【第10回】必要とされる人・企業をめざして~障がい者雇用から見えてきたこと~(有)イーリード 社長 越膳 徹氏(静岡)

越膳社長

(有)イーリード 社長 越膳 徹氏(静岡)

 (有)イーリード(越膳徹社長、静岡同友会会員)は、アパレルの流通加工事業を主力に、静岡県内で3カ所の事業所を構えています。検品により不良品を水際で防ぎ、生産工場側に不良項目をフィードバックするなど付加価値のある物流サービスで、取引先のニーズにこたえています。

創業のいきさつ

社内風景

 越膳氏は以前、縫製業の会社に勤めていました。アパレル業界の生産拠点が中国に移転したことで、国内の縫製業はじり貧に。その会社は「重度障害者雇用多数雇用事業所」の認定を受けていた経緯もあり、障がい者雇用専門の福祉施設に姿を変えました。しかし、福祉施設としては多くの人を受け入れられません。そこで越膳氏は、担当をしていた輸入検査部門のメンバーとともに2003年に独立しました。

「理念」の実現へ~障がい者雇用に積極的に挑戦~

 静岡同友会に2004年に入会し学ぶうちに、「理念を軸にした経営活動への意識が高まった」と言います。経営理念は「必要とされる人・企業になる」。「あくまで人が先です」と越膳氏は強調します。その背景には、単なる金儲け集団になりたくはない、地域から「ありがとう」と言われたいという越善氏の思いがあります。そのことは実践に表れています。就労チャンスの少ない障がい者の受け入れや職場実習をしていますが、雇用助成金も今はもらっていません。

 障がい者と一緒に働くなかで越膳氏が実感していることがあります。それは、障がい者を雇用することは特別なリスクではないということです。同社では健常者と障がい者の区分けはしていません。社員教育においても区別がありません。越膳氏は「その人のものの見方や、特性が何なのかで配置をします。苦労する点は、特性を見抜くまでに時間がかかること。そこさえ分かればまったくの適材適所」と語ります。

差別化で価値のある会社に

社内風景

 同社は他社との差別化に力を入れています。在庫管理と正確な出荷に、検査・修理の付加価値を持った総合的なサービスを行っています。同社には縫製職人がおり、直せるものは修理する点、また検査レベルをメーカーと協議の上で決めるところに同社ならではの特色があります。

地域・文化を大事にしたい

 今は首都圏のメーカーとの取引がメインですが、いつ競合が現れてもおかしくありません。これからは地域密着事業をどう進めるかが課題です。越膳氏はそのベースとして会社の文化、人間という土壌を豊かにしていくことが大切と考えています。「働くこと、お金は人生にとって道具。その道具が良いか悪いかで人生の良し悪しが決まる。人生が良くなる過程に会社が存在していればいい」、越膳氏の挑戦は続きます。

会社概要

創 業:2003年5月
資本金:300万円
社 員:55名(パート含む、うち障がい者7名)
業 種:流通加工業
〇輸入アパレル商品の検査・修理・在庫管理・梱包発送
〇特殊印刷加工品の印刷から抜き・貼り加工・アッセンブリ・梱包発送
〇高付加価値飲料水の宅配販売
住 所:静岡県沼津市原1413-1(本社) 
TEL: 055-967-9512 
URLhttp://www.ereed.jp/