【第31回】「ちょっとずつ」 ティーアンドディー(有) 取締役社長 錦織信雄氏(鳥取)

錦織社長

ティーアンドディー(有) 取締役社長 錦織信雄氏(鳥取)

社屋

 ティーアンドディー(有)(錦織信雄社長、鳥取同友会会員)は、2000年施行の介護保険制度に照準を合わせて、その前年に法人を設立、創業。介護保険制度下でのホームヘルパー事業でスタートしました。全くの未経験の業種であり、当時の業界では民間が参入できませんでした。錦織氏は「なぜこの業種で創業したのか。自分なりに情報を収集し、ある程度理由づけはできますが、最大の要因は『勘』または『感覚』だったのかな」と振り返ります。その後、介護保険制度の浸透拡大に伴い、それに連動するかたちで、会社の規模は着実に成長してきました。

「経営指針書経営」の恩恵

 創業当初に、ちょうど鳥取県に中小企業家同友会設立準備会が発足されていました。独立開業を心配してくれた縁ある方から同友会を紹介され、例会へ出席するようになりました。当初はあまり熱心な会員とは言えませんでしたが、その数年後、隣県岡山同友会の「経営指針を創る会」を受講し、以後は同友会の存在が非常に大切な存在となり、現在に至っています。
 
 「今まで、生き残ってこられた要因。そしてこれからの成長を支えてくれるもの。そういう評価が経営指針書です。計画書だけだと、数字は自分に都合の良い方向に導かれ、ともすれば矛盾と向き合わなければなりません。ぶれない経営、ぶれない経営者の魂としての『理念』。そして客観的に物事を見つめ、判断できる能力が伴ってくる『方針』。そして『計画』。これらが、複合的に絡み合い、整合性を持つようになると会社の歯車がかみ合い出すのでは、と思っています」と錦織氏。

 具体的にはどのような恩恵であったかというと、銀行との取引が挙げられます。未経験業種であり、業界自体も実績がない。なおかつ、自己の資産もなく、第三者保証もなしでしたが、経営指針書のおかげで銀行との関係がうまくいき、いままで会社を存続できました。財務的にはまだ留意点はありますが、毎年度指針書を担当者に持参し、前年度の報告と合わせて欠かさず行っています。

 また、社長自らの変革や成長にも導いてくれています。成文化することで、逃れようのない責任が発生し、ごまかしが利きません。「感情からある程度解放され、物事を客観視することが可能となりました。ほんとうに、ありがたい存在です」と錦織氏は言います。

ちょっとずつ変わる、ちょっとずつ成長する

 事業の様子

 創業より今年で14期目ですが、振り返ると会社だけでなく自身も大きく変わりました。「人格も、そして見た目も、14年間で大きく変化しましたが、実は毎年ちょっとずつ変わっているのだと思っています」と錦織氏。そして、幹部として育っている社員も変わってきています。「社長として、頼りにする方々が、ちょっと変わったり、努力したりする姿が嬉しく思え、感謝の気持ちを覚えます。多分こうした連鎖が今後起こっていくのだろうな、という自信が出てきました」と錦織氏は言います。

 また、理念も最近少し改訂しました。会社の皆で共有するにあたって、解釈の誤差を極力小さくしたい。そして会社の可能性を広げたい、という思いがあったからです。新しい理念を大切に、丁寧に社内で共有していく取り組みを始めています。

 「積み上げてきたもの・ことを礎とし、また少しずつ会社として成長していこうと思っています。いまは、現業への権限移譲をある程度実施し、その経過を評価している段階です。そして、新たに経営革新を取得した上で、またちょっとずつ成長していこうと企んでいるところです」と錦織氏は語ります。

会社概要

設 立:1999年
資本金:700万円
業務内容:デイサービス・ホームヘルパー・移動美容
従業員数:57名(うちパート33名)
所在地:鳥取県米子市両三柳825
TEL:0859-30-0887