【第3回】人を幸せにする機械づくりと、共に歩む理念の実践 板橋工機(株) 代表取締役社長 河合 浩史氏(静岡)

河合社長

板橋工機(株) 代表取締役社長 河合 浩史氏 (静岡)

二代目経営者

 44期を迎えた板橋工機(株)(河合浩史社長、静岡同友会会員)は、静岡県東部の沼津市で省力化機械や荷役機器の設計製作、包装資材の販売を行っています。「現場の難問解決はオーダーメイドで」をコンセプトに、お客様の特性、現場に適応した機械の設計、製造、設置、アフターサービスまで自社一貫体制を敷いています。「お客様を知ることがものづくりの原動力」と話す社長の河合氏は、高校卒業後サラリーマンを経て28歳のときに入社。翌年の1995年に静岡同友会に入会しました。後継者として社員に行動指針を示すものの、うまく浸透していかない苦い経験もしました。支部の理念委員会で経営理念を成文化しましたが、後継者の思いは社員に発表することなく伏せたままでした。

同友会で学んだ人を生かす経営理念

社屋

 2005年の社長就任を機に、2008年に第5期県経営指針を創る会を受講して、作成していた経営理念と1年間向き合いました。その中で「省力化機械をお客様に提案することでお客様の生産性向上を目指します」から「お客様の生産現場の問題解決を目指します」に変更しました。
 
 機械を導入したお客様の生産ラインが稼働した日を境に、そこで働いていた障がい者の姿を見かけなくなり、あるとき「その職場で彼が働ける仕事が無くなった」と聞きました。「他の職場を見渡しても姿が確認できず、解雇とは聞きませんでしたが、『そういうことなのだ』と思いました。生産性向上だけを追求すると、社会的弱者の働く場が失われ、省人化に拍車をかけることを実感しました」と河合氏。そして「人に喜ばれ、幸せにする省力化機械を作りたい」と基本姿勢を固めました。河合氏は2002年には中同協第11回障害者問題全国交流会の実行委員長、その後4年間、県の障がい者問題委員長を務め、「だれもが安心して長く働ける社会づくり」の必要性を感じ、委員会活動も積極的に取り組んできました。

指針発表会を開催

 理念が固まり、創る会を卒業した2009年からは、社内で経営指針発表会を年1回開催しています。まず経営理念の意味を社員とともに再確認し、次に方針の個別検証と計画を河合氏が発表します。理念に謳(うた)う「問題解決」が難しかった案件も経営指針書に明記して、製品に求められたレベルへの対応や自社の評価など、成果と反省点を社員と共有、今後の経営計画につなげていく説明を丁寧にしています。その後は機械製造と包装資材の各部門の社員から、それぞれ行動計画を発表してもらいます。

現場で生きる理念

 「お客様の生産現場の問題解決」の理念のごとく、実際にお客様と向き合い、行動することでどんなお役立ちができるのかを初めて気がつくことができます。発表会は理念実践のスタートに過ぎません。「自社の機械を設置いただいている製紙会社で、社員2名が作業しているとき、他社メーカーの納めた機械に不具合が出て生産ラインが止まる出来事がありました。そのメーカーの即日修理ができず、困惑する現場に居合わせた社員から『その機械を直してきました』と報告がありました」と河合氏。経営理念が社員にも少しずつ浸透してきた成果でした。また、新規で1台の機械を納品した別のお客様からの要望解決を社員に任せると、社員は何度も足を運びお客様の信頼を受け、2台目の受注につながりました。もともと現場で対応することが好きな河合氏は、経営指針を確立するまでは、「自分自身が板橋工機の顔であり、看板である」という思いを持っていましたが、社員が行動の中で理念を実践する姿に、「社員の働く姿勢こそが板橋工機」と実感しました。

新規事業への挑戦

 新規事業にも積極的に取り組んでいます。障がい者問題委員会を通じ、2011年には静岡県西部の浜松市で野菜栽培を行う企業から、「水耕栽培の芽ネギとスポンジの分離機」を受注しました。この企業は障がい者雇用の推進で全国的にも知られています。受注先の社長や理学療法士と協力して、高齢者や障がい者の作業効率を上げる省力化機械を開発しました。効率だけでなく、作業者のリハビリ効果が期待される設計にもこだわりました。「何より、雇用の創出に協力できたことを実感しました」と河合氏は言います。ここに、全ての人に喜ばれ、必要とされ、だれにでも優しい機械が完成しました。2011年11月には経営革新も取得しました。「人を幸せにする板橋工機の機械づくり」の認知活動を進め、10年後にも必要とされる会社をめざしています。

生きがいと幸せを

 「人を幸せにする機械づくり」という基本姿勢を追求していくことは、お客様や仕入先の喜びだけでなく、そこで働く人の働きがいや活力を育むことにもつながります。43期の社内合言葉は「常に考える」でした。そして44期の合言葉は「おはよう!いってらっしゃい!お疲れさま!」を掲げました。2011年度から沼津支部長を務める河合氏は「社員のやりがいを引き出すことは社長の責任」と、今一度コミュニケーションの原点に回帰し、同社とそこに関わるすべての人が幸せで生きがいを見出す経営に挑戦し続けています。

経営理念

1、お客様の生産現場の問題解決を目指します。
2、誠心誠意と感謝の心で仕事を行い、お客様の喜びを私たちの喜びとします。
3、お客様と自社、協力会社の共存共栄を目指し、社会に貢献します。

会社概要

設 立:1970年
資本金:1,200万円
事業内容:省力化機械の設計製作、包装資材の販売
従業員数:11名(会長、社長含める)
所在地:静岡県沼津市桃里561-1
TEL:055-966-1246
FAX:055-966-6769
URL:http://itabashikouki.com/
メール:kawai@itabashikouki.com