【第4回】グループ強みを生かし 介護分野のFC展開へ 浮城興産(株) 取締役 浮城守氏(福岡)

 浮城取締役

浮城興産(株) 取締役 浮城守氏(福岡)

 浮城興産株式会社は、(株)浮城工務店(建設業 1957年創業)をはじめとして、浮城興産(株)(総合不動産業 1976年)、(株)ウキシロケアセンター(介護施設運営 2002年)、(株)ウキシロファームコーポレーション(農業生産法人 2009年)など、グループ事業を展開しています。

事業見直しから生まれた構想

 建設業界・不動産業界は1990年のバブル崩壊後、建設市場が縮小傾向にあり、一昨年の経済不況(リーマンショック)以降の冷え込みは大変厳しく、同社も例外ではありませんでした。中でも大きなマンション事業の契約解除などで多額の負債を抱えそうになり、事業の見直しを迫られました。介護事業も人の命を預かる責任の重い仕事であるにもかかわらず、介護保険そのほか多くの制約があるために、なかなか収益が出ず、浮城氏は何度もやめようと考えました。

 このような状況の中で、グループ会社の事業を見直したら、それぞれの強みやノウハウを組み合わせれば、介護の分野において新たなビジネスモデルを確立することができるのではないかという考えが湧き出てきました。建築55年、不動産30年、介護8年の実績で培った多くの集積されたノウハウをシステム化、このシステムをフランチャイズ制にして加盟店の募集を始めました。

新しい介護事業「プロジェクト2500」

 社屋

 この事業に付けられた名称は「プロジェクト2500」。フランチャイズ先の250社がそれぞれ老人ホームを10棟ずつ建設し、合計で2500棟の有料老人ホームをネットワーク化するという構想です。しかも5年以内にという目標です。
 有料老人ホームは、介護保険法や老人福祉法などに基づいた運営を行いますが、県によっては、さらに条例などで厳しく制限をしています。フランチャイズにすることで、事業者が開始当初から運営していく上で必要となる多くの経費や手間を、大幅にカットできます。ここに浮城興産グループのノウハウが詰まっています。

有料老人ホームをフランチャイズ制に

 全国に特別養護老人ホームの待機者は42万人も居ると言われています。60室×2500棟=15万室を作って少しでも待機されている方の役に立ちたい、しかも超高齢化が叫ばれる今、スピードを上げて事業展開していきたい という思いで、フランチャイズ制に踏み切りました。

 中の様子

 通常、入居者が支払う有料老人ホームの費用は、家賃や食費などを含め10万円~15万円であるのに対し、グループ会社の(株)ウキシロケアセンターが2010年2月に新規開設した住宅型有料老人ホーム「いこいの里 永犬丸」(全室個室、定員35名)は、毎月の費用を8万5千円(家賃・食費・管理費・水道光熱費込)で提供し、低年金受給者や生活保護受給者も入居しやすくしました。
 賃貸マンションの場合は、入居者本人の同意さえあれば即契約・入居となりますが、有料老人ホームの場合は本人、家族、医者(かかりつけ医など)、場合によっては市役所などもかかわってくるので、多くの人の意思決定が必要となり、入居までに時間がかかります。そのような条件の下でも、「いこいの里 永犬丸」は4月19日現在満室(入居待ちあり)です。

 有料老人ホームは賃貸マンション経営に比べると収益性が高いため、事業計画・展開しやすいという特徴があります。人口は減るけれど、高齢者は増えると予測されているため、ニーズはまだまだ高いのです。初期投資が少なく、業種転換や新規・第二次創業になるために融資を受けやすいなどのメリットがある上、多くの雇用を生む(上記15万室の場合、7~8万人)ことは、社会的貢献になります。

 すでに数カ所から引き合いがあり、2010年度中に30店の加盟店とフランチャイズ契約を締結し、随時低価格の有料老人ホームを開設する予定です。早ければ2010年中にフランチャイズ1棟目の低価格有料老人ホームをオープン予定です。

秘訣は“三方良し”

 浮城氏は社長である父から、「困っている人がいたら、その『困った』を解消することが仕事になる」といつも言われています。
 まず、入居者の方が快適に安心して過ごせる空間をより多く作ること、そこに雇用が生まれ地域が活性化すること、そして事業が利益を生み、働く人の給与を上げていくこと。「“三方良し”でないと、事業は長続きしないんです」と浮城氏は笑顔で言います。

 「フランチャイズというと、管理する側とされる側、いわゆる上下関係のように思われがちですが、高齢化する社会の問題を解決するための仲間として一緒に頑張ってくださる、いわば同志のような方を募りたいし、そういった関係を築いていきたいと思っています。1人でできることは限られています。フランチャイズ化するには、社員の協力が不可欠」と語る浮城氏は、出張の際に必ず数人の社員を同行させたり、社内外の研修などを通して人材育成に力を注いでいます。

アスパラガス栽培を通して

 一方、(株)ウキシロファームコーポレーションでは、アスパラガス栽培を始めています。「食の大切さを、自分が親になってから認識するようになりました」と浮城氏。子どもたちに安全で安心な野菜を食べさせたい という思いから始まって、日本の将来を考えたとき、農業は重要だと考えるようになりました。

 アスパラガスを選んだ理由は、作付けから収穫まで年間約10カ月の農作業があるためです。グループ全体から従業員が参加して、午前中だけ、あるいは午後だけ、と農作業に携わっています。
 まだ利益を出すほどにはなっていませんが、農業はスピードや利益ばかり言っていられない事業なので、じっくり腰を落ち着けて取り組んでいます。将来は、有料老人ホームで自社生産の食材を提供し、事業に一貫性を持たせたいという夢もあります。

 実際に事業を行っている有料老人ホームのモデルが、北九州にあります。「ぜひ、北九州に見にいらしてください」と語る浮城氏。今までの経営実績を生かしながら新たな事業に取り組む、浮城氏の挑戦はまだまだ続きます。

会社概要

創 業:1976年
資本金:7,000万円
業 種:不動産業
従業員数:9名
所在地:福岡県北九州市戸畑区牧山2-3-5
URL:http://www.ukishiro.com/
Email:ukishiro@vit.or.jp

<グループ会社>
(株)浮城工務店:資本金3,000万円 建築工事業 従業員7名
(株)ウキシロケアセンター:資本金2,000万円 高齢者介護事業
             従業員109名(内パート55名)