【第33回】左官文化を残しながら建築文化に貢献-(株)松建 社長 加藤 慎哉氏(島根)

(株)松建 社長
加藤 慎哉氏(島根)

 島根県には今でも蔵をもつ家が多く、また左官職人が壁塗りの材料である漆喰を使い浮き彫り風に風景・肖像などを描いた鏝絵(こてえ)が数多く残されています。そんな左官文化のある地域で、(株)松建(加藤慎哉社長、島根同友会会員)は、30年間、左官材の販売を中心に営業しています。

同友会で学び経営方針が決まる

 時代の変化とともに建物の洋風化が進み、左官材の売上が減少。いよいよ経営が行き詰ってきた時、社長が病気で倒れたことから、当時営業部長であった加藤氏が会社を継ぐことになりました。

 赤字経営の中、どうしていいか分からず悩んでいた時、得意先の左官さんの紹介で同友会と出合います。ちょうど島根同友会の発足の時で、社員と経営理念を共有していく考えに深く感銘を受けての入会でした。

 入会後は、例会や「経営指針を創る会」に積極的に参加。経営指針を作成する中で、ほかの会員からのアドバイスを受けながら自分の方針が少しずつ決まっていったという加藤氏は、「左官文化を残しながら、会社を少しでも変えていきたいと強く思うようになった」と語ります。そして、「1.感謝報恩、2.社員の幸福追求、世代育成、3.建築文化に貢献」という経営理念を掲げました。

第二創業を目指して建築文化に貢献する

 さっそく同友会で学んだことを経営に生かそうと、全社員が参加する月例会議では経理を公開し、その時その時の課題を全員で議論するようにしました。会社の現状が共有されたことで、社員全員がまとまり、それぞれが自主的に自分の仕事を進めるようになったといいます。

 一方で、新たに工事分野にも進出。建築資材の販売と合わせて左官工事・外構工事・タイル工事の施工も受注するようにしました。同社から左官業者に仕事を出すことで、施工受注の窓口の役割を果たしながら、取引先である左官業者とともに仕事を増やしていくことと同時に、左官業者とのかかわりを深め、地域の文化である左官文化を守っていくことが狙いです。

 これらの成果もあり、今期は黒字経営に転換することができました。

 伝統ある文化だけでなく今の文化も大事にしたいという加藤氏。「流行もあるし時代にあった外装の仕上げを追求したい。また、松江市は景観の保全に力を入れており、そうした市町村の景観条例や環境条例などに適合する資材を扱うことで、より美しい町並みづくりに貢献したい」と語ります。

会社概要

創業:1977年
社員数:10名
資本金:1000万
業種: 建築資材販売と施工
所在地:島根県松江市玉湯町布志名602-1
TEL:0852-62-1012
FAX:0852-62-2223
URLhttp://www4.ocn.ne.jp/~matsuken/