【第4回】社員の気づきを大事に~働きやすく効率的な仕組みづくり―(株)AZUMA 社長 上田 裕子氏(熊本)

 上田社長

(株)AZUMA 社長 上田裕子氏(熊本)

「経営者の責任」を果たすために

 (株)AZUMAは、現社長・上田裕子氏(熊本同友会会員)の父親である東一徳氏によって創業されました。上田氏は、仕事が行き詰まり、廃業を考えながら車庫の前で悩んでいる父親をみて、自ら会社を継ぐことを決意。22歳の時でした。

 地元運送会社の若手経営者「継運会」の第1期生として学習会に参加。1992年には同友会に入会。その後、経営指針セミナーを受講し、指針を成文化していきました。

 「『経営者の責任』を考えると、大事なのは何よりも社員とのかかわりであること。労働条件の改善だけでなく、社員が働きやすい効率的な社内の仕組みづくりをしていくことを真剣に考えるようになりました」と、上田氏。

 2007年4月には第20期「経営方針書」を発表。最初は社長の方針を発表するものだったものが、今では幹部で検討した方向性を各部門で小グループにおろし、具体化し計画をたてることで、社員全員のものとなってきました。

需給規制緩和、軽油高騰の中で

 社員と共に

 トラック輸送業は、1990年に貨物自動車運送事業法施行で規制緩和がなされ、競争が激化。しかし、(株)AZUMAでは固定給制を導入し、社員が働きがいのある環境づくりを実現してきました。
 
 熊本県トラック協会に加盟している会社は785社(2006年)ですが、(株)AZUMAは、車両数と仕事量では県内10位。低迷する運賃や軽油の相次ぐ値上げ、安全対策や環境保全対策でコスト負担も増える中、半導体や大型精密機械の運送に対応したトラックの導入など、物流事業、倉庫事業、引っ越し事業の3部門を持つ総合物流企業として、地歩を固めています。

 また、車両整備のための別会社を立ち上げ、コスト削減の工夫をしています。

経営理念が仕事の判断基準

 一昨年から「運輸安全一括法」が施行され、「運輸マネジメント」が導入されました。これを先取りするように(株)AZUMAでは、ISO9001:2000を取得。

 「何よりも社員が落ち着いて働ける」ことを重視し、物流の周辺に目を向け、利益率を重視。労働時間の短縮を行うためにも、社員一人ひとりがその個性や能力を発揮できるよう、情報の共有や研修会、レクリエーションを積極的に行っています。また、社員が取引先から褒(ほ)められたことや社内の方向性を、社長のメッセージとして社員に届けています。

 社訓は昨年まで「感謝 感心 感動」でしたが、今年から「環境」を加え、「(株)AZUMA4つのこころ」としています。「社員に『仕事の判断基準は、経営理念』という感覚が広がりはじめた」と、にこやかに上田氏。女性ドライバーも活躍する中、「社員一人ひとりの気づきを大事にしたい」と、普段から社員への声かけを大事にしています。

<経営理念>

1、私達は信用を築き確実・迅速・安全に輸送することを任務とし、最高のサービスと信頼によって地域社会に貢献します。
2、私達は仕事に誇りと情熱を持ち、自己実現に向かって働きがいのある会社をつくります。
3、私達は1人1人がセールスドライバーとして、常に創意工夫を心がけ未来への創造を目指し、限りない挑戦と共に育つ。

会社概要

設 立:1965年
資本金:1000万円
社員数:110名
年 商:8億円
業 種:一般地域貨物運送事業、引越業務、倉庫業務など
所在地:熊本県上益城郡嘉島町井寺
TEL:096-237-2378
URLhttp://www.azuma-inc.com/

※本記事は『中小企業家しんぶん』2008年1月5日号より抜粋しました。