【第2回】本業を生かすとともに多様な連携で新商品を開発 (株)丸美屋 代表取締役専務 上田久男氏(熊本)

上田専務

(株)丸美屋 代表取締役専務 上田久男氏(熊本)

世界の食文化で注目すべき食品「大豆」

南関工場

 (株)丸美屋(上田久男代表取締役専務 熊本同友会)は、1956年に日本の「ふりかけ」の元祖東京丸美屋の創始者甲斐清一郎氏の実子渋谷氏より熊本市横手町にて、ふりかけ「是はうまい」の営業を継承して以来、人々の食生活の変化に対応しながらメイン商品を納豆・豆腐に推移してきました。
 「地球にやさしく、おいしさひとすじ 健康に奉仕する丸美屋」を経営理念に掲げ、玉名郡南関町の南関納豆工場では、1日平均30万パック、玉名郡和水町の菊水豆腐工場では1日平均18万パックを製造しています。

 また、南関納豆工場は、1999年に「ISO9001」を認証取得。菊水豆腐工場は2001年にISO14001、2006年にISO9001を認証取得。2000年には両工場で、有機JAS認証を取得し、お客へ食の安全と安心を届けています。

 本業の豆腐や納豆の製造に加え、多様な連携を通してさまざまな新商品の開発し、企業のブランドイメージをさらに高めています。

伝統へのこだわり「妙解寺(みようげじ)納豆」の復活

 妙解寺納豆は、細川藩初代熊本城主の細川忠利公を弔うために菩提寺として1641年に建立された妙解寺(熊本市)で作られていた寺納豆です。しかし、1868年の神仏分離令が出され廃寺になると同時に妙解寺納豆も途絶えてしまいました。

 納豆製造の様子

 そこで(株)丸美屋は、妙解寺納豆復活をめざし、熊本県食料産業クラスター事業の一環として細川家の料理頭であった村中乙衛門の「料理方秘1803」を紐解き、妙解寺納豆の主原料となる「みさを大豆」(1921年に農家の主婦により発見された在来種)を熊本県内の農家に契約栽培してもらいました。
 さらにその他の妙解寺納豆に入る原材料も熊本県産を集め、熊本県産業技術センター、九州沖縄農業研究センター、機械メーカーとの連携により2008年に復刻版として加工法を確立。140年ぶりに商品化するに至りました。

 この妙解寺納豆は開発途上において、熊本県で開催された2007 年度全国都道府県知事会議や、熊本城築城400年記念の催事にも提供されました。現在は熊本城の売店で販売されており、また熊本城本丸御殿の大御台所(おおおんだいどころ)2階で1日50食限定の「本丸御膳」として味わうことができます。

新商品「にゃっとう」の開発

 にゃっとう

 2010年2月22日(猫の日)には、納豆の新商品「にゃっとう」を発売。昨年夏から、若者の発想を商品に生かそうと熊本市の熊本デザイン専門学校グラフィックデザイン科に協力を呼び掛け、約50の作品の中から女学生のパッケージデザイン案を採用しました。

 新商品は「ごはんにかけておいしい納豆」をコンセプトに、開封時にタレが飛び散るという顧客の声を参考にジェル状のタレを開発。また使いやすさにこだわった、開けやすい、持ちやすい、混ぜやすい容器を使用。発売日もこだわり、「猫の日」に設定しました。九州と中国・四国地方のスーパーなどで販売をスタートし、3月だけで21万個を出荷。まずは順調な滑り出しとなりました。

食育への取り組み

 食育とは、食に関する知識を学び適切な食生活を送れるようになるとともに地域の特産物や伝統などの食文化や、国際的な食糧問題などを知り、食に関して考える習慣を身につけるための取り組みです。

 同社では、約10年前から熊本産の大豆を使った納豆を学校給食に納めていくことをめざして活動してきました。現在その地道な努力が実を結び、熊本市内のすべての小中学校の給食に熊本県産大豆の納豆を納めています。また、福岡でも福岡産の大豆を使用し、学校給食会を通じて納豆を納めています。

 このような取り組みは、食卓に大豆を原料とした納豆・豆腐という伝統食を届ける食品加工メーカーとして、食育に携わることで次世代の消費者を育て、ひいては人々の健康に寄与することを目的とした同社の社会貢献と言えます。

 また、学校、団体を対象に納豆・豆腐の製造過程がよく分かる工場見学の実施をはじめ、親子体験学習として同社が契約栽培しているJA熊本市や生産者に協力を得て、大豆の収穫体験や昔ながらの脱穀体験を行い、親子のためのふれあいの場を提供。さらに同社社員の指導のもと、家族単位で豆腐作り体験を実施。作った豆腐は、納豆・豆腐料理で食事会を行うなど食育への取り組みを推進しています。

 「経営理念に沿った企業経営を全社一丸で行い、地域社会に必要とされる企業として、多様な連携で新商品開発に取り組みます」と笑顔で語る上田専務の挑戦は続きます。

会社概要

創 業:1956年
資本金:4,160万円
業 種:納豆・豆腐その他食品製造販売
従業員数:280名
所在地:熊本県玉名郡和水町内田2211
TEL:0968-75-6000
URL:http://www.marumiya-g.co.jp/