【第5回】お客様の感動、社員の幸せ、地域社会・地球環境への貢献(株)宗重商店 代表取締役 宗守 重泰氏(石川)

宗守社長

(株)宗重商店 代表取締役 宗守 重泰氏(石川)

宗重商店の創業

社屋

 (株)宗重商店(宗守重泰社長、石川同友会会員)は、宗守氏の祖父が1939年に金沢市尾張町で創業しました。創業当初は現在のような法規制もなく、老朽化した建物の構造材を再利用・転売する「生かし解体」と、解体時に発生した骨董品や古材を販売する「古物商」を主な生業とし、人から人へ物をつなぐ役割を担っていました。

 その後、大量生産・大量消費の「質より量へ」と時代が変わると物は再利用されなくなりました。父親が二代目を継承した後は、創業当時からの技術を生かして解体専門業者として業態転換し、北陸3県を中心に滋賀県湖北地域まで営業エリアを拡大していきます。

 しかし、高度経済成長が生んだ副産物は多く、大量廃棄されたものが次第に環境問題へと発展します。1971年の廃棄物処理法制定以降、年々強化される法規制に対応し、地球環境に対しての社会的責任を果たすことが、解体専門業者に求められる任務となっていきました。

サービス業界から解体業界への転身

 先代の父親が病に倒れ、長期に渡って入院したため、宗守氏は地元百貨店勤務から急遽、家業の解体業へ転職することになりました。後継者としての決意を持って家業へ入りましたが、今までとは全く違う業界で何一つ分からないまま、実質の経営者として携わることになります。「まず始めに、家業の実態を知り驚きました。多額の負債を抱え、顧客離れが進んでいたのです。また、家業ということで多くの許認可が個人登録になっており、そのため父にもしものことがあった場合、業務停止という危機もあるということに気づかされました」と宗守氏は当時を振り返ります。

改革・変革

 一年が経ち、自社はもちろん、取引先や業界、外部環境についての現状分析をして改革を試みるも、当時たった8名の社員からの反発にあい、思うように進みませんでした。社員からしてみれば変化すること自体が不安で、これまでの会社や業界の常識から外れたことはしたくないという思いだったのです。

 それでも多額の負債をどうにかするため必死でしたので、先代からのしがらみを全て断ち切り、思い切った取引業者の再選定や、事務的作業の効率化を図るなどの社内改革を始めました。なかでも、2002年の建設リサイクル法制定以降は、工事着工前の準備書類などの業務が増大したため、当時いた社員では全ての業務に専念することができなくなり、事務業務をまかなうために事務員を採用。そのことがきっかけとなり、営業マンや現場で働く職人を積極的に採用するようになりました。「このころから、以前から抱いていた解体業界の常識・習慣に対する違和感をどうにかしたいという気持ちになり、『解体サービス業として同業他社と差別化できないか』を考え始めました」と宗守は言います。

同友会入会と法人化への思い

 2006年に石川同友会へ入会しました。「このころには、実質的な経営者としての立場にいましたが、あくまでプレイングマネージャーに過ぎず、経営者として何一つ語れない自分に対して劣等感の塊でした。また、自分が経営者としての器かどうかにも自信がありませんでした」と宗守氏。その翌年、先輩から強引に誘われ、「経営指針講座」を受講し、成文化します。講座では、経営者としてのあるべき姿、労使見解(中小企業における労使関係の見解)の考え方から就業規則や人事考課制度の必要性、会議・ミーティングの定例化による意思統一の重要性を学びました。それまでは社員に共感などを求めることはほとんどありませんでしたが、その後は関係性を改めます。そして、「昭和の解体屋から平成の解体サービス業への変革」を使命とし、「サービスを提供し続ける為にも社員教育を推進していくべきだ」と実感します。

 また、永続的な企業の発展・成長を目指すためには一日も早く法人化し、企業にする必要があると気づき、先代の父親に代表の交替を嘆願しました。2007年に企業理念(スローガン)「お客様の未来と豊な地球環境のために~Leaving a beautiful earth for our children~」を掲げ、法人化とともに三代目を継承しました。
 このころには社員をかけがえのないパートナーと思うようになっていました。

「むねじゅうイズム」

社員旅行

 法人化の翌年に、経営指針発表会を開催。「売り手よし、買い手よし、世間よし」という近江商人の特性である「三方よし」の精神からきている同社の経営理念、「お客様の感動、社員の幸せ、地域社会・地球環境への貢献」を社員に発表しました。「このころから、自分の思いや会社の進むべき方向性に共感してもらうため、社内報を創刊し、『社長のメッセージ』という形にして社員に伝えています」と宗守氏。「私たちの仕事は一人では何もできない」「関わる全ての人に対する感謝の気持ちを忘れない」と考え、社内行事や協力業者を招いたBBQ大会などの機会を設けています。BBQ大会は年々規模を拡大し、招待した協力業者からも好評を得ています。経営指針発表会を開始して5年が経ち、3年前から合同企業説明会への参加、新卒定期採用、インターンシップ制度の導入を始めました。閉鎖的な業界とそのイメージを変えていくには、積極的に社会との関わりをオープンにしていくことだとの考えからです。

イメージシート

 そのほかにも、解体現場の外部足場に設置するイメージシートには全社員の似顔絵が描かれており、「宗重といったら社長の顔が思い浮かぶのではなく社員の顔が思い浮かぶような、社員一人ひとりが主役となる会社になっていきたいと願っています。現場に自分たちの似顔絵が張られることにより、プロとしての自覚と責任を感じてもらえたら嬉しいです」と宗守氏。
 
 技術や能力よりも、個人の価値観や人間性、考え方を尊重し、「身なり、挨拶、言葉づかい」といった人としての人間力・付加価値を追求しています。そして、「感動企業」として地域に必要とされ、愛される存在になるのが理想です

 男性の職場だと思われがちな業界ですが、同社では女性社員が現在9名在籍しており、その女性社員の意見や提案をとても大切にしています。会社のイメージキャラクターを活用し、さまざまなところに登場させ、工事終了後の挨拶まわりでは、アンケートに花の種を同封して配布し、その返答のお礼にエコバッグをプレゼントするなど、オリジナルグッズを多様化させ、お客様や解体現場の近隣の住民、同社と関わりのある全ての方との距離を近づける取り組みを行っています。

 「みんなが会社の構成員です」「自分たちの会社をみんなで良くしていこう!」と会社の方向性を示し続け、少しずつですが改善を進めています。「理想と現実の差を埋めるまでにはまだまだ時間が掛かりますが、やはり一人で、できることは何もなく、みんなで解決していかなければいけない事だと、これからも社員に伝えていきます。自分自身が社員とともに成長していける会社となるよう、これからも力を合わせていきたいと思います」と宗守氏は語ります。

社員集合写真

経営理念

私達は仕事を通じてお客様に感動を与えるサービスを提供します。
私達は社員一人一人が成長でき、働きがいのある企業を目指します。
私達は「安心、親切、丁寧」を追求し、地域社会・地球環境に積極的に貢献します。

企業理念(スローガン)

お客様の未来と豊かな地球環境のために~Leaving a beautiful earth for our children~

会社概要

創 業:1939年
設 立:2007年
資本金:2000万円
年 商:10億8,000万円
事業内容:解体・リサイクル
所在地:石川県金沢市畝田西1丁目112番地
TEL:076-266-6000
URL:http://munejyu.com/