【第12回】「全社一丸」で乗り切る (株)フジタ地質 代表取締役社長 藤田 賢治氏(岡山)

藤田社長

(株)フジタ地質 代表取締役社長 藤田 賢治氏(岡山)

 (株)フジタ地質(藤田賢治社長、岡山同友会会員)は1968年にお父様と藤田氏とで創業しました。主な事業内容は地質調査、地盤改良工事等です。具体的にはボーリング調査等を行い、地盤の固さや地質の構造を調べ、建築物にあった基礎や杭の長さの計算や提案を行っています。また、地盤改良工事は、地質調査を行い、設計の提案をしているうちに、工事まで受注したらどうかという顧客からの提案で始まりました。現在社内には、地質調査部(1課から3課)、工事部、設計部、営業部、総務部と社内一貫体制ができてきています。

わが社のブランド・アイデンティティ

社内1

 創業まもない1975年にお父様が倒れ、藤田氏は当時入社していた弟さんと二人で会社経営を行うことになりました。地質調査というものは何か目に見える商品としてお客さんに提供するものではありません。だからこそ信用が第一です。

 ある時、岡山市内でマンションが建つ前のボーリング調査の仕事が入りました。その調査では、地下15m付近でいきなり堅い岩にあたり、その時は厚さ1m以上であることを確認して、建設会社に提出しましたが、巨石の可能性も考えられ、もう一カ所ボーリング調査を行わせてほしいと申し出ると、予算もないことだし、と断られました。ならば無料でやらせてほしいと、2本目のボーリング調査を行いました。結果は同じ深さで岩が確認でき、報告書には岩盤あり、として提出しました。それからはその会社の全面的な信頼を得ることができました。「安心」を提供することが自社のブランド・アイデンティティである、と藤田氏は考えています。

雇用の積極的な取り組み

 岡山同友会には1991年に入会し、積極的に例会に参加していきました。「社員数も増えていたため、経営指針の必要性を痛感していた」と藤田氏。そして共同求人に参加し、新卒採用に取り組みました。

 2005年の同友会の役員研修会で、「会社が10年後もまったく一緒だと最初から分かっていたとしたら、そんな会社に入社したいと思うだろうか」という言葉を聞き、それまでは拡大路線を考えていなかったものの、会社をもっと成長させようと、3人のベテランを採用します。その年は3億台の売上が一気に5億まで伸びました。営業エリアを拡大し、中四国、近畿圏西部まで広げ公共工事の地質調査も手掛け始めます。その結果2005年から2008年までに新卒3名、中途5名を採用し30名でそれぞれ持ち味を発揮してもらいました。藤田氏は、「『失敗の種は成功の時にまかれる』と言われますが、人に関して言えばこの言葉はあてはめるべきでないと考えています。固定費は上がりますが、彼らの頑張りがあればこそ、あのリーマンショックを乗り切ることができました」と言います。

わが社はリーマンショックをどう乗り越えたか

社内2

 2008年9月のリーマンショックは、同社にも大きな危機をもたらしました。影響が目に見えて表れたのが同年12月でした。通常ならば、他の月よりも約2倍はある売上が半減、1月以降も回復せず、2009年の8月決算は赤字となりました。当時の社内会議では、売上拡大の成功体験もあって、全員営業でさらなる売上UPで乗り切る事が方針となり、経費削減など、無駄を省く論議にはなりませんでした。しかし営業部をはじめとする各部門の奮闘も業績回復には及ばす、2010年5月には「リストラもやむなし」の声も上がります。

 そして幹部会議が開かれ、そこで話し合われたのは、リストラは行わず、経費の無駄を省き、具体的な回復の道筋を社員全員に提示する、ということでした。幹部会議の翌週、全体会議で藤田氏より会社の現状が報告されました。主には財務状況について、自社の貸借対照表を詳しく説明しながら、このままでは債務超過となり会社自体の存続が難しくなること、これを乗り切るための具体的行動として、雇用調整助成金の活用、固定費削減、外注の一部内省化、残業の削減と申告制等を提案しました。他の社員も同意し、総力を挙げて利益向上に取り組みました。

 結果、月次の赤字は止まり、経費削減の効果と外部環境の持ち直しもあって、2011年8月の今期決算は、大幅な黒字に転嫁できる見込みです。「今振り返ると、社員が主体性を持って行動する土壌が社内につくられていた事が、なによりも力になった」と藤田氏は言います。2009年は調査部門が、2010年は工事部門が売上を下げましたが、社内の中では部門ごとの対立や、人のせいにするような声は上がらなかったのです。互いに認め合う社風が一人も脱落者を出さず、危機を乗り切ることができました。

会社のこれから

 第34期経営指針書の冒頭で藤田氏は、「産業構造は転換期にあり、未来は現在の延長線上にはないこと、その中で暮らしを守り、会社を安定させていくには不況の影響を受けにくい収益構造と、外圧を受けない自立型企業を確立していくこと」を自らの決意として述べています。

 今、同社では、公共事業の分野にも積極的に取り組むようになりました。そしていままで外注に出していた土質試験(土壌が液状化しやすいかの試験)も自社内で行っています。このような新規開拓や付加価値を高めることができるのは中途採用した社員の経験があればこそ、学校で専門的に学んできた新入社員の存在があればこそです。

 藤田氏は、「これからも自社の得意分野を生かして目標を達成し、自分達の暮らしを守ると共に、生活の場であり、人生の舞台でもある会社を、全力をあげて強靭なものにしていきたい」と決意を新たにしています。

会社概要

設 立:1977年
事業内容:地質調査・地盤改良工事・土壌汚染調査
従業員数:28名
所在地:岡山県岡山市中区雄町425-1
TEL:086-208-3950
URL:http://geo-fujita.jp/