【第22回】地域に役立つ質の高いタクシーの利用法を模索、展開中!! 都タクシー(株) 代表取締役社長 筒井基好氏(京都)

筒井社長

都タクシー(株) 代表取締役社長 筒井基好氏(京都)

33才、異例の若さで社長就任

 京都市南区の工業地帯に都タクシー(株)(筒井基好社長、京都同友会会員)の本社はあります。
 本年70周年(創業1940年)を迎える都タクシーはタクシー会社・旅行会社・自動車整備工場・観光バス会社の合計9つのグループ会社です。社員数は1200名でタクシー保有台数は600台。京都市全域と福井県・山口県に系列会社があり、京都に本社を置くタクシー会社としては3番目の規模です。
 都タクシーの4代目となる筒井基好社長は、大学卒業後の5年間を福井の建材メーカーで過ごしましたが、突然父親(現会長)から会社を継がないかと誘われます。都タクシーに入社1年目から子会社の社長を任され、入社わずか5年(2006年)で、グループ会社の社長となり今に至ります。

先代社長からの一喝 

 筒井社長は当時33才。業界としては異例の若さでの社長就任でした。「入社当時から子会社の社長に就任したこともあり、初めは『拡大戦略、利益拡大だ!』と言っていました」と筒井氏。
 しかしそんな中、当時社長であった父親から一言「そんなもんは目標じゃない。我々の目標は質の高いタクシーを作ることだ。そうしていれば利益だ、売り上げだは勝手に付いてくる」と言われます。筒井氏はこの父親の言葉が、今の自分の原点になっていると言います。

不況が直撃 過当競争が招く共倒れの危機 

 社屋

 京都は全国でも人口に比して3番目にタクシー台数が多く、実質運賃は全国2番目に安い地域です。
 高度成長期には2年に一度程度の頻度で運賃値上げが行われ、タクシー乗務員は働いただけ成果が出る、稼げることがモチベーションとなる業種でした。
 また、タクシーの運賃はほとんどが現金で支払われるため、キャッシュフローは潤沢な業種です。さらに、タクシー乗務員の賃金は多くが歩合制となっているため、とにかく乗務員が居てくれれば成り立つ業種とも思えます。

 しかし、バブル崩壊後の不況で状況は一変します。観光客の減少、タクシー運賃の規制緩和、ライバル会社の度を超えた値下げにより、京都のタクシー業界は一気に過当競争に巻き込まれていきました。
 乗客の絶対数が減り、1台あたりの売り上げが下がった上に、過当競争で運賃すらも下げていかなければならない。ついには乗務員1人あたりの売り上げが、京都府の最低賃金にも満たない状況が起こってしまいました。
 そこで、業界としてタクシーの台数自体を減らし、1台のタクシーを複数の乗務員で交替して運用し、車の維持費削減の取り組みが進められましたが、そこはライバル会社同士、お互い牽制しあってなかなかうまく削減が進みません。

 さらに昨年、インフルエンザの影響で観光客が激減、夜間売り上げの中心になる祇園への外出も控えめになったため、京都全体のタクシー会社は痛烈な打撃を受けました。
 体力のない会社が次々と廃業・統廃合していく中、筒井社長は「そもそもタクシーとは何なのか」を考えました。

タクシーのお客様は誰なのか

京都はもちろん観光都市ですが、タクシーのお客様は観光客だけではありません。地元の企業もあるし、京都で生活している人もたくさんいます。「単に人を安い金額で目的地に運ぶのがタクシーの役割じゃない。地域の役に立つ質の高いタクシーを」との思いから新しい事業に次々と着手し始めます。その一つが「子育てタクシー」です。

 ある時、業界紙で「子育てタクシー」事業が紹介されているのが筒井氏の目にとまりました。「これだ」と思った筒井氏はさっそく視察して、子育てタクシー(全国子育てタクシー協会の養成講座課程を修了した乗務員が専門に乗務したタクシー)を自社で展開することを決意しました。自社で担当者を募ったところ100名以上の応募がありました。同社ならではのサービスとして、注目が集まっています。また、ドライバーにとっても、子育てタクシーは、駅前での客待ちなどと違って同社指名で用命があるので、「自分は都タクシーの社員なんだ」「地域に貢献しているんだ」という実感につながっています。

 ほかにも、「福祉介護タクシー(ワンボックスタイプタクシーを介護資格者ドライバーが運転する福祉介護タクシー)」の導入、京都では同社でしか乗れない「ロンドンタクシー」から、大学受験生の合格を応援する「合格タクシー」という、京都ならではの一風変わったサービスまで、あらゆるニーズに応えられるよう取り組んでいます。

EV車

 また、特徴的な取り組みの1つに、電気自動車タクシーの導入があります。ハイブリッドカーのタクシーはありますが、電気自動車は近畿地区で初めての試みです。
 従来のタクシーに比べて、充電での走行距離は短くコストもかかりますが、「社会(環境)にやさしいタクシー会社でありたい」と導入を決めました。
 京都議定書採択から消費者のエコ商品に対する理解は高まっており、音も小さく二酸化炭素を排出しないエコ観光ツアーへの乗客の反応は上々です。

質の高いタクシーを目指して

 「タクシーは決して特別ではなくごく身近な乗り物で、価格も下がり比較的気軽に乗ることができますが、その気軽さに甘えていてはいけない。提供する商品の値段は安くとも、使える材料は最高の品質のモノを提供しなければならない。私たちはタクシーしかできないから、タクシーを通じて地域に貢献したい」と筒井氏は語ります。

会社概要

設 立:1940年
資本金:4,300万円
業 種:タクシー・観光バス・一般車検整備(車両数約600台)
従業員数:1200人
所在地:京都市南区上鳥羽塔ノ本30-2
TEL:075-671-6101
URL:http://www.117385.com/