【第20回】社員の自主的行動で会社が変わった (株)フクテコ 代表取締役 福頼 弘樹氏(島根)

福頼弘樹社長

(株)フクテコ 代表取締役 福頼 弘樹氏(島根)

会社概観

 (株)フクテコ(福頼弘樹社長、島根同友会会員)は、祖父である福頼弘ニ氏が1966年に小物溶接工場として開業して以来、50数年にわたり松江市東出雲町にて、農業用機械や建設資材などの金属部品加工を行っています。

トップダウンによる「効率化」の限界

 国内での農業用機械の需要が減少する中、受注先の開拓や加工範囲の拡大に取り組み、同社では受注量が増加傾向にありました。リーマンショックなどの影響からもいち早く回復して、特に2010年ごろからは、高校生新卒採用や若年者の中途採用を中心に、社員数の増加を図りました。役員を含めた総人員は、2004年20名から、2011年26名、2014年30名となっています。

 創業以来、経営者も現場に入り、社員と一緒になって汗を流しながら、トップダウンで作業の「効率化」を進めてきましたが、人数が増えていく中で、すべてに目配りをすることがだんだんと難しくなってきました。

任せることで社員の自主性を

会社の内部

 そのような中で、2013年に福頼弘樹氏が社長に就任しました。福頼弘樹氏は社長の交代を機に、社内制度の変更や会社の進むべき方向性の提示を行いました。

 まず、組織図を明確にし、部門長を新たに設けて三つの部門に分けました。その各部門で、社員だけの毎月1回1時間の小集団活動(グループミーティング)を開始しました。始めた当初は、会社や他部門への不満や要望が多くなったり、話し合いだけに必要以上の時間がかかったりする傾向にありました。「納期に追われて残業をしている中で、日中の1時間、現場を止めることは、大きな葛藤があった」と福頼氏は言います。それでも活動の内容を社員に任せ続けていると、徐々に、前向きなアイデア出しや、グループでの改善活動を実施するように変わってきていました。さらには、業務負荷のばらつきが発生したときに、社員同士が話し合って部門内外の応援体制を取るなど、自発的な行動が増えてきました。

家族工場見学会を開催

家族工場見学会

 若手新入社員の価値観は多様化しており、幅広い世代が全社一丸となって進むためには「相互理解」を深める必要性も高まってきました。社長就任から毎年1回開催している家族工場見学会では、娘の手を引いて職場をまわる“父親”の姿や、妻に加工設備の説明をする“夫”の姿など、“普段の社員”とは違う、“家族の一員としての姿”を見ることができます。家族が参加できない社員も一緒になって同じ時間を過ごし、イベント運営の役割をそれぞれが果たす中で、お互いがいろいろな一面を見せ合い、理解が深まります。この相互理解が仕事を進める上での円滑なコミュニケーションにつながり、生産性向上に貢献しています。この結果、会社の業績もよくなってきました。

さらなる進化をめざして

 社員の自主的行動による「自律型の生産性向上」をめざすために、若年者を中心に、時間をかけて人材育成と人材定着に取り組んでいます。資格取得や講習受講といった、仕事に直接関係するものだけでないのが同社の特徴です。

 2014年からは、小・中学生および高校生の職場体験受け入れを積極的にスタートさせました。職人気質で口数の少ないベテラン社員たちも、小さな生徒さんには一所懸命工夫して説明をします。この工夫が新人教育のときにも生きています。また家族が来社し、生徒さんや先生方が来社することで、頻繁に外部の方に「現場が見られる」ことになり、職場環境の改善や、明るい雰囲気づくりに成果が出ています。さらには、キャリア教育に協力することで、地域貢献にもつながっています。

 順調に受注が増える中、本人希望に応える形で60歳以上の短時間勤務社員を採用するなど雇用も順調にでき、2018年には総人員が35名と徐々に人員規模が拡大しています。また、新たに「健康経営」への取り組みを始めています。「会社の主役は、社員一人ひとり。それぞれの持ち味を生かした自主的社員づくりを通して、よりよい会社づくりをめざしています」と福頼氏は語ります。

社員さんの声

社員さん

氏名:森廣 克也さん(入社2年目 22歳)    
仕事内容:プレス加工(建築資材用担当)

Q1. 入社するきっかけは何でしたか?
 ものづくりに興味がありハローワークの紹介で見学に行きました。社長をはじめ、社員の皆さんが皆明るく雰囲気がよく、この会社で働きたいと思いました。

Q2. 仕事をされる中での社内の雰囲気はどうですか?
 気さくに先輩方が声をかけてくださり、居場所がないということがないです。皆仲良く仕事をしています。新人研修、先輩のマンツーマンでの指導など、教育に力を入れていただき、その中で社会人としての心構え、専門的な知識を学んでいます。教えてもらう立場から一人前に、そしてリーダーの役割を担えるよう成長していきます。                          

社員さん

氏名:松本和也さん(入社1年目 19歳)
仕事内容:プレス加工(農業用機械用担当)

Q1. 入社するきっかけは何でしたか?
 ものづくりに興味が有り、また子どものころから機械をかまう(さわる)のが好きで入社を決意しました。それまでは農業用機械の事を全く知らなかったので、農業用機械がどんな仕事をするのか調べました。

Q2. 仕事をされる中での社内の雰囲気はどうですか?
 細かいところで指摘を受けるなど、自分の弱い部分に気づかされます。人間関係のよさを感じる会社です。今後の抱負として、失敗をしても逃げない自分になり、皆さんからの期待に応えられるよう頑張っていきます。

会社概要

設 立:1976年
資本金:2,800万円
事業内容:金属部品加工業
従業員数:35名(パート含む)
所在地:島根県松江市東出雲町下意東1634-1
TEL:0852-52-2398
URL:http://fukuteko.jp
フェイスブックページ:https://www.facebook.com/fukuteko/

経営理念

フクテコはものづくりをとおして、
世界の人々の豊かな暮らしを支え、
みんなの笑顔があふれる環境を作り出します。