【第19回】本音の指摘で自分が変わる-(株)はりせいクリーニング 専務 木下 定信氏(岐阜)


本音の指摘で自分が変わる

(株)はりせいクリーニング 専務
木下 定信氏(岐阜)

工程改革を重ねて

 クリーニング業界は、一般家庭のクリーニング年間総需要のピークが1992年で、8519億円。それが2004年には4954億円とほぼ半減という厳しい業界。その中で、(株)はりせいクリーニング(木下定信専務、岐阜同友会会員)はさまざまな試行錯誤を重ねています。

 同社の一つの転機は、1985年に新工場を建設したことです。トヨタのかんばん方式という作業工程が注目を浴びていた時代であり、木下氏が中心となり、いろんなところに見学に行き、勉強し、自社にアレンジし、実践しました。そして工場ができて3年で軌道に乗り、一人あたりの売上で業界誌に取り上げられるなど、全国から注目を集めました。

さらなる強敵

 90年代後半から、今度は価格破壊の流れが鮮明となりました。一部地域では100円クリーニングの出現も見られ、同社はさらに工程改善、生産性向上に取り組みます。土日営業で作業を平準化し生産性をアップする、そのための多能工化を推進する、というものでした。同時に社員のやる気、社員のレベルアップなど、同業者に聞いたり、コンサルタントを入れるなど、懸命に取り組みましたが、なかなか思うようにいきませんでした。

自分を変えた、他社社員の指摘

 そんな中、木下氏が転機を迎えるできごとが生まれます。岐阜同友会の共育委員会の工場長研修の中で、報告者を務めたことでした。参加者のレポートの中に「木下さんのやってきたことは、根本的な問題解決になっていないのではないですか?」と書かれたものがありました。それを見て、ハッとします。土日営業の件でも、「半年間ほど、毎週土日ずっと出勤する。みんなをやる気にさせるためにはそうすべきだし、あたりまえだと思っていた」。「自分がやるからみんな、ついて来い!」と。しかし、実際は「こうしなさい、ああしなさい」と命令するだけなため、皆がイエスマンになっている。そうさせてしまった自分を振り返ります。

 ある時、ミーティングの最中に機械が壊れ、その修理のため、木下氏は席をはずしました。機械が止まっているため、2階で行われているミーティングの声がよく聞こえます。パートさんの笑い声、今までに話をしたこともないような人が、積極的に話している声、それを聞きながら、こういう人たちの芽を摘んでいたのだと、実感しました。

 そして、木下氏は“社員に任せる、考えさせる”ことに着手していきます。最近ではボイラーの故障の対応を自分たちだけの力で処理をするという出来事にも遭遇。“人が育ちつつある”手ごたえを感じている木下氏です。

会社概要

創業:1951年
資本金:1000万円
年商:2億8000万円
社員数:69名(正社員11名、パート社員58名)
事業内容:一般家庭クリーニング
所在地:岐阜県関市富本町19番地
TEL:0575-24-0881
FAX:0575-63-1144