【第25回】人は心でしか動かない!-京都エレベータ(株) 社長 岩島 伸二氏(京都)


人は心でしか動かない!

京都エレベータ(株) 社長
岩島 伸二氏(京都)

 国内で60数万台にもおよぶエレベーターやエスカレーターが稼働する中、その保守点検業務においては、国内5大メーカーとその系列子会社のメンテナンス会社が市場の90%以上を占めています。一方、製造部門をもたずコストの優位性を生かし顧客第一主義に徹する独立系企業も多数あります。京都で随一の京都エレベータ(株)の岩島伸二社長(京都同友会会員)は、日本エレベータメンテナンス協会の会長も務め、独立系企業の地位向上に東奔西走しています。

「会社はそこで働く人間のもの」の実践へ

 同社は、岩島氏をはじめとする8人で1983年に独立創業しました。独立に至った経緯から、人間関係を大切にすることを基本とした企業づくりを目指し、「一緒に働く“仲間”を裏切ったり粗末にしない」「企業を私物化しない」「会社はそこで働く人間のもの」など、守るべき考え方を誓いあいました。

 しかし仲間を大切にすることは、良い形で現われると「家族的」ですが、悪い方向に現われると指示命令ができない無規律な組織になってしまいがちです。社内でおこっているこの現象に、同友会入会(1992年)時から社員教育委員会に参加していた岩島氏は違和感をもっていました。

 この時「経営者自身が変わらねば会社は変わらない」ことをあらためて自覚。同友会会員を含む講師を招いて月2回の社内の役員研修を行い、岩島氏も一緒に参加して「何のために働くのか」から問いかけあう2年がかりの「意識改革」に取りかかりました。幹部の経営意識が共有できるようになってから、一般社員研修を始めました。一泊二日のトレーニング研修を経てから九州に出向き、三泊四日の自己啓発セミナーに参加します。心を開いて自分を見つめ直す機会をもつことで目的が見えるようになり、前向きな変化が今も続いています。

「お客様第一」を自分の頭で考える

 エレベーターの点検と修理は物を売ることとは違います。またビルやマンションを訪問しての点検や24時間365日出動待機の業務は、自己管理能力が求められます。この厳しい日常業務と研修を通じて「形のない技術という目に見えないものを買って頂いている」という自覚が社員にも生まれ、どうすればお客様のためになるかを自分自身で考えるようになってきました。商品価値を高めるということは「人を磨く」ことにつながります。

 この6月に東京港区で発生したエレベーターでの死亡事故後、すべての顧客に事故の経緯と問題点、京都エレベータとしての対応について文書を送って説明し、必要な相談や点検にも出向きました。素早く丁寧な対応に、「おたくは安心できる」と多くの顧客から信頼の声が社員にかけられたといいます。経営指針があったからこその迅速な判断でした。

 東京の事故後は、国土交通省やメーカー系企業との対応に忙しい岩島氏ですが、「社員とのコミュニケーションは、お互いが共通の土台に立つことが基本。お互いの人生をかけることができる職場づくりをすすめたい」と終始笑顔で語ります。理屈だけでは人は動かない、信頼関係に裏づけされた明確な指針とその実践、ここに氏の信念である「人は心でしか動かない!!」が垣間見えるようです。

会社概要

創業:1983年12月
資本金:1000万円
年商:4億4000万円 2005年度実績
社員数:34名(技術者26名<昇降機等検査資格者11名>)
事業内容:エレベーター、エスカレータ、ダムウェータ(小荷物専用昇降機)の
       保守点検、修理、検査、設計、販売、製作、施工及びこれに付随
       する一切の事業。立体駐車装置、建築設備等の保守点検、修理、
       販売、設計、施工。24時間365日出動待機。総台数1544台。
本社:京都府京都市下京区岩上通高辻下る吉文字町457番地
    TEL:075-822-0420  FAX:075-822-0578
事業所:滋賀県営業所(栗東市) 岐阜市(別法人)
URL:http://www.kyoto-elevator.com/