【第29回】問題解決、提案型企業めざして  (株)アイソー 代表取締役 秋山 和孝氏(静岡)

秋山社長 

(株)アイソー 代表取締役 秋山 和孝氏(静岡)

創業のころ

社屋外観

 (株)アイソー(秋山和孝代表取締役、静岡同友会会員)は、静岡県東部の沼津市で各種自動制御盤、分電盤の設計製作を主に手掛ける会社です。秋山氏の父は、国が認める1級技能士の全国13号に認定された優れたものづくりの職人で、秋山電機製作所を創業し、その技術を生かしたものづくりの仕事をしていました。

 秋山氏は、5年間のサラリーマン時代を経て、1978年に諸事情から父が名前だけの役員を務めていた会津電装(株)という別会社を27歳で引き継ぐことになり、営業として入社。それと同時に秋山電機製作所を会津電装(株)に統合しました。しかし、「下請けとして組立て、配線だけをやっていては、この先生きていけないだろう」と考え、自社での設計、製作も始めました。以前勤めていた職場の関係で、日本専売公社の仕事をさせてもらう機会があり、「なんでもやります」と隙間から入っていき、小回りを利かせているうちに、やがて直接取引ができるようになりました。1990年に現工場兼事務所を竣工したのを機に、会社名を株式会社アイソーと変え、1995年3月に社長に就任、同じ年の9月に静岡同友会に入会しました。

1社依存からの脱却

 当時は日本たばこ産業からの仕事がほとんどでしたが、設備投資の飽和や工場の閉鎖など、たばこ離れの外部環境の変化に伴い、売上が次第に少なくなっていきました。このままではいけないと悩んでいた時、静岡県の委員会活動として始まった「経営指針を創る会」に第1期生として参加することになりました。

 それ以前にも支部の活動として理念をつくってはいたものの、計画・戦略まで深く入り込んではいませんでした。経営指針をつくっていく中で、同友会とのかかわり方が深まっていきました。「異業種であるメンバーそれぞれの指針づくりは、自社へのヒントがいっぱい詰まっており、常に刺激的です。また変に自社をカムフラ-ジュする必要はなく、抱える悩みや問題点を自分からぶつけなければ、はね返るものが何もありません。ここまで話さなければいけないのかと、少しためらいはあったものの、会員相互によるアドバイスは適切で、まるで自分事のように真剣に考えた、愛情に満ち溢れたものでした。目先の仕事が忙しいときなど、仕事を早めに切り上げての沼津から静岡までの道のりは車で1時間以上かかり、思いのほか遠いものでした。何度か『もうやめてしまおうか』と思うこともありましたが、その都度踏みとどまったのは委員長はじめメンバ-の温かい励ましによるものでした。こうして経営指針を創る会での活動を通じて、支部活動とは違った県全体としてのつながりの大切さを認識するようになりました」と秋山氏は言います。

指針をつくり、社内風土が変わる

 指針を成文化した後、さっそく自社でも指針の発表を行い、各自の役割確認や、会社はこの先どんな方向に向かうべきか、話し合いました。その結果、毎日の朝礼にもつながり、経営理念を全員で唱和するようになりました。少しずつ社内の雰囲気が変わっていき、社員それぞれが「自分たちが今やっている事は、会社の理念にあっているのか」を考えるようになっていったのです。

 経営指針をつくり、自社を客観的に見ることによって、秋山氏は県内の取引先が少ないことに改めて気がつきました。そこで「経営指針を創る会」で出会った仲間たちの会社へ営業をしてみることにしました。

 その中で、こるどん(株)(後藤百合子氏、静岡同友会会員)を訪問した時のことです。「当初は『あまりうちの会社に制御は関係ないので』というお話でしたが、『弊社ではこんなことができます』とお話をしていくうちに、『そういえばこの件でずっとどうしようか悩んでいる』と社員が休日にラインを止めに出勤しなければならない現状を知る事ができました」と秋山氏。こるどん(株)は組紐製造業で、一度動かした機械は糸を巻き取るまで、休日も動き続けるということだったのです。また、一つのラインで使っていない機械も動かす無駄な動作がありました。この話から、運転、休止の設定できる制御を用いて、不必要な機械は自動的に切れ、社員が休出をしなくても済む装置の設置や、他にもタイマ-による電源停止などを導入しました。

お客様の喜びが目に見える嬉しさ

 この結果、後藤氏からは「月平均33万円程度かかっていた動力費が25万円程度に削減され、削減率25%です。計画的にライン別の割り振りができるようになり、仕事の効率アップにつながっています。今後もまたよい方法がありましたらご紹介ください」とわざわざご連絡をいただいたほどです。

 秋山氏は「今までは工場などの取引先ばかりで、顧客からこのように効果を直接フィードバックしていただく機会がありませんでした。お客様の喜びは私たちの喜びであり、直接お話がきけて社員もとても喜んでいます」と語り、経営理念の一節にある「私たちはお客様の発展と向上をめざし、技術と小廻りのきくサービスを提供します」の実践が、お客の細かなニ-ズを探り問題解決を図っていく、新たな提案型営業にあることを見出しました。

困ったことを解決する提案型企業になる

 制御装置

 現在は既存の分電盤に後付けできる電子制御装置の設置を進めています。そのときどきの電力使用量が目に見えるようにし、省エネ意識を持てるようにしました。またこの装置は節電目標を達成できたかどうかをお知らせする機能も内蔵します。そして高齢者の足に代わろうと、急傾斜地での乗用運搬装置(モノレ-ル)も他社と提携開発し、その販売促進にも努めます。

 「今後はもっとお客様の気持ちに寄り添い、潜在ニーズを聞き出していくことを心掛けたい。そして、『こんなことで困っている』『こんなものがあったら便利』という小さな不便を見つけ、解決方法を考える提案型企業として生き残っていきたい。投げかけをしなければ需要は生まれません。モノを売るだけではなく、お客様の声を形にしていき、ものづくりサービス業を目指します」と秋山氏は今後の展望を語りました。

会社概要

設 立:1971年7月
事業内容:電機機器製造(自動制御盤、分電盤、配電盤等の設計・製作)
従業員数:8名
所在地:沼津市大諏訪568
URL:http://www.aisoh.co.jp/