【第30回】会社の社会的存在意義を問い続けて-(株)ファーマシー木のうた専務 小林 元樹氏(奈良)

(株)ファーマシー木のうた 専務
小林 元樹氏(奈良)

家業から企業へ 薬局からドラッグストアへ

 (株)ファーマシー木のうたの前身小林薬局は1907年(明治40年)に創業され、4代目である代表取締役専務・小林元樹氏(奈良同友会会員)によって、家業から企業へ、薬局からドラッグストアへ業態も大きく転換されます。

 小林氏は、薬科大学での研究生活を辞めて30歳のころ、家業を継ぐことになりました。世の中の流れ・お客様の購買動向を見据えながら、地域の人々にとって薬局とは何か、どのような薬局が求められているのかを真剣に考え、試行錯誤を繰り返し、存亡の危機に直面しながら、ワラをもつかむ思いで1991年に郊外型の第1号店をスタートしました。現在では、県下9店舗のドラックストアを経営し、地域社会における存在意義を高める独自性の追求に余念がありません。

同友会で学んだ経営の中心課題

 小林氏は、14年前にドラッグストアを展開し始めたころ、社員数も増え、近代的な社内諸規定を作りたいとの要求で同友会へ入会しました。同友会で学ぶ中で、社内諸規定の整備と共に経営指針づくりに取り組み、特に、経営理念の確立と社内の隅々に経営理念が息づく社風にしていくための人材育成を経営課題の中心に据え、若い人材を採用する同友会の共同求人活動にも積極的に参加しました。

 正規社員を採用するにしても、労働条件が異なるパートナー社員(パート・アルバイト)を採用するにしても、会社を設立した当初は経営指針もなく、その具体化としての採用基準・求める人材像も不明確で、さまざまな人の問題・課題が噴出し、それと正面から向き合い、学ぶ中で、「企業とは何か」「働くとは」「社員をどうとらえるか」「人間にとって幸せとは」を悩みながら真剣に追求します。その導き出した答えは、第1に「人間にとって幸せとは周りからアテにされることであり、お客様からアテにされアテにこたえられた分だけ幸せになれる、働くとはアテにこたえること」、第2に「世の中の変化に対応して会社の社会的存在意義を問い直し、地域社会に貢献する商品・サービス・技術の向上に努めること」、第3に「企業は人間的に成長する人格形成の場であり、自主的に学ぶ社風づくりが大事である」、ということでした。

 1997年1月に経営指針にもとづく第1回全体会(パートナー社員を含む全社員会議)で経営指針を発表し、一日かけて社内で議論して以後、2005年9月には13回目の全体会を迎えました。一人も休むことなく90名全員が参加。しかも、9名の店長が自主的に役割を担って運営し、改めてファーマシー木のうたで働く意味を一人ひとりが経営理念に立ち返って考え、学び成長する喜びを生きいきと語る社員の姿が印象的でした。

 小林氏は、同友会で学ぶことの意味を、「業界だけの狭い視野でものごとを見るのではなく、社会的視野を広げ、世の中の流れを広く正確に認識し、社会貢献の方向(戦略)を明確にして、社員と共に学び、共に育ち合うことの大事さを教えられた」と語ります。

地域やお客様のアテにこたえる新たな課題へのチャレンジ

 いま、ファーマシー木のうたの存立基盤である地域の空洞化と、そのもとで進行する「暮らしの悪化と人間性の破壊」を防ぐために、雇用を確保することも含め、地域循環型経済づくりで、わが社で何ができるかの追求をはじめています。「環境への配慮を考えても、地元の生産者との提携が大事」と語る小林氏。すでに、豆腐、生花、靴下など、地元の生産者との提携を始め、さらに広げる努力をしています。また、健康相談会や「食と健康を考える」セミナーを定期的に開催するなど、地域やお客様のアテにこたえるための新たな課題へのチャレンジが続きます。

会社概要

 設立:1986年8月
 社員数:90名(うちパートナー社員72名)
 資本金:5000万円
 年商:24億円
 業種:ドラッグストア9店舗
 所在地:奈良市三条町472番地
 TEL:0742-22-3498
 URL:http://www.kinouta.co.jp/