【第17回】顧客本位の視点で、倉庫業を手間暇代行業に-富山倉庫(株) 専務 荻布 原駆郎氏(富山)

富山倉庫(株) 専務
荻布 原駆郎氏(富山)

「経営指針の成文化」で、経営課題が見えてきた

 荻布原駆郎氏(富山倉庫(株)専務、富山同友会会員)は、2001年に父が社長を務める富山倉庫(株)に入社。翌年、同業者の先輩から経営指針の成文化を勧められ、富山同友会に入会しました。さっそく第8期「経営指針を創(つく)る会」に参加し、経営者の姿勢の大切さや何のために経営をするのか、お客様の立場に立って自社を見ることなどを追求し、経営指針を成文化しました。

 さらに翌年には青年部会に所属し、「後継者問題」の取り組みから、(1)後継者問題は親子問題ではない、(2)継がせる側と継ぐ側の協働作業、(3)後継者も経営者であることなどを学びます。

 この間、IT(情報化)の進展によって倉庫利用の減少が可能になるなど、自社を取り巻く環境は大きく変わり、保管料の売上が減っていきました。お客様にとって保管料はコスト。ただ預かるだけの倉庫業ではもはや生き残れません。

視点を変え、お客様の立場に立つと見えてくる

 経営指針づくりや青年部会での学びを通し、お客様の立場からアウトソーシングとして自社をとらえ直すと、今まで見えなかったことが見えてきました。

 東京に倉庫を構え、関東方面の個人のお客様から受けた注文を宅配している地元の飲料メーカーに、「コストの高い東京の倉庫を撤廃し、わが社に受注・発送業務を一括で任せてほしい」と、コストの低減を提案。さらには、「倉庫に預かるだけでなく、加工工程も引き受ければ利用してもらえる」の発想に立ち、新たな取り引き先を増やすことに発展しました。努力の結果、01年度と06年度の比較では、保管料は88%に減るも、荷役料が390%、運送料が233%といずれも大幅に伸びました。

社員と共に、自社も地域も元気に

 この間、「経営者の仕事とは何か」を絶えず自問し、自分の日常業務を社員に渡し、自らをフリーにする一方で、専務取締役に就任。さらには、会内の自主的勉強会「未来来(みらくる)TOYAMA」で金融や社会問題を考えたり、共同求人で新卒採用に取り組み、採用した社員を共育委員会の研修に出したりと、課題解決のため、同友会の活動に積極的に加わっています。

 学び方もますます深まり、「即戦力の人たちだけでは、企業の差別化は難しいのでは」と気づいたり、新卒者研修では「何で新卒だけなんだ。みんなに研修を受けてもらおう」と取り組んだり、機械化によりモノを楽に運べるようになったことから「女性を生かそう」と発想。さらには「良い人材は良い会社にしか来ない」と、経営者として物事を深くとらえ、その気づきや学びを即具体化し、良い会社づくりを進めています。

 毎年、廃業する企業が約29万社ある中で、後継者にうまく引き継げず廃業する企業が7万社もあります。そうした中、「自社だけでなく地域も元気にしよう」と、今年度「後継者問題のことは青年部に任せろ」の勢いで自ら青年部会長を引き受けるナイスガイでもある荻布氏です。

会社概要

設立:1949年
社員数:58名(うちパート11名)
資本金:2080万円
年商:6億8000万円
業種:倉庫業、貨物自動車運送業、流通加工、物流に関わるその他サービス
所在地:富山県中新川郡上市町久金新315
TEL:076-473-2233
FAX:076-473-2231
URLhttp://www.toyama-warehouse.co.jp/