【第36回】会社の発展と向上のための3つのステップ (株)セーフティ&ベル 代表取締役 宇佐見 弘氏(東京)

宇佐見社長

(株)セーフティ&ベル 代表取締役 宇佐見 弘氏(東京)

経営指針をつくるきっかけ~社員と危機感を共有して

 (株)セーフティ&ベル(宇佐見弘社長、東京同友会会員)は今年で43期目。ビルやオフィスの出入管理システム、住宅・マンションなどのインターフォンセキュリティシステム、ホテルや施設などの映像システム、防災システムなどをメインに展開しています。

 10数年前はバブル崩壊による多額の負債を抱え、縮小に継ぐ縮小で年商2億弱の利益をやっと計上する、15名足らずの「風前のともしび」の会社でした。宇佐見氏は「うちの会社に存在価値があるのか?」と考え始め、それが経営指針をつくるきっかけとなりました。

 現在、正社員50名、協力会社を併せると100名近くにのぼります。企業の根幹をなすのは「人」。将来性のある会社にするために、まず、経営者が裸になり、現状をありのままに話すことで、社員と危機感を共有しました。そして、基本姿勢も変えました。「おはようございます」「ただいま戻りました」、お客さまには「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」。これだけのことで会社は変わりました。お客さまに喜ばれ、信頼されていると気づき、社員ひとりひとりの意識が変わり始めました。

漁場を知り、変化を知る

船が操れても「漁場」が分らなければ、漁にはなりません。そこで必要となるのが顧客の掘り起こしです。そのためには顧客リストの作成が不可欠です。時代の変化を知ることも大切です。潮目が変わり、仕掛けを変えなければ魚は釣れません。

 いろいろな経験から、「おたくは何屋さん?」「えっ!ホント!」「それでうちに何をしてくれるの?」この3つのキーワードを学びました。その中でも「えっ!ホント!(そんなこともできるんだ!)」をつくらなければならない。そこで同社は、通信・防災・防犯が専門の会社から、電気関係の分野へ、地デジの専門家にもなりました。その技術を持って、マンション管理会社など今までとは違った「漁場」に踏み込んで行きました。地デジを売り込んで行った中で、同社は「一から十まですべてやります」と、さまざまな提案をしていきました。

バブル崩壊後、自社の存在価値を強く意識しました。メーカーと直接取引の弱電システム工事のオールラウンドプレーヤーであることが同社の強みです。同社のよさは、「何でもやります。何でもお手伝いします。仕事を断りません」。それができる社員と協力会社をつくりました。何が何でもやりきることが大切です。そこでお客さまは「あそこに頼めば大丈夫だ」と安心します。その結果どこからでも仕事がくるようになりました。100%の下請け企業からスタートしましたが、現在年間約200件以上近いお客さまに4,300件近い見積もりを提案し、内1,500件以上の物件を受注しています。上位20社はほとんどが上場企業か系列企業などで、その中の上位5社はほぼ固定していますが、依存度は合わせても約35%です。

わが社の強み 提案力と自立的社員の育成

社内研修の様子

「3・11以降、省エネにも力を入れています。営業マンは16名いますが、みな提案力を持っています。一介の工事屋が提案力を持っているということは強みで、そこまで社員を育て上げたことはとても大きいです」と宇佐見氏。今では大手ゼネコン系列の管理会社から直接取引ができるか、問い合わせがあります。価格で喜ばれ、対応でも喜ばれています。また、親会社に気を使わずにすむことでも喜ばれています。それが評判を呼んでお客様の紹介もあり、ホームページで事前調査をするお客さんも多くなりました。「お互い事前調査し、探してくる時代です。ホームページの大切さを感じています」と宇佐見氏は言います。

 2010年6月から新たな3カ年計画が始まっています。スローガンは、ピンチはチャンスと捉えて、「すべてにチャレンジャーとなれ!」です。初年度は耕し(ホップ)、2年度は種まき(ステップ)、今期が計画の最終段階の改善・改良・提案(ジャンプ)です。危機感は飛躍をもたらします。震災の影響で4月以降の受注がほとんどなくなり、6月からの仕事は極端に落ち込みました。しかし、その後急速な回復を見せ今期の受注は前期の140%・目標の122%を達成しました。これは危機感の表れです。危機を共有して「よし『漁場』を探そう」と社員が動いた結果です。ピンチをチャンスにする力が社員の中に育っており、同友会らしさを実践した証でもあります。

 また、この間、給与体系、就業規則の見直しなど、すべてを機能的に、シンプルにしました。宇佐見氏は、「行動規範を社員自らの手で作成し、お客さまにも渡しています。これも社員が成長したと感じさせてくれたことの一つです。継続可能な会社像を目指して、継続可能な会社のための行動指針をつくりました。創意工夫のない考える力を持たない限り、継続可能な会社にはなれないと思っています」と言います。

会社は生き物

 会社は生き物です。努力を怠れば枯れます。会社の発展と向上のために繰り返し行う三つのステップがあります。

ステップ1:土壌の改良と種まき①創業の精神(原点回帰)②問題(危機)意識(見直し)③顧客の見直し(掘り起こし)
ステップ2:品種の改良と育成①改善・改良・提案(創意工夫)②人材の育成とレベルの向上(教育)③わが社の存在意義と顧客満足度(存在意義)
ステップ3:刈取りと新規開拓①共存共栄と飛躍への挑戦(共に育つ)②社会的貢献と生活の向上(使命感)③理想の会社像を目指して(向上心)④新規市場と飽くなき挑戦(チャレンジ精神)

 「種まき」と「育成」と「刈り取り」を繰り返し行えばいいのです。同社では、これにそって3カ年計画を実施しています。種を撒いた分しか芽はでませんし、丹精込めないと育ちません。いい刈り取り方をしなければ、土壌が守れません。

同友会運動と企業経営は一体

 「経営と同友会運動は車の両輪です。多くの例会や集会が行われている中で、知り合い・学び合い・励まし合うことは行われていますが、気づきあい・競いあい・結果を出しあうことが忘れられています。結果の出ない会に魅力はないと私は思っています。同友会らしさ、同友会らしい経営とはお互いの磨き合いから生まれるものなのです」と宇佐見氏は語ります。

会社概要

創 業:1969年
資本金:2000万円
業務内容:防犯・防災システム、メディア・通信ネットワークシステム、管理コミュニケーションシステム、快適環境提案
従業員数:50名
所在地:東京都品川区東五反田1-20-7 KAMINOⅡ
TEL:03-3446-3941
URL:http://www.safety-bell.com/