【第25回】畳屋で年商30億円、儲かる仕組み作り (株)キツタカ 社長 橘高 勝人氏(東京)

橘高社長

(株)キツタカ 社長 橘高 勝人氏(東京)

 1990年代後半まで、全国平均で1世帯当たり16枚くらいあった畳の数は、現在では6枚くらいに減少しています。市場が縮小する斜陽産業の中、32年前に年商1800万円だった(株)キツタカ(橘高勝人社長、東京同友会会員)は、現在30億円の売上に成長してきました。 

資金繰り地獄

リフォームのために畳を運び出す

 畳屋を営んでいた父親が突然の脳こうそくで倒れ、当時高校3年生だった橘高氏は畳屋を手伝うようになりました。マンションに新畳を納入できるようにしたいと考え、会社を設立。1984年、月商200万円に満たないところからのスタートでした。

 マンション建設予定地を営業に回る中で、大手ゼネコンからも仕事が来るようになり、勢いづいたように思われましたが、資金繰りは火の車となっていました。マンションは仕事をたくさん出す一方、値段はたたかれます。当時の原価率は65%超でした。さらに納品から現金になるまで大変時間がかかりました。

 決定的な出来事が起こりました。橘高氏が正月の三が日に河口湖に釣りに出かけた時のこと。第一投の竿を出したところで銀行から電話があり、「残高不足で明日までに200万円ないと引き落としができない」と言われました。子どもの預金まではたいて何とかお金をそろえましたが、安い仕事に慣れて利益や資金繰りを考えていなかったことを悔やみ、「何のために仕事をやっているのかと虚しくなった」と橘高氏は振り返ります。

儲かる仕組みづくり

工場に持ち帰って、畳の表替え作業

 「資金繰りが良くなるためにはどうしたらよいのか」と手がかりを探すなかで、橘高氏は福岡の畳屋さんに出会い、そこの番頭さんから「材料費、労務費ともに30%を超えてはならない」と教えられました。それを守ろうとすると、新畳制作で相手がゼネコンでは無理です。ターゲットをリフォーム店に絞り、それまで売上の1割くらいだった畳の表替えの比率を高めるという方向転換をはかりました。今から10年ほど前です。

 その後、同社は関東地方のリフォーム店8万社に、2月20~23日と8月20~25日の年2回、ダイレクトメールを送ることを続けています。賃貸アパートなどは3~4月と9月が入れ替わり、リフォーム店は忙しくなるので、その直前にDMを打ちます。当時、畳の表替えは5000円くらいが相場でしたが、同社は3200円とうたいました。コスト計算をきっちりすると可能な料金でした。

エコ畳やゼロエミッションにも挑戦

 最近では、和室減少の状況を踏まえ、洋間用の置き畳の販売を手掛けています。また、残留農薬ゼロの「エコ畳表」を熊本の生産農家と共同で企画開発し、安全と安心も提供しています。

 さらに同社は、畳を替える際に出るゴミについて、これまで産業廃棄物業者に年間7500万円を払って処分していましたが、リサイクルを目的に昨年4月、福島県いわき市にリサイクル工場を設立しました。ここで、ゴミは地球環境に優しい固形燃料(RPF)として生まれかわります。畳、襖(ふすま)だけでなく、事務所から出た紙やお弁当のプラスチックゴミもここで処理し、同社からゴミは出さないというゼロエミッションを提唱しています。

会社概要

設 立:1984年
資本金:9000万円
社員数:90名(他に専属請負社員200名)
業 種:畳表替え、新畳制作、ふすま制作・張り替え、住宅資材販売
所在地:東京都大田区南蒲田
TEL:03-5710-8008
URLhttp://www.kitsutaka.co.jp/