【第18回】優しいママのおっぱいのように大切な生命(ゆめ)を育むお手伝い (有)シーエスピー 代表取締役 千畑 博信氏(和歌山)

千畑社長

(有)シーエスピー 代表取締役 千畑 博信氏(和歌山)

 (有)シーエスピー(千畑博信社長、和歌山同友会会員)は、インターネット楽天市場にて「ミル・フェルム」のブランド名で授乳服を販売しています。
 同社の経営理念は「育児生活にファッションと潤いを♪」。若いお母さんたちの「あったらいいな」を商品にして一躍人気店になりました。通販雑誌「赤すぐ」「エンジェリーベ」への卸販売、関西の百貨店に売り場、自社ショールームでも販売しています。

人間万事塞翁が馬(さいおうがうま)

 千畑氏は、高校卒業後和歌山市内にある洋品店に入社し、商売の基礎を厳しく教えられました。23歳の時、洋品店のお客様であったある会社の社長に見込まれ、新しく出店するメンズショップの店長にと望まれ退社。しかし、そのメンズショップのオープン準備の途中でオーナーの会社が倒産。続いて就職したのが商品の企画縫製の会社で、7年間勤務し、アパレルメーカーとの交渉等商品製造の基礎を学びました。

 社屋

 結婚を考える時期となって、同業他社からの誘いを受けて転職、結婚・新築・長男誕生と人生の節目を迎えましたが、長男誕生の翌年、業績が急成長する中で取引会社の倒産の影響を受けて連鎖倒産。事後処理に追われる日々の折に、取引のあった商社の担当者の紹介で、大阪の生地屋さんの和歌山営業所の肩書きで商社の下請として創業。2年後、(有)シーエスピーとして設立することになりました。

 設立から1~3年と順調に伸び、那智勝浦町に下請工場を持つまでに至りましたが、量販店の商品が急激に中国での生産に流れ始め、またしても倒産の危機に陥りました。千畑社長いわく「人間万事塞翁が馬。私の人生にぴったりのことわざです」。

授乳服との出合い

 そうした中、取引先の商社が中国で製造した商品で、日本での検品で不合格になった物や返品されたものを安く買い受け、「ファクトリアウトレット」として地域のお客様に販売を始めました。アウトレット商品の中にあったマタニティ商品をヤフーオークションで販売したところ、その当時のマタニティ商品はほとんどが中古品で、新品であったこの商品はよく売れ、中でも「授乳服」には意外なほどの高値が付きました。
 その後、お客様の声を商品にして季節毎に商品を販売する一方で、「授乳服」の研究を始め、「お出かけ用のおしゃれな授乳服」の需要があることに気付きました。

特許商品「レイヤードタイプ」

 母乳での子育てが推奨されていますが、外出時の授乳は難しいもの。この状況を一新する同社オリジナルの「レイヤードタイプ」は、通常の洋服の胸の部分に工夫を施しています。ファッショナブルで、リーズナブルな授乳服の販売は好評を得て、右肩上がりの業績を確保してきました。
 授乳期の子どもを持つお母さんたちのコミュニティの伝言板がきっかけでお客様が殺到し、インターネット店舗オープン9カ月目で売上が1,000万円を超えました。

 その一方でインターネット通販の怖さも経験しました。オープンして2年目に、売れ筋商品と在庫商品を組み合わせた福袋を企画し大ブレイクしました。しかし、幾度目かの企画の商品に授乳機能の無いカーディガンが入っていてクレームになりました。そのお客様には、直ぐに新商品の人気商品と交換しましたが、そのお客様がブログに「文句を言ったら福袋でも交換してもらえたよ」と書き込み、それを見た他のお客様から「交換して欲しい」「客によって対応の差別をするのか」等々のメールや電話が入り、返品交換を希望された全てに応じるということになりました。

次世代認定「くるみん」取得

 千畑氏は「商品でお母さんを応援するだけではなく、小さな子どもを抱えたお母さんたちが働きやすい職場をつくることも社会貢献」と考えました。そこで、厚生労働省より次世代育成支援対策推進法に基づく基準適合一般事業主の認定を受け、次世代認定「くるみん」マークを2008年に取得しました。「くるみん」マークは、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を策定し、社員が仕事と子育ての両立を図る上で必要となる雇用環境の整備やさまざまな労働条件の整備に積極的に取り組んだ結果が認められた企業に与えられるマークです。和歌山県内においてもワーク・ライフ・バランスの先進事例として紹介されています。
 千畑氏は、wbc和歌山放送ラジオ「にこにこ子育て♪ みんなで応援 はじめの1歩」でも番組を担当し、子育て中のお母さんの悩みに応えています。

社員と一緒に

社員と共に

 同友会には2006年12月に入会しました。翌年、経営指針セミナーに参加し経営の基礎から学びました。そして、社員と一緒に「『育児生活にファッションと潤いを♪』~優しいママのおっぱいのように大切な生命(ゆめ)を育むお手伝い~『子どもの成長とともに歩み続ける会社でありたい』と私たちミル・フェルムは願っています」という経営理念をつくりました。

 3年前に社屋を建設、ショールームも完備し、授乳服・ベビー&キッズ・マタニティ&授乳育児の関連グッズ等の直売も開始。
 「従業員は大部分が女性です。業績の急成長と共に組織も拡大し、経営指針を社内に浸透させるよう努力してきました。同友会の社員教育研修や個別の従業員教育を取り入れ、または部門別にチームを組んで組織を風通し良くする工夫等、改善に努めました。

 現在商品部では、企画スタッフがサンプルを実際に着用し改善点を出し合います。販売戦略会議は、各部門のリーダーが集まって進めます。基本的には社員の意見や提案を重視し、会議も任せる形になってきています。経営理念で会社の方向性は明確ですが、もう一度社員と一緒にどういう組織や風土をめざすのかを話し合いたいと思っています」と千畑氏は言います。

今後の展開

 お客様の子供たちが、小学校にあがる年齢になり、マタニティ商品から育児用品へと、子どもの成長と共に商品アイテムは拡がっています。
「ランドセルも準備していきたいと考えています。また、香港のお客様(授乳服の利用者)から、授乳服を香港、台湾で販売したいというオファーをいただきました。販売店のオープンと共に中国でのインターネット通販も開始します」と千畑氏。
 お客様を絞り込む中で拡がる商品。「子どもの成長と共に歩み続ける会社でありたい」を事業コンセプトに、(有)シーエスピーは成長を続けています。

会社概要

創 業:1996年4月
資本金:300万円
年 商:4億3000万円
業 種:授乳服の企画製造販売 インターネット通販
従業員数:30名
所在地:和歌山県岩出市野上野15-3
TEL:0736-67-2005
URL:http://www.mille-ferme.com/