【第50回】地域と企業に人を残す (株)大津屋 社長 小川 明彦氏(福井)

小川社長

(株)大津屋 社長 小川 明彦氏(福井)

 (株)大津屋(小川明彦社長、福井同友会会員)は総菜店と飲食席を一つにした全国初の「ダイニングコンビニ」や人材育成などを展開しています。「豊かな食文化の提案と人間力創造の支援をする」ことを事業領域と定め、常に事業の革新に挑戦し続けています。

危機感が出発点

 創業は1573年(天正元年)の造り酒屋。昭和30年代には「旭美人」という銘柄もあり、酒税納付も管内で一番でした。しかし、時代はどんどん変化して小川氏が事業を承継したころには「普通の酒販店になっていた」といいます。1981年に思い切ってコンビニ(福井県初のコンビニ、「オレンジBOX」)に事業転換を図りました。

 小川氏には大企業でのサラリーマンの道もありましたが、「自分で意思決定し、実行する仕事をやりたい」という気持ちが強く、家業を承継しました。「継ぐべきものがあったのはうれしいことでした。でも、酒屋の将来は本当に危機的でした。当時、今日のような新しい事業の展望があったわけでもありません。ただこのままでは必ず駄目になる確信だけははっきりとありました。この危機感がすべての出発点だったと思います」と語ります。

地域密着、大企業がやれないことで

全国初の新業態『ダイニングコンビニ』

 大手フランチャイズの傘下を拒否して独自の道を選びますが、大手とまともに戦っても絶対勝ち目がありません。「大手がやれないこと」「お客様に喜んでいただけること」、この二つに絞って徹底的に地域密着の戦略を実践します。そこから、店内調理と24時間営業のコンビニ「オレンジBOX」、大型ショッピングセンター内の弁当・総菜専門店「オレボキッチン」、全国からこだわりの食材をそろえた「これがうまいんじゃ大津屋」、ダイニングコンビニの「オレボステーション」など、ユニークな業態を次々と展開してきました。

 店内調理の現場では普段から地域の豊かな食材を使い続けています。その日の食材に合わせ、提供するメニューも臨機応変、現場の社員の自主的判断を尊重します。人気の「福井地産地消弁当」は農水省のコンテストで生産局長賞を受賞。地元のマスコミと提携した「あんしんふくい弁当」、「チカッペ!カレー!!」などの話題の食品も店頭に並びます。

 今は食肉生産業者と提携して「越前旨香豚(うまかぶた)」の商品化が進んでいます。豚の飼育には江崎グリコ社から提供されるお菓子の製品くずと飼料米が使われています。これは経済産業省の農商工連携の認定を受けています。

経営はゴールのない駅伝競走

全国初の新業態『ダイニングコンビニ』

 「変化の激しい時代ですから先のことは分かりません。でもこれだけは確信があります。どんな環境下でもそこでベストな戦略を選択し、確かな手立てが打てる経営が必要です。それは経営者だけでなく社員も含めての人材集団・組織です。『教育哲学を持った組織づくりこそ経営課題の最重点』と考える経営者を含めた人間集団を育てることです」と話す小川氏。企業と地域に人材を残すことに強い問題意識を持っています。

 「同友会も教育力ある企業づくりを重視していますね。当社が教育分野をもう一つの事業の柱にしたのもそこにあります。経営はゴールのない駅伝競走のようなものですから」と力をこめました。

会社概要

創 業:1573年
設 立:1963年
資本金:5,000万円
社員数:正社員20名 契約社員15名 パート・アルバイト250名
事業内容:・コンビニエンスストア オレンジBOX 3店舗
・弁当・総菜ショップ  オレボキッチン 2店舗
・ダイニングコンビニ  オレボステーション 4店舗
・こだわりの酒の肴・ギフト これがうまいんじゃ大津屋 1店舗
・教育事業 オレボビズスクール
年 商:17億円
URLhttp://www.orebo.jp