【第39回】経営指針があるからこそ、迅速な経営戦略が打てる! (有)メタルワーク福山 社長 大植 栄氏(広島)

大植社長

(有)メタルワーク福山 社長 大植 栄氏(広島)

「バラ色の経営計画」

作業風景

 (有)メタルワーク福山(大植栄社長、広島同友会会員)はステンレスに特化した製缶業です。主に、半導体製造装置の筐体(きょうたい)、食品製造機械の部品、大型印刷機械の部品などで6割の売上を構成してきました。特に曲げや溶接においてゆがみの出やすいステンレス材の加工では、精度の高い加工技術が同社の強みになっています。
 
 大植氏は昨年9月下旬に丸山博氏((有)第一コンサルティング・オブ・ビジネス社長)の経営指針セミナーを受講しました。そこで大植氏は多くの受注残と受注見込みを抱え、「バラ色の経営計画」を立てました。

 丸山氏は、半日の時間を割いて、サブプライムローンの解説と、まもなくアメリカの金融バブルが崩壊すること、そしてその影響について、力説しましたが、大植氏は「一般教養のような感じで耳を傾けただけ、さして重要だとは思わず、すっかり対岸の火事だと気にもかけなかった」と振り返ります。

リーマンショックの荒波に襲われる

 しかし、昨年10月のリーマンショックの影響は、すぐに同社を襲いました。11月に入った時点で、12月、1月の受注はすべてキャンセルになりました。「バラ色の経営計画」は、紙くずになってしまいました。「けれど、この計画があったからこそ、情勢に対応した新しい戦略を打つことができたのだと思う」という大植氏は、まず、売上3割減に対応する経営計画を立て直しました。社員と現状を共有し、年末の賞与は3割カットするものの、給与を減額しないことで理解してもらいました。

 また3年間はこの状況で耐えられるように、運転資金の調達に走りました。セーフティネット融資で3000万円、政府系金融機関から経営革新に基づく融資で3000万円、計6000万円調達ができました。
 
 そして3年分の資金調達ができたことを社員に伝え、「雇用調整は絶対行わない、だからこそ、力を合わせてこの難局を乗り越えよう」と意思統一を行いました。

トップ営業に奔走中

社屋風景

 仕事の確保にも力を注ぎました。大きく減少した大口の仕事も、4割を占めていた小口の仕事も確保しています。そして、ニッチを狙ったトップ営業に奔走しています。特に海外へシフトしていた食品製造は、食の安全の問題から、国内製造へ戻り始めており、設備投資が動き始めていることに注目しています。

今だからこそ社員に技術力を

 そして、景気の回復局面を迎えたときのために、現状だからこそできる社員教育に力を注いでいます。金属加工技術、特に曲げと溶接の技術力の向上のために、現場の全社員がマツダの短期大学校で研修を受ける準備が整っています。
 
 また新卒を予定通り採用しています。大植氏は迷いましたが、現場の課長たちの、「今、若い社員を入れないと5~10年後に向けた技術の継承ができなくなる」との提案を受け入れました。社員の平均年齢は39歳ですが、多くは20~30代の若手社員が現場で頑張っています。「彼らの成長こそがわが社の発展だと感じる」と大植氏。コスト削減、エンドユーザーを視野に入れた製品やサービスの見直し、そして、5~10年後に向けた企業づくりに、「この厳しい状況だからこそ社員とともに取り組んでいける、取り組まなければ生き残れないと日々実感している。今、同友会での学びを実践するとき」と力強く決意を語りました。

会社概要

創 業:1972年
設 立:1984年
資本金:500万円
業 種:広告看板の製作・施工、建築板金、建物金物、店舗装飾金物、製缶薄物板金
所在地:広島県福山市箕島町南丘6480番
TEL:084-953-3018
URLhttp://www.metalwork-f.com/