【第47回】(株)同友会の学びが強みを生む ティーピーパック 代表取締役 池川 和人氏(北海道)

池川社長

ティーピーパック 代表取締役 池川 和人氏(北海道)

同友会との出合いで大切なことに気付く

 (株)ティーピーパック(池川和人社長、北海道同友会会員)は、1989年に包装資材の商品企画やパッケージデザインをする会社として創業しました。池川氏は共同経営者として創業にかかわり、2005年には社長に就任。翌2006年には北海道同友会に入会しました。「さっそくさまざまな会合に出席しました。わけもわからず2007年に参加した『経営者大学』では、忙しい中でも一生懸命学ばれている経営者を見て感動しました」と池川氏。

 先輩経営者の勧めで「第5期経営指針研究会」にも参加して経営指針を作りました。そのときから会社の方針や年度のスローガンをつくるようになり、さらには社員との面談を始めるなど、社内コミュニケーションの強化を進めてきました。

 ところが、経営方針や計画を社員に伝えてみてもなかなか受け止められません。「こんなに努力しているのに、なぜなのか?」同友会の例会に参加しながら、自問自答が続きました。「そうして次第に『自分自身の考え方や行動を変えなければならないのではないか』と感じるようになり、『社員と共に学ぶ』ことの大切さに気付いていったのです」と池川氏は語ります。

経営指針を生かし、独自の事業展開

同社の経営指針(経営理念・経営方針・経営戦略)です。

経営理念 北海道№1のパッケージマーケティングカンパニーを目指す
◎北海道産品の付加価値を最大限に高める
◎社員の幸せを通じて社会貢献する

経営方針

 同社はこの経営指針を柱に、北海道に根差し、食品分野を中心した多岐にわたる商品開発を進めています。単なる包装資材の卸売りではなく、企画段階から形態・ネーミング・デザイン・販売支援までを一貫して行ない、付加価値を最大限に高めています。

 創業時から、同族経営をせず、在庫を持たないことを基本としてきました。さらに自社では製造部門を持たず、コスト・スピード・環境性に配慮した事業展開を目指しています。

わが社の強みとは?

 池川氏は「経営指針研究会」を修了してからも、札幌支部の経営指針委員会や「経営指針実践研究会」の一員として、新たに経営指針づくりを進める会員のサポート役をしたり、自社の経営指針実践上の悩みを出しながら学びあったりしていました。

 そうした中、2009年に「企業変革支援プログラム ステップ1」が中同協から出版されました。まさに、自社の経営指針浸透度を図る上でうってつけのテキストです。同友会3つの目的、労使見解、21世紀型中小企業づくりを柱に据え経営実践していくための絶好のサポーターでもあります。

 池川氏は、これを経営者だけではなく社員にも記入してもらうことを考えました。経営者の主観ではなく、社員の目からも経営指針の浸透度をチェックしてもらいたかったからです。そうした中で、社員が考え社長も同感である同社の強みが浮かび上がってきました。それは次のような内容でした。

<(株)ティーピーパックの強み>
 ・同業者と比較してコーディネート能力が優れていること
 ・道内各地に顧客があり、道内全般の情報が入手できること
 ・多くの仕入れ先を有し、顧客ニーズに対しての対応が幅広いこと
 ・社員の平均年齢も比較的若く活力があること
 ・他業界からの出身者が多く、過去の経験・知識が多様なこと
 ・顧客から、マーケティング、デザイン、パッケージ提案内容の評価が高いこと

 社員の皆さん

 同社では、北海道産原料・製造・販売先にこだわった商品策定やホームページでのパッケージトレンド情報の発信、主要得意先へのオリジナル商品・製造ライン・販売プランの提出を進めています。社内には将来の新規事業などを検討するグループも誕生しています。

 今後は、特に営業組織をピラミッド型のトップダウンから極力フラットにし、ボトムアップ型に変更していくことを検討しています。また会議をなくし、日常の打ち合せとミーティングを重視し、速やかに意思決定・発信できることを目指しています。社員の意見を生かしたマニュアルづくりを進め、パソコンに依存しない意思伝達のあり方も検討しています。

社員が同友会大学を卒業

同友会の各種社員研修会には積極的に社員に参加してもらうようにしています。「同友会大学」もその一つです。
物事の本質を体系的に追求し、幹部社員に求められる総合的な能力を学ぶ場である「同友会大学」は1981年1月に開講しました。これまでに2,286名が卒業し、卒業生は会員各社や地域経済のかけがえのない担い手として活躍しています。全30講、出席8割以上、レポート4回および卒論の平均点50点以上が、卒業必須条件。2011年の第59期同友会大学には、同社の幹部社員が2名参加し、見事卒業しました。卒業した二人は、「記録集」で次のように感想と決意を語っています。
「多岐にわたるテーマで勉強することができ、このような経験はなかなかできるものではないと思いました。…学ぶという姿勢を風化させないよう今後も日々学んでいきたいと思います」(魚住直広氏)、「大学教授の方や経営者の方の講義をお聞きし、一単元ごとに深く掘り下げてお話を聞くことができました。…何を見て調べたら良いのかがわかるようになりました」(齊藤和也氏)。こうした幹部社員の学びの力が、同社を支え変えていくのです。

新分野への挑戦

 2010年2月に同友会の紹介で参加した農商工連携マッチングフェアで、北海道立工業試験場デザイン開発科との連携ができるようになりました。ブランドコミュニケーションデザインの提案と実証プロジェクトを立ち上げ、社内の新規事業展開につながっています。

 そうした中で、氷が長持ちするブロッコリー専用発泡容器「ヌクミズくん」を開発しました。この容器は保存用の氷が溶けてできた水をスムーズに排出できる仕組みを持っています。従来のブロッコリーの輸送に使われる発泡容器は輸送中に氷が溶け、中の野菜に影響を及ぼすことや、溶けた水を排出する際、フタを開けて容器を持ち上げなければならないことが、保存性および作業効率性の点から問題視されていました。アイディアや発想は同社が提供し、発泡容器製造会社と1年がかりで開発し、特許を取得。簡単に水を排出できる仕組みを作り上げました。

 こうして池川氏は同友会での学びの力を生かし、新分野への挑戦に燃えています。

会社概要

設立・創業:1989年
資本金:9,000万円
事業内容:包装資材、商品企画、パッケージデザイン食品・包装関連機器の販売
年 商:18億8000万円
従業員:30名
所在地:北海道札幌市西区八軒9条西6丁目2番4号(本社)
TEL:011-622-6111
URL:http://www.tppack.co.jp/index.html