【第49回】委員会活動から育った「自主的社員」 (株)サンキョウ – エンビックス 代表取締役 有松修一氏(岡山)

有松社長

(株)サンキョウ – エンビックス 代表取締役 有松修一氏(岡山)

突然社員から社長に

 (株)サンキョウ-エンビックスの有松修一社長(岡山同友会会員)は、2001年に前社長が急逝したことから、社員(課長)から突然に社長就任。社内は、不平不満だらけで、とても会社と呼べるような状態ではなかったといいます。すぐに社員から「目的がわからない、目標が持てない、やりがいがない。なんとかして欲しい」旨の質問状をもらい、経営指針の作成に取り組みました。

 最初の経営指針発表会で、社員と共に会社の「理想の姿」を描き、理念の再構築、新社屋、新社名にする3カ年計画を発表しました。しかし、経営知識のない社長の言うことであり、社員の反応は冷ややかでした。

 有松氏は、社員を巻き込みながら、この計画を2年でやり遂げ、2004年1月に現在の新社名・新社屋を実現し、新たな会社づくりに取り組みます。

経営指針に取り組みEA21も取得

 経営指針書を実効性あるものにするため、ISO9001システムとドッキング。さらに当社の分析データの信頼性を高めるため、県内初のISO/IEC 17025を2005年に取得。環境経営では、エコアクション21(EA21)を委員会組織により2005年に認証取得しました。

 委員会としたのは、環境に関連した仕事をしていることもあり、社員が自ら考えて行動できるようになって欲しいとの思いからです。その後、さまざまな企画が各種委員会で行われるようになり、他の社員も徐々に参加するようになってきました。

ダルマガエルの保護活動にも参加

ダルマカエル保護活動

 環境委員会では、汚れのひどい児島湖の清掃活動(岡山市企画)に参加するようになりました。日曜日ですが、全社員が参加するようになり、近年はパートさんまで参加してくれます。

 また、あるスーパーの店舗開発に携わったときに、その地区に絶滅危惧種の「おかやま野殿ダルマガエル」が生息していることがわかり、岡山市や自然を守る会などと協力して保護活動をするようになりました。現在は「ダルマガエル保全プロジェクト」として周辺の店も巻き込み、活動しています。

 さらに、岡山市や商工会議所の企画した環境経営のセミナーで委員会として事例発表をしたり、クールビズの取り組みが評価され県知事から表彰されるなど、委員会活動が外部からも評価されています。

 経営方針のひとつである「明るく楽しく活気ある職場、笑顔ある職場を目指す」に取り組むAP委員会も活発な活動をしています。社内の清掃や町内の清掃は、AP委員会の役割です。社内の清掃は全員で毎朝実施、町内清掃は年6回アフター5で実施します。残業をしていても手を止めて自主的に参加するようになっています。そのほか、年2回ある社内発表会の企画やお花見、子どもも参加OKの社内運動会やキャンプ場でのチーム対抗カレーづくり大会などユニークな企画をして、社内の活性化に大きな役割を果たしています。

リーマンショックを一丸体制で乗り切る

 省エネ活動も3年もするとマンネリ化してきました。そんなとき、リーマンショックの影響を受け、2009年度は全ての経費に厳しい目標を定め、会社をあげてコストダウンに取り組みました。

 今まで経営指針の取り組みで成果を出してきましたが、これが達成できるかどうかは、「会社の実力が本物かどうか問われている」と位置づけて取り組んだところ、ほぼ目標を達成、減収増益を成し遂げました。「全社一丸になって取り組めた結果だと確信しました」と有松氏は話します。

 「同友エコ」にエントリーした項目では、売上が落ちた影響もありますが、CO2排出量はマイナス9%、コストにすると約150万円の削減になっています。

循環型社会構築に向け新しい仕事づくりへ

分析室の様子

 現在の事業は、主に「事業所の環境管理の一環として環境に悪い物質を法律に基づいて測る」仕事が多いのですが、社会の流れとして「環境に悪いものは使わない、発生させない」方向になるのは間違いなく、いずれサンキョウ-エンビックスの仕事も減っていくと予想。そこで4年前、新しい仕事づくりをするための部署「企画開発室」を立ち上げました。しかし、リーマンショックまでは売上も伸びており、新しい取り組みは進みませんでした。

 この急激な売上減を経験し、会社として「新しい仕事づくり」が喫緊の課題となってきたことから、今年度の大きなテーマとして再スタート。ある社員の提案による新商品開発に取り組んでいます。「循環型社会、低炭素社会構築に向けて取り組む中小企業のために必ず役に立つビジネスになる」と有松氏。この事業をビジネスとして成功させるために「経営革新計画」の申請を準備中です。

 いま、環境委員会の取り組みをきっかけに、自主的社員が育ち、経営指針を実践する大きな力となっています。社長就任時に描いた「理想の姿」が、5年前から「サンキョウ-エンビックスの目指す姿」に代わり、その実現に向けて「社員と共に頑張りたい」と話す有松氏です。

企業ドメイン

『よりよい環境を創造する』
私たちは、人と自然と産業とが調和し、共生できるよりよい環境を創造し、社会に貢献できる企業を目指します。

経営理念

一.私たちは、環境の専門家としての技術や企画提 案力を持った環境コンサルタントを目指し、社会 に貢献します。
二.私たちは、お客様と信頼しあえる関係を築き、 相互に成長し発展できる価値を創造します。
三.私たちは、人からあてにされる人間集団となり、 誇りとやりがいの持てる会社を目指します。

環境指針

1.一般及び産業廃棄物を適正に管理し、3Rに取り 組みます。
2.地域の環境関連活動に、積極的・継続的に参加・ 参画します。
3.EA21を活用し、省エネルギー化を推進します。

会社概要

設 立:1972年
資本金:1000万円
従業員数:28名
業 種:環境測定、環境分析、作業環境測定、土壌汚染調査、環境アセスメント、大店立地法申請サポート、環境経営支援(ISO・EA構築、LCA・CFP取組支援)
本社住所:岡山県岡山市南区米倉66-2
URL:http://www.sankyo-ltd.co.jp/

(「環境経営で企業革新-環境経営先進事例集-」より)