【第2回】社員と共に軸のぶれない経営を―宮川バネ工業(株) 社長 宮川 卓也氏(滋賀)

 宮川卓也社長

社員と共に軸のぶれない経営を
宮川バネ工業(株) 社長 宮川 卓也氏(滋賀)

 
 「本当に社員のおかげでここまで来れた」。滋賀県びわ湖の東部、東近江市にある宮川バネ工業(株)の宮川卓也社長(滋賀同友会会員)は、自身が入社してからの日々を振り返り、思いを語ります。

社員は宝

 宮川氏は、父親から引き継いだ2代目社長。大学を卒業して、関西の自動車メーカーに就職。4年後に父の経営する宮川バネ工業に入社しました。しかし、大自動車メーカーと社員数十人の零細企業との大きなギャップに困惑。ただ今回は辞めるわけにもいかず、「とにかく『跡取り』として猛烈に働くだけ」だったと言います。

 当時、お客さんからの短納期・低価格の仕事を一生懸命こなす一方で、社員は低賃金・長時間労働でなかなか定着しませんでした。このままでは駄目だと考えた宮川氏は、特徴あるものづくりを目指します。「これは機械を知らない、文系出身の自分だからできたこと」。しかしその裏には、社員と共に、2カ月も3カ月もほとんど家にも帰らず、数時間睡眠というがんばりもありました。
 

  機械設備と社員

 関連会社の協力も得て何とか完成したそのオリジナル設備は、その後の宮川バネの成長にとって大きな基礎になりました。「私はただ、応援していただけ。文句も言わず不眠不休でがんばってくれた社員は、わが社の宝です。今では、60歳を過ぎてもなお雇用継続でがんばってくれる社員もいます。彼らの骨を拾わせてもらえるくらい、長く元気でいてもらいたい気持ちです」。

「共育」は継続してこそ本物に

 2005年に滋賀同友会の例会にゲスト参加し、同友会が本物の経営者の会であることを知り、入会。すぐ「経営指針を創(つく)る会」にも参加し、自社の「経営理念」を創りました。
 
 その後も、毎月社員と「理念勉強会」を続けており、最近ではある新規顧客から「御社の社員さんはとても気持ちが良い。是非、御社と取引がしたい」という「うれしくて涙が出るような」(宮川氏)成果もありました。しかし、宮川氏は「社員との共育ちはまだ始まったばかり。先輩企業のように10年、20年と継続して初めて本物になる」と言います。

軸のぶれない経営をめざして

 社員と共に

 毎月2時間の全員参加の「理念勉強会」、10名前後のリーダー社員が参加する「リーダー勉強会」(10時間/月)を実施するほか、社員全員の毎月の給料袋にメッセージを入れたり、コーチングのトレーニングを受けて社員の声を「聴く」努力を続ける宮川氏。
 
 毎年の新卒採用も欠かさず、内定した学生に毎月、来社してもらい「入社前理念勉強会」も行っています。1年前から障害(知的)を持つ青年を雇用。職場の仲間にもとけ込み、2名が笑顔で働いています。「社内の人間力を高め、その人の特性や能力から企業は何ができるか考えるのも、新しい仕事づくりにつながります」。
 
 「共に育つためには、経営者の一人よがりになっては駄目。必要な時は社員の話を辛抱強く聴くことが一番大切」と自戒し、悩んだ時や、迷った時は「最適を目指す」という経営理念に立ち戻るという宮川氏は、軸のぶれない経営を目指しています。

会社概要

創 業:1953年
社員数:50名
資本金:4000万円
年 商:8億円
業 種:線バネ・薄板バネ・スイッチ部品・プレス・マルチ・金型、
     「見える化」パネル
所在地:滋賀県東近江市園町31-1
TEL:0749-46-0193
FAX:0749-46-0199
URLhttp://www.m-b-k.co.jp