【第42回】インターンシップが、会社を変えた (有)たかえん 専務取締役  髙橋 基 氏(秋田)

(有)たかえん 専務取締役  髙橋 基 氏 (秋田)

 髙橋 基(もとい)専務((有)たかえん、秋田同友会会員)は、大学卒業後に秋田に帰郷し、家業の衣料小売店に就職。バブル経済崩壊後、さまざまな挑戦を重ねました。2007年宮城同友会主催の「第18期経営指針を創る会」を受講して経営指針を成文化。2008年1月に経営指針に基づき「デリカテッセン&カフェテリア 紅玉(こうぎょく)」を開店し、惣菜製造販売・飲食業に参入しています。現在は秋田同友会の理事で、県南地区会副地区会長兼社員共育委員長を担っています。

初採用の新卒社員が退職

(有)たかえんで、髙橋氏が初めて新卒採用を行ったのが2009年4月。しかし、期待の新人は半年ほどで退職届けを提出しました。「なすすべもなく、受け取らざるを得ませんでした」と髙橋氏。「今のわが社には、新人を大切に育てる気風がない。なんとかしなければ新卒の定着は難しい」と考えていたところに、高校生のインターンシップ(職場体験実習)の受託依頼が届きました。髙橋氏は「学校の教育活動に協力する中で、経営理念に明記しているような『よろこびを分かち合う仲間』として『次代の命を育む』力を、社内に育てることができるのではないか」と考えて、3日間の受託を決めました。

社内が劇的に変わった

同社にとって初めてのインターンシップ。迎える高校生のためになにをしたらよいか考え、「ただの『体験』や『作業』では、『仕事をすることの意味』を伝えきれない。当社の仕事の全体像を把握してもらえるように考えて、農産物の収穫、下準備、調理、販売、接客までを体験できる実習のカリキュラムを組みました。そして、私との面談に加えて、社員との面談の時間、さらには、インターン生同士の討論時間も設定しました」と高橋氏は言います。

「『仕事』には、いろいろな側面があります。厳しく辛い『労働』としての面。人間の暮らしを支える『生業』としての面。喜びや充実感という『生きがい・やりがい』という面。そして、さまざまな人々がともに支えあうという『協働』としての面などがあり、だれもが『仕事』を通じて社会的な役割を担い、多くの人と結びついて共に暮らしています。インターン生には、『仕事』は、人々の『想いのリレー』であることを感じてもらい、多くの人の『想い』を、私達の商品に込めて手渡すことの喜びを伝えたいと考えたのです」。(紅玉ブログ、2010.08.10.より)

その後、高校生からは「いつも買っている商品の一つひとつには、その野菜を作っている農家さん、その野菜を使って調理するお店の人など、たくさんの人の気持ちが込められていることを感じた」との感想がありました。また、インターンシップを迎えることで、社内の雰囲気が変わっていきました。

新卒が入社

そして、2012年6月、髙橋氏は意を決し、新卒の求人票を提出しました。1名の募集に対して応募してくれた生徒は、なんと14名でした。「感激でした。応募してくれた生徒さんには、当社での実際の仕事を、事前に知ってもらうための『体験実習』に参加してもらいました。これは、会社の側が受ける“選抜試験”という感じです。採用試験としては作文と面接を実施し、厳正に合格者を選抜しました」と髙橋氏は言います。

2013年4月。待望の新卒社員が入社しました。さっそく、宮城同友会の「合同入社式」*と「新入社員研修会」*に、髙橋氏と2人で参加しました。その新卒社員は、現在も意欲的に仕事に取り組み続けています。

*秋田同友会の「合同入社式」と「新入社員研修会」は、2014年4月に初めての開催をめざして、準備がすすめられ、髙橋専務は、担当の社員共育委員として中心的な立場で参加しています。

インターンシップの受託を、恒例として

(有)たかえんの、初めてのインターンシップ実施は2009年の8月。高校生2名、中学生2名での実施でした。その後、インターンシップの受託は、毎年続き、2010年には、2高校から合計5名、2011年には、2高校から合計12名、2012年には、2高校から合計11名。2013年には、2高校から合計11名で、さらに特別支援学校から、1名の長期(6カ月)の実習も受託・実施しました。

髙橋氏は「インターンシップは、あくまでも学校の教育活動の一環ですから、企業の採用・募集活動、そして、生徒の求職・志望先探しとは、一線を画して実施されなければなりません。それを前提条件として、学校と地元企業、生徒や家族と社員・経営者が、互いに理解しあい、信頼関係を築き・育てあうことをめざして実施するならば、お互いに得難い大きな成果が得られると確信しています」と、笑顔で語ります。

【 有限会社 たかえん 経営理念 】

一、私達は、あそびのあるくらしを守り、未来につながる安心と感動を手渡します。
一、私達は、人と地域の縁を大切にして、次代のいのちを育む企業です。
一、私達は、素直な気持ちで出会いに感謝し、よろこびを分かち合う仲間です。

会社概要

設 立: 1992年
資本金:900万円
年 商:約2億円
事業内容:惣菜製造販売・飲食店「デリカテッセン&カフェテリア紅玉」、衣料品小売店「チャミー」「たかえん」、リサイクル店「遊(ゆう)ず堂」、IT事業部など
従業員数:18名
所在地:(デリカテッセン紅玉) 秋田県横手市十文字町梨木字沖野66-1
TEL:0182-42-5770
(デリカテッセン&カフェテリア紅玉)
URL:http://kougyoku-deli.jp/
ブログhttp://blog.goo.ne.jp/kougyoku_deli/