【第7回】福井で1番感動を与えられる会社、オンリーワンの会社をめざして (有)上口モータース商会 代表取締役社長 上口 浩史氏(福井)

上口社長

(有)上口モータース商会 代表取締役社長 上口 浩史氏(福井)

 (有)上口モータース商会(上口浩史社長、福井同友会会員)は、上口氏の祖父が1964年に創業。1955年から営んでいた自転車屋を自動車整備工場へと転換した会社です。上口氏は高校生のときにこの会社を事業承継したいと思い、大学進学後トヨタの整備学校を経て、(有)上口モータース商会に入社しました。

お座敷社長と呼ばれて

社屋

 2007年、先代(祖父)の病気をきっかけに、28歳で社長に就任。社員全員が年上で、主な課題はコミュニケーションというところからのスタートでした。

 ある幹部社員との個人面談では「先代についてきたのであって、君についてきたんじゃないよ」と言われ、ある得意先(建設会社の社長)への挨拶まわりでは「君はお座敷社長だ。私たち創業者は這いつくばるような思いで会社を立ち上げて社長になっているが、君はお座敷に準備された座布団に座らせてもらっただけの社長だから」と言われるなど、経営者として認めてもらえていないことに非常に悔しい思いをしました。また、前年に社内のナンバー2が顧客名簿を持って独立したこともあって会社は赤字に。「その両方に対する『負けたくない』という思いが当時の発奮材料だった」と上口氏は振り返ります。

同友会と経営指針書

 福井同友会への入会は2003年の4月。先輩経営者のすすめで入会しました。社長になり、今までに先輩経営者から言われていた「決算書は社長の成績表」という言葉が重くのしかかってきました。そして、何とか赤字脱却をしたい、会社を変えたいという思いは募り、暗中模索を続ける毎日でした。

 経営指針書との出合いは2010年に行われた第3回北陸青年経営者三県合同例会のときでした。石川同友会の会員である報告者が見せてくれた経営指針書に、「これはすごい!」と新鮮な驚きを得ました。その後、自分たちもその報告者が受講した講座を受講したいと石川同友会に頼み込み、福井同友会青年部会の仲間2人と一緒に翌年の経営指針成文化講座を受講。最初、経営指針書に対する思いは「計画書みたいだから作ってみたい」「わかりやすくていいな」というあこがれに近いものでしたが、講座を受講することで「自分は自分の会社をどんな会社にしたいのだろう?」と冷静に考えることができました。また、「負けたくない」という思いだけでやってきて、どんな会社にしたいのか社員に対して明確に文書で示してこなかったことにも気付きました。

経営指針書を作ってわかったこと

社内の様子

 2013年の1月には年頭会議で2回目の経営指針発表を行い、取引先や銀行にも経営指針書を持っていきました。また、前年に初めて作った時には反映させることができなかった社員の言葉や考えも、完璧ではありませんがようやく今回は反映させることができました。「とはいえ、社員とはまだまだギャップがあるのも事実ですし、ひとりよがりになってしまっている部分は改善したいと思っていますので、『素直な意見を包み隠さず書いてほしい』と言って、経営指針書に対する意見や感想を社員から出してもらいました」と上口氏。

 経営理念から導かれる、追い求める会社像として「まずは福井で1番感動を与えられ、オンリーワンの会社になる!!」を掲げています。これを実現させるためには、社内が今よりさらに一致団結しなければならないことや、何をもって感動というのかを社員と深く共有していく時間が足りていないこと、そんな会社に近づいていくことで自分たちがどのようになれるのかというビジョンを社員が描けていないことなど、今後の改善点が見えてきました。

 現在、売上は社長就任当時の約2割増、経常利益率も向上し、黒字経営になりました。「しかし、黒字であるだけでなく、経営指針の改善を進めていくことで、日常の何気ないこと、マニュアルにないことであっても、社員それぞれが自分のアイディアで感動を与えることができる、それを実現できる会社に、そしてそれを評価してあげることのできる会社にしたいと思っています」と上口氏は言います。

まず一歩踏み出すこと

 経営指針は社長が一人で作っても経営の背骨にはなりますが、大事なのはどのように社員全員を巻き込んでいくのかということです。「まず作ってみて、その改善に社員を巻き込んでいくことで初めて魂が吹き込まれ、さらに多くのコミュニケーションを経て生きたものになっていき、それを突き詰めた先に自分が理想とする会社、社員が理想とする会社があると思います。1年や2年では完璧な経営指針は作れませんし、経営指針を作ったからといってすぐに成果が出たりもしませんが、作ることで必ず何かが変わります。少なくとも自分は、自社の方向性を示すことができ、迷いがなくなったので作って良かったです。作ってみなければ何も変わらないので、まだ経営指針を作っていない方も、まず一歩踏み出してみてほしいですね」と上口氏は語りました。

経営理念

・わたしたちは自動車に携わるプロとしてお客様の人生とともに歩み、カーライフサポーターとして安心・安全とさらに感動を提供いたします。
・わたしたちは正しい道を歩み、元気・提案力・技術力でお客様や地域の人に喜ばれ、選ばれるオンリー1企業を目指します。
・わたしたちは日々の活動を通じてお互いに信頼しあい、真摯に夢と向上心を忘れずに、自分と家族の幸せ、自己実現にむけて邁進しつづけます。

会社概要

創 業:1964年(自転車屋としては1955年)
資本金:1,000万円
年 商:4億7,000万円
事業内容:新車・中古車販売、車検、整備、点検、リースメンテナンス、鈑金、塗装、保険販売、用品販売、取付、福祉車両販売、メンテナンス
従業員数:18名
所在地:福井県福井市板垣3丁目1329
TEL:0776-35-3820
URL:http://www.kamiguchi.co.jp/
E-mail:info@kamiguchi.co.jp