【第37回】共に人生を切り開く会社づくり (有)フィットピア 代表取締役社長 杉村 隆寿氏(宮崎)

杉村社長

(有)フィットピア 代表取締役社長 杉村 隆寿氏(宮崎)

大学を卒業後、同業他社での修行を経て(有)フィットピア(杉村隆寿社長、宮崎同友会会員)に入社したのは25歳のとき。父親である社長からは、専務として経営の立て直しを命じられました。

 当時の同社は、創業から8年がたっていましたが、毎月100万円近い赤字がでていて、社長が不動産を売却しながら運転資金を投入して、経営を維持している状態でした。杉村氏は、独学で事業計画を学び、銀行との交渉を重ね、社員の削減をはじめとするいくつかの条件つきで1,500万円の運転資金融資を得ます。全社員にありのままを説明し「我が社はサービス業だ。その原点を自覚し、危機感をもって頑張ろう」と訴えました。手作りのチラシでの営業活動や、社員間の垣根をとりはらうためのミーティング、料金システムの改訂などさまざまな取り組みにより、1,400名だった会員数は3年間で2,000名を超え、黒字へと転換することができました。

社員の不安

 赤字体質から脱却し次のステップへと考えていた矢先、業績改善の原動力になり、将来を期待していた男性社員達が退職していく事態が起こりました。当時、第三セクターによる健康増進施設が近郊にいくつかできており、そこからの引き抜きでした。

 「あそこに行けば5年後はこれくらいの給料を保証してもらいました。フィットピアにいたら、5年後の僕はどうなりますか?」とある社員から相談がありました。「それはお前の頑張り次第だ。その保証された給料の倍をとっているかもしれないし、もしかしたら5年後に会社はなくなっているかもしれない」と杉村氏。「一緒に頑張っていきましょう」という反応がかえってくる、それくらいの関係ができていると思っての発言でしたが、その社員は辞めていきました。「社員の不安というものを自分は全く理解していなかった」と、杉村氏は当時を振り返ります。

社員と共に経営指針書に取り組む

社員の退職が続き、自分自身のやる気もでない状況がつづいているときに「いい勉強会があるから」と誘われたのが宮崎同友会でした。初めて参加した例会でのグループ討論でそうした気持ちを吐露したところ、さまざまなアドバイスや励ましをもらい、そこに感動してその場で入会を決めました。さらに、「経営指針をつくる会」にも参加することにしました。

経営指針を作成しても浸透させるのが難しいと聞いていた杉村氏は、社員に同友会で学んだことを説明し、「経営指針書をつくりたいからみんなで協力してくれ」と言って、社員と共に経営指針をつくることに取り組みはじめました。『労使見解(中小企業における労使関係の見解)』に学び、社員をパートナーとして、自立型企業をつくっていきたいという決意の実現にむけてのスタートでもありました。

 「仕事を通じて知識・技術・知恵を習得し、各人を成長させより豊かに人生を過ごすため」「元気づくりという理念を通して地域の人々や地域社会全体を活性化させるため」「人々のコミュニケーションをサポートするため」「健康な体作りをすることで快適な生活を送ってもらうため」。フィットピアの存在意義を考え合うことでさまざまな意見が出てきました。ここを起点にして、内部問題や外部問題、時代の流れ、環境の変化といったさまざまなデータを皆で分析し、それから方針を決め、短期戦略は今年・来年と、一年間何を重点的にやるのかを社員が一人一案ずつ担当し、半年間かけて作り上げ、発表会を行いました。

経営指針書があるから

 スイミングスクール

第1回目の経営指針の発表から3年目、杉村氏が社長に就任したころ、入社したばかりの男性社員が出社拒否・無断欠勤をするようになったことがありました。「その社員に対して、アルバイトで4年、正社員になって5年のある社員が、フィットピアの経営理念はこうだ、会社はこういうところをめざしている、だから一緒に頑張ろうと、一生懸命に話し込んでいるのを、偶然物陰から聞き、とてもうれしく思いました」と杉村氏。

 結婚を控えていたその社員に支配人就任を依頼しながら不安はないかと聞くと、「経営指針書があるから何をすれば売上が伸びて、売上が伸びると自分たちの給料としてどういうふうになるというのがはっきり分かる。5年後に向けてこのことを頑張れば、絶対そうなれると思っている」と彼は言いました。

 「将来への不安から辞めていった社員のことを思い出しながら、社員と共に、との思いを新たにした出来事だった」と杉村氏は語ります。

社員一人ひとりが企画 感謝祭「元気祭り」

元気祭り

毎年1月に経営指針発表会を行っており、第1回発表会から10年経ちました。この間、就業規則の見直しや賃金規定の作成、人事評価制度の作成にも取り組み、年に1回個人面談も実施。新卒の採用も毎年行い、同友会の「合同入社式」や「新入社員研修」に参加しています。

新入社員から中堅社員までが担当する企画会議では、シーズンごとの大人向けイベントや子ども向けイベントをはじめ、12月には「元気祭り」というお客様を招いての感謝祭の企画・運営を行っています。イベントの目的を考えることから、予算管理、告知方法と参加者の集約、当日の運営、報告書の作成まで。最初は杉村氏がリードしていましたが、今では支配人に任せており、こうした社員一人ひとりの経験が、経営指針の作成・論議・実行に生かされています。

会社概要

創 業:1988年
資本金:500万円
年 商:1億8,000万円
従業員数:34名(内パート・アルバイト16名)
事業内容:フィットネスクラブ・スイミングクラブ運営
所在地:宮崎県都城市宮丸待ち3021
TEL:0986-26-0777
URL:http://www.fitpia.co.jp