【第9回】社員一人ひとりの活力がみなぎる企業風土 (株)仁張工作所 代表取締役 仁張 正之氏(大阪)

仁張社長

(株)仁張工作所 代表取締役 仁張 正之氏(大阪)

ものづくり大阪を支えるチカラ

 生駒山脈の西麓、旧大和川の水利で栄えた河内の国より、豪族、水走(みずはい)氏の名が残る、東大阪市水走。大阪のものつくりの生産拠点として中小の工場が立ち並ぶ中、(株)仁張工作所(仁張 正之社長、大阪同友会会員)の3階建て本社工場は白い壁に屋根の青いラインがひときわ目立ちます。

 東海道新幹線が開通、日本を縦断した記念の年に、現会長が創業しました。以来半世紀近く、スチール、ステンレスの板金加工業として各種保管庫やキャビネットデスクなどを製作してきました。1996年、父の後を継ぎ、正之氏が代表取締役に就任。新しいものづくりへの挑戦が始まります。

 オフィス家具・スチール家具の製作では顧客が求める使いやすさ、便利さへのこだわりを追求してきました。便利さをカタチにするオーターメイドに特化し、イメージピッタリの製品を目指して、開発、設計から切断、プレス、溶接組立、塗装、仕上げ、完成出荷まで一貫した製品の生産体制をとり、完成品を提供できるシステムを構築しています。

全国展開で販売網を拡張

作業の様子1

 インターネットによる「21世紀型販売網」の立ち上げは、中小企業にとってもすぐに全国版となることのありがたさから、力を入れてきました。任張氏は「下請半製品出荷だけではなく、受注生産で、独自に開発した製品を直接ユーザーに届ける喜びに夢を膨らませた」といいます。同社が手掛ける製品は、「沖縄那覇セルラースタジアム選手用ロッカー」「特大マップケース」「消防署員用防火衣ロッカー」そしてブームに乗った「コイン駐車場の精算機用プロテクター」や「プリクラ機の板金部品」など、どれも通常の事務所家具カタログでは見かけられないものです。

1秒を争う出動が求められる「消防署の防火衣ロッカー」は、納入後に利用の仕方などを調査させてもらい、使う人によって道具の入れ方が違うことなどが分りました。調査することで、次につくるときには便利なフックや棚を改良するなど、その努力の成果は新たな受注につながりました。

 ホームページからの受注は毎年増え続け、売上を担う4本目の柱になりました。製品紹介のページの多品種、独自性、商品の紹介文も好評ですが、特に目を引くのがそこに登場する社員の顔ぶれ、その表情です。「造り手の顔が見える製品」「使って貰える喜びが溢れる会社」「一丸となり品質管理に取り組み、品質を保証する」という心が表現されているのです。

全員参加の改善提案は知的資産の源

作業の様子2

 同社では、社員やパート全員を対象とする「改善提案制度」があり、活発に取り組まれています。「現状よりよくなれば全て提案になる。上司にいちいち相談しなくてもやればいいに決まっている小さな改善を提案する」と、定着化・習慣化を進めてきました。「提案には100円~10,000円の報奨金を出す」としたところ、多数提案が寄せられ、年間で1,000件を超えます。その提案書は必ず仕分けされ、採用されたものは、会社にとって貴重な財産に変わります。また、コスト削減につながるエコアクションへの道のりをたどります。

 「顧客満足度は社員満足度が土台となると考え、社員一人ひとりの活力がみなぎる企業風土の会社を目指し続けてきました。そこに『板金加工の専門家集団』としての技術の研鑽(けんさん)、人材育成のポイントがあるのかも知れません」と任張氏。少しでも作業効率の良い動きを提案することや、生産性を上げるための機械の能力を最大限に生かす稼働率向上について、こだわっていくこと。そうした改善提案が、同社の質を高め続け、知的資産経営への取り組みにつながってきました。

キャリアは自社で育てる

作業の様子3

 中小企業にとって、ハードルの高いISO9002(1996年)、9001(2008年)の取得や、環境マネジメントシステム「エコアクション21」の認証取得は、企業のブランド力を高めています。その取得に際し、プロのコンサルタントではなく、社員プロジェクトによる認証取得に取り組んできました。任張氏は「当時、ISO認証を目指す大阪同友会会員有志で勉強会を開きましたが、みんな途中でくじけそうになった」と笑います。

 こうした認証取得に向けた学習は無形の財産であり、企業における知的資産です。バブル崩壊後の未曾有の経済不況、リーマンショックといった外的要因が常に企業を苦しめ、危機管理が求められる中、同社では3年を中期として綿密な経営計画を立て、すでに第4次となりました。

 「人材の採用については、いつも試行錯誤で、少しでも良くしたいと思っています。大手企業を定年前で退職した人も、当社ではありがたい知恵袋です。京都の工場は高校新卒を雇用し、本社では1996年ごろから同友会の大学共同求人にも参加しています」と任張氏。

 今年古希になるという現役の働きをバリバリ見せる年配者から、新卒の若者までさまざまな年齢の人がいる同社。「基本技術はベテランに、ITは若者にまかせることでうまくいく、画一的な指導はやめて、その人に見合う仕事・指導をすることにしている」と仁張氏は語ります。
 数々の表彰を受けてきた同社の強みは、社員の学習意欲と社長のおおらかな人材起用にあります。

会社概要

創 業:1964年
資本金:1,000万円
事業内容:別注スチール家具・ステンレス家具、各種精密板金加工などの製造・販売業
従業員数:95名(パート・アルバイト含む)
所在地:大阪府東大阪市水走3丁目14番6号(本社)
    京都府福知山市三和町千束814番地(三和工場)
TEL:072-962-2831
URL:http://www.nimbari.co.jp/