【第21回】大量の人員整理の危機が迫る中で、雇用の維持にチャレンジ 中山化成(有) 専務 谷口 知幸氏(大分)

 谷口専務

中山化成(有)専務 谷口 知幸氏(大分)

 中山化成(有)(谷口知幸専務、大分同友会会員)は江戸時代の天領、大分県日田市に本社を置き、車両用シートの製造およびウレタンフォーム加工品などの製造・販売をしています。

実践することの難しさ

 作業風景2

 「人はお金で動くもの」という認識だった谷口専務。今では「同友会に入会していなければ、会社は存続していなかった」と、同友会の三つの目的などをまとめた同友会理念や、明確な経営指針のもとに労使の信頼関係を築くことが何よりも大事であると説いた「中小企業における労使関係の見解(労使見解)」を実践しています。

 2000年に熊本で開催された「社員教育活動全国研修・交流会」に参加して衝撃を受けました。そこで得た学びを一気に実践しますがうまくいかず、思いだけが空回りして、いつの間にか社長や社員、お客様との関係までが崩壊寸前になりました。しかし、「労使見解」を学ぶなかで、今すぐやれること、今すぐやれるか検討すること、当面は無理なことを明確にして、改善に取り組みました。

過去最大額の赤字からの脱却

 2004年の決算で4800万円の赤字を計上します。自動車がフルモデルチェンジをしたばかりで現場が対応できず、また社長の入院などもあって社内が混乱していました。取引先の厳しい要求に応えられず、経営を投げ出しそうになりましたが、社員の「社長たちのもとで働きたい」という涙ながらの訴えもあり、状況を社員や銀行に説明し、取引先の協力も得て利益計画を作成しました。

 作業手順書を改良し、仕事の進ちょくや達成度を「見える化」するなどの改善で、関係者の理解を得られました。そして、わずか1年で黒字に転換させました。この経験が社員の大きな自信につながっています。

大量の人員削減の危機に直面

 作業風景2

 世界的な景気後退を受けて、今年の夏には20名程度の人員削減の危機に迫られましたが、「雇用を守るのが経営者の仕事」と、新たな仕事を探します。その結果、人員削減の危機を回避することができました。しかし、秋になり取引先の業績も一段と悪化しているため、さらなる影響があるものと危惧しています。「人員削減も、賃金カットもしません。それ以外に策がなければ、私は経営の座を離れるかもしれません」と言います。

角界が認めた縫製技術で、新たな仕事を

 「子どもやお年寄りも多く来ている。事故が起きてからでは遅い」と、今年の大相撲九州場所から升席用の座布団が投げにくい形に改良され、特注の「飛ばせない座布団」となりました。その製造を紹介で受注することができました。

 「車両シートの縫製は高度な技術が求められます。それで当社に依頼があったのでしょう」と、国内トップレベルの縫製技術を持つ社員に胸を張ります。今後、各場所での採用や新たな事業展開も期待されます。

本気の「良い会社」づくり

 大分同友会の仲間から「良い会社を作りたいと言うけど、子どもに会社を継がせたいの?」と聞かれたので、「子どもの人生なので任せます」と答えました。すると「最愛の子どもに継がせたいと思わない会社なら、本当の良い会社ではない。まだ本気で良い会社を作りたいとは思っていない」と言われて、返す言葉を失いました。

 「社長は会員ではありませんが、社員の人生を大切にしている経営者だと思います。だから社員がついていくし、最後の砦として信頼しているようです。少しでも早く追いつけるように学び続けたい」と谷口氏は意欲を燃やしています。

会社概要

設 立:1978年
資本金:1,000万円
社員数:91名
年 商:30億5,000万円(2008年4月期)
業 種:車両用シートの製造及びウレタンフォーム加工品等の製造及び販売
所在地:大分県日田市大字川下133-6
TEL:0973-24-5228
FAX:0973-23-8002
URLhttp://www.nakayama.be/
経営理念:お客様(得意先及び仕入先)には安心を、従業員にはやりがいを
①最高の商品を、最高の形で、お客様へ提供します。
②何事にも感謝の心を忘れず、心から「ありがとう」と言える人間になります。
③誰もが、自分の意見を発言でき、自律した人間集団になります。