【第1回】経営者として、人としてあるべき姿を求めて-(株)ライナーネットワーク 社長 安井 清吉氏(北海道)


~親子3代同友会会員~

(株)ライナーネットワーク 社長
安井 清吉氏(北海道)

 札幌に次ぐ人口35万人の道北の中核都市、旭川でフリーペーパーを発行しているのが(株)ライナーネットワーク(安井清吉社長、北海道同友会会員)です。1984年に旭川初の無料情報紙として誕生した「ライナー」は、広告中心の市民総合情報紙。現在では旭川全世帯の93%にあたるおよそ16万世帯に、週2回配布されています。

時代の先を読みライナー誕生。しかし大きな債務を抱え、廃刊の危機に直面

 創業者は、現社長の安井氏の父親である一雄氏。北海道同友会の創立メンバーの一人で、1967年に開業した「銀ビル」という旭川一の高層ビルのオーナーでした。最上階には東北以北初の回転ラウンジを設けた最先端のビルで、連日多くのお客様で賑わったといいます。その時代の先を読む姿勢がライナーを誕生させました。

 創刊後は悪戦苦闘の毎日。400名もの配布員を雇い、気がつくと2億4000万円もの債務を抱え、廃刊寸前に追い込まれていたのです。そこで、新たな経営の舵取りを託されたのが安井氏でした。

 直面する現実との戦いの中、同友会での学びが安井氏の大きな支えになったといいます。会社は公器。手堅く経営し、社会的な責任を全うする、そして人材を育てる。押し寄せる困難に、父親譲りの正義感とバイタリティで立ち向かっていきました。

初めての新卒採用。経験主義を乗り越え経営指針の成文化へ

 どうにか経営の手ごたえを感じ始めたころ、同友会の合同企業説明会に参加。内定辞退を見込んで4人に内定を出したところ、辞退者ゼロで結局全員を採用することになりました。人材の大切さはわかっていても、経営はまだまだ安定しておらず、人件費負担も相当な重荷になります。期待と不安が交差していました。

 この不安はどこから来るのかと考えていると、「明日が見えないからだ」と、はたと気づきます。きちんと自己分析し、経営指針を成文化、実践しようと決意。それから年間の経営計画策定、社員の目標資質・評価基準づくり、就業規則と給与体系の策定を全社員で行いました。そうした過程そのものが、社長と社員が共に育ち合う“共育”の機会になったといいます。

“ガラスなし経営”が人を育て、企業を育てる

 「ガラス張り経営」という言葉がありますが、安井氏は「そもそも、会社が社員に隠さねばならないことは何かあるのか」といいます。それほど全ての情報をオープンにしています。いわば“ガラスなし”経営です。同社の経営は、経営指針を軸に、部門別会議からの提案を受け全社で検討し実践する、この積み重ねです。「私にとって社員は“鏡”。経営者として、人としてあるべき姿や理想をもとめて誠実に生きることが大切」と語る安井氏。労使見解の精神を体現する生き様に触れた思いです。

 昨年、息子の拓人氏が、グループ会社のそば店、(有)六良の取締役として経営に参画し、同時に安井社長の推薦で同友会の会員となりました。安井氏は、父親として、経営者として、また先輩会員として厳しくも温かく拓人氏の成長を見守っています。同友会を柱に据え、親子3代にわたり謙虚に学びあう姿がここにあります。

会社概要

創業:1984年6月1日
資本金:1000万円
年商:4億9000万円(05年度実績)
発行部数:15万7366部(06年3月現在)
社員数:26名(うちパート1名)
配布員:500名
事業内容:1.フリーペーパー「ライナーネットワーク」の発行
       2.チラシ折込、宅配業務
       3.各種イベントの企画立案
所在地:北海道旭川市5条通10丁目854-1
TEL:0166-23-2006
FAX:0166-23-2009
URL:http://www.liner.jp/