は10年後の社会情勢や自社の強みと弱みもみなで考え、10年ビジョンを作成するまでになりました。ある社員は理念研修について「自分を知り、仲間を理解し、自分たちの仕事を確認し合うことで、介護という仕事を誇りに思える貴重な時間になっている」と評します。

来てくれた人材に向き合う

社員さんと共に  自分を知り、仲間を理解することは育ち合う風土を生んでいます。「仕事で要領悪いところがあっても利用者さんの信頼が厚い」「目に見えるリーダーシップはなくても地味な仕事をコツコツするところが尊敬できる」と、社員同士が自分とは違う能力を発揮するほかの社員を認め、評価し合う言葉が日常的に交わされます。

 社員には志望して入社した人もいれば、親の介護で就職が難しかった人、他の職場が合わなかった人がいるなど採用の背景はさまざまです。計画的な新卒採用ばかりではなく、年齢も望む働き方も幅がありますが、経験は問わず本人の事情や将来展望などを聞きながら決め、入った人に対しては徹底的に向き合っています。同社にとって採用とは、「その人と生きていく覚悟」です。前向きになれずにつまずきはじめた若手社員には、実家訪問をして親御さんとともにかかわったり、時に社員の持病や家庭環境、今抱える悩みなども含めて周りが連携して指導やフォローに入ったりします。

みなが生きる職場、生きている実感を得られる職場に

子どもと利用者との関係性  規模が小さく女性が多い職場では、病気での欠員はもちろん社員の結婚や出産、育児、介護という要素をどう織り込んでいくかは死活問題です。これまで決して充足しているとはいえない体制の中で、その時の社員に必要な条件を実現できる方法を模索し、新婚旅行に送り出す長期休暇、産休・育休取得、介護と両立できる労働環境づくりなどに取り組んできました。社員の子どもが待機児童となると、社内で協議の結果、子連れ勤務も受け入れました。1歳の子どもの受け入れには不安や課題もありましたが、認知症の方が子どもを相手によく話したり、いつも動かない足を動かして相手をしたりする様子は、まさに関係性の効果を再確認する機会となりました。ていくあいは、一人ひとりが持つ力を発揮する「働く場」であり、同時に互いの関係性の中で「生きる場」となっています。

社員さんの声

 社員さん 氏名:伊藤あかりさん(入社10年目、35歳)
仕事内容:ケアマネ業務、介護業務

Q1.入社のきっかけは?
作業療法士の資格を取って大きな施設で働き、リハビリの場面だけではなく、高齢者の方がどう日常で生活されているか、どう歳をとっていかれるのかという経験や認識が自分には足りないと思っていました。友人が働く縁でていくあいを見学したとき、まさに「生活」を大切にしている『家』だと感じて、介護は未経験でしたが入社希望を出しました。

Q2.働いてみて思うことは?
当初目的にしていた高齢者さんの生活に関する知識以外にも、相手の目線になることや、仕事への姿勢など自分に足りないものにいろいろ気づきました。それを気づけるのは、日常の中で目立たない部分の仕事も含めて「何をよしとするのか」を社内でよく確認されているからだと思います。

Q3.あなたにとって職場とは? 仕事とは?
周囲にはなぜわざわざ遠い職場に通うの?と不思議がられますが、私にとってのていくあいは、育児しながら働き続けられる環境を一緒につくってくれるし、仕事を通して自分の考え方を豊かにしてくれる「ここにしかない」環境だと思っています。もっと自分の力量をあげ、一緒に働くスタッフとどうしたらより質の高い仕事をできるかを考えていきたいです。

経営理念

『出逢ってくれてありがとう。』
1、ていくあいは、在宅介護のいろいろなニ-ズにお応えし、「あなたに出会えて本当に良かった」と、家族のようなかけがえのない存在になります。
2、ていくあいは、誠実に生き、仲間と夢を語り合い、仕事の喜びを共有し、人として成長しつづけられる会社を創ります。
3、ていくあいは、音楽とともに笑いあふれ、ご利用者さまと一緒に、若者の夢の実現と、子供たちの優しい心を育むお手伝いをして、地域社会に貢献します。

会社概要

創 業:2004年
資本金:300万円
事業内容:介護にかかわる事業一般
従業員数:15名(うちパート8名)
所在地:奈良県奈良市鳥見町2-19-2
TEL:0742-41-2955

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