【第2回】あるものを生かして環境にやさしい旅館に ながめの館光雲閣 (有)ホテル光雲閣 代表取締役 大内 正孝氏(福島)

大内社長

ながめの館光雲閣 (有)ホテル光雲閣 代表取締役 大内 正孝氏(福島)

時代の半歩先を歩く~設計図を描きながら~

旅館の外観

 安達太良山の麓に温泉旅館が立ち並ぶ岳(だけ)温泉。山懐にある源泉から7.8キロメートルを引き湯してくるお湯は、PH2.48の酸性泉です。

 そんな温泉街の一番高台に佇むながめの館・光雲閣(大内正孝社長、福島同友会会員)では、周囲の自然を生かして環境に優しいさまざまな取り組みを行っています。

設計技術者の目線で旅館経営

プラスチック戸を設けた二重窓

 同社に入る前は空調設備などを設計する技術者として活躍してきた大内氏。縁あって全く違った業種に携わる事になりましたが、それまでの経験をもとに、さまざまな社内の改善を続けてきました。

 「旅館という新しい仕事に入った当初は、できることといえば下足番、布団敷き、皿洗いだった」と笑う大内氏。そんな中でも、「設計」で培った考え方をもとに、幅広く現場を見ながら中長期の事業計画を構想しました。入社後2年目の1975年には、温泉の熱を活用する仕組みを自らが設計して構築。画期的な取り組みとして当時の新聞にも取り上げられました。

 その後も計画的に施設の改装を行うのに合わせて、エネルギー消費を抑える取り組みを次々と進め、昨年は断熱効率を上げるためにペアガラスの内側にプラスチック戸を設けた二重窓にしました。

 温泉旅館という業種は、お客様に快適な空間を提供するために、光熱費にかける費用の割合は少なくありません。そんな中でも、さまざまな取り組みを進める中で、同社は同業での全国平均の約半分の水準にまで達しています。

温泉排水をヒートポンプで活用

 37度で捨てる温泉の廃湯。しかしこれをエネルギーとして本格的に活用するには、すぐに腐食してしまう「酸性泉」という壁がありました。そんな中でチタン製の熱交換器に出合い、環境省の補助を受けながら、2010年からヒートポンプによる温泉廃水の熱回収を開始しました。これにより67.7キロリットルの灯油の削減、二酸化炭素の排出量は128トンの削減になりました。

川水の利用でひんやりさわやか

 また、1990年には山からの冷涼な川水を利用した冷風換気冷房を導入。同時に冷房用冷却水にも川水を利用して冷却塔を不要として効率アップを図るなど、冷房電力を半分程度にまで省エネすることができました。

時代の半歩先を歩く

ロビー

「今置かれている現実を数字化して、課題を見つけて向き合い、計画的にその課題を解決することが経営者の仕事。旅館の経営も設備の設計も、その根本は同じ」と大内氏は語ります。

 「時代の半歩先を歩く」が信条の大内氏。経営者として「お客様に喜んでいただく仕事の基本」や「人が育つ喜び」を大切にしながら、時代の動向を見極め、自社の状況を客観化しながら計画的に経営してきた裏付けが、「経営に携わってから営業収支がずっと黒字」という結果に表れています。

福島からエコを発信

 岳温泉では、大内氏が理事長を務める旅館組合のほか、同友会会員の國分農場(有)や地元の農家などと一体となった食品リサイクルを推進するなど、地域全体として「環境」「エコ」の取り組みを広げてきました。

 「東日本大震災と原発事故を経験し、否応なしに「エネルギー」という課題を突きつけられている福島県だからこそ、こうした取り組みを通して、一歩ずつ「環境に優しい」という価値観を広げていきたい」と目を輝かせる大内氏です。

会社概要

創 業:1957年
資本金:4,500万円
年 商:5億5,000万円
事業内容:温泉旅館
従業員数:48人
所在地:福島県二本松市岳温泉1-85
TEL:0243-24-2101
FAX:0243-24-2760
URL:http://www.kounkaku.co.jp/