【第43回】経営理念から生まれたウェディングスーツ-(有)ウイントンブランド 社長 米村 謙一氏(熊本)

(有)ウイントンブランド 社長
米村 謙一氏 (熊本)

 (有)ウイントンブランド(米村謙一社長、熊本同友会会員)は、紳士服のオーダーメイド販売の会社です。父であり職人として45年のキャリアを持つ米村浩幸会長が創業し、営業に飛び回り売上を順調に伸ばして、1991年に自宅横に店舗も構えました。しかし、テーラー業界は、量販店による価格破壊、顧客層の高齢化、後継者不足と過酷な状況が続き、同社も例外ではありませんでした。次々と同業者が店を閉めていく中、後継者として謙一氏が1997年に入社しました。

がけっぷち状態で挑戦した経営指針作成

 「何とかしなければ…」まさにがけっぷちに立たされた状況で、父親の浩幸氏は同友会入会10年目にして「経営指針作成セミナー」を受講します。そこで「何のために経営するのか」を徹底して考えた結果、経営の目的が「紳士服を買ってもらう」から「ファッション文化を通じて、お客様のために何ができるか」へと大きく変わり、それが経営理念へと発展しました。

常識を変えたウェディングスーツ

 顧客の高齢化と世代交代が進む中、同友会らしく経営理念を深く追求した経営戦略をどう構築していくかを親子で考えた結果、「ウェディングスーツ」へと着目します。新郎新婦の人生最良の日を思い出深い日にするために、プロとして何ができるのか。これまで結婚衣装はレンタルが常識でした。そこでレンタル料と変わらない金額で新郎のウェディングスーツを作り、式が終わったらビジネススーツにリフォームするという画期的な商品を生み出しました。

 また、「3つの想い出づくり」として、新郎新婦が二人で服づくりに参加できる「ボタンホール作り」「相手へのメッセージを入れるタイムカプセルポケット」「メモリアル刺繍(ししゅう)」を考案しました。このスーツはマスコミも注目し、新聞やテレビでも紹介されました。「お客様には、洋服を選ぶことで、『結婚式』への価値観をもっと質の高いものに変えていただけるような提案をしています」と語る謙一氏。商品開発から6年経ち、売上も着実に伸びて、県外に提携店もできました。

同友会で学んだ「何のために」

 1998年に謙一氏も同友会へ入り、会長である浩幸氏から「経営指針作成セミナー」の受講を勧められます。「何のために経営するのか」を徹底して議論し、社長の仕事とは何かを学びました。当時は、親子で激しく衝突することもありましたが、経営理念のおかげで、「父と息子」から「経営者と後継者」へと変化してきました。

 「私達は服装の専門家としてファッション文化を通じてお客様の暮らしをより豊かにするために 着ることの楽しさや身だしなみの大切さなどを創造提案しています」という現在の経営理念は、浩幸氏がつくり、謙一氏も加わって磨き上げてきたものです。

 2007年7月に社長を交代して、「一番驚いたのは入ってくる情報の多さと判断・決断の多さです。社長ならば当たり前のことですが、具体的な場面で経営理念を使うことが増えてきました」と語る謙一氏。社員の雇用も考えており、社員が働くことを通じて生きがいを見出せる、そんな会社を目指す謙一氏の挑戦は始まったばかりです。

会社概要

創業:1979年
社員数:役員3名
資本金:300万円
年商:2500万円
業種:紳士服仕立て販売、オーダーメイドシューズ販売、企業向け身だしなみ講座
所在地:熊本県合志市幾久富1647-250
TEL:096-248-3373
FAX:096-248-3228
URLhttp://www.winton.jp/top.html