【第13回】バイオマスプラスチック製のスクイズボトルでCO2削減に貢献 (株)日本興産 代表取締役社長 上地 護仁氏 (埼玉)

上地社長

(株)日本興産 代表取締役社長 上地 護仁氏 (埼玉)

環境に配慮したプラスチックを作りたい!

社内の様子

 沖縄出身の上地護仁氏((株)日本興産社長、埼玉同友会会員)は、「きれいな海を見て育ったことが、その後の人生に影響しましたね。関東の汚れた海を初めて見たときのショックは忘れられません」と環境にやさしいバイオマスプラスチックに深くかかわるようになった原点を語ります。
 
 1986年創業以来、プラスチック製品製造業界に身を置く中で、1999年に「環境に配慮したプラスチック製品をつくることはできないか」と埼玉同友会事務局に相談したところ、紹介されたのが「埼玉グリーンプラ研究会(当時 現在はNPO法人 JGK埼玉グリーンプラ)」という環境啓蒙団体でした。

 そこでの活動の中で、生分解性プラスチックを知り、興味を持ちます。生分解性プラスチックとは石油由来でありながら、いずれは土に還ることができる画期的なプラスチックで、地上にいるバクテリアが生分解性プラスチックを食べて、糞にするときに水と二酸化炭素になるという仕組みになっています。

 しかし、生分解性プラスチックがあっても、それをそのまま使ってボトルつくることはできません。素材を改質してボトルづくりに適したものを使用しなくてはならないのです。ところが、あらゆる国内メーカーに素材改質を断られます。だったら自分のところで素材改質からやってしまおうと上地氏は考えました。「理系卒でもないので、自分だけの知識で研究開発は無理。一から専門家を探し教わって進めるしかない」と、開発協力会社と共同で、埼玉県の経営革新推進事業「平成18年度埼玉県経営革新等促進費補助金」制度の助成金をはじめ、その他の県、独立行政法人、国の補助・助成・推進事業として研究を進めていきました。

バイオマスプラスチック誕生で新たな展開に

社内の様子2

 同社では、2002年から環境にやさしいバイオマスプラスチックを使用したブロー成形に取り組み、これまで古々米製プラスチックやトウモロコシ由来のポリ乳酸製プラスチックでのボトル成形を開発してきました。しかし、これまでのバイオマスプラスチックは、成形性が困難であることと、コスト面やボトルとしてのバリアー性などの性能面で従来のポリエチレンよりかなり劣っておりました。

 そんな中、2010年頃に日本に輸入され始めたブラジル産のバイオマスプラスチックに上地氏は着目しました。このバイオマスプラスチックは、植物由来のプラスチックでサトウキビなどを原料に生産されています。植物はCO2を吸収しながら成長するので、廃棄処理されるときには新たなCO2の増加にはならないという「カーボンニュートラル」の性質をもつ原料で、結果的にCO2の削減で地球環境負荷低減につながります。また、石油などの枯渇資源を原料としないので、化石資源の節約にも寄与し、原油価格の高騰にも振り回されることが少ないなど、さまざまなメリットがあります。そしてこのバイオプラスチックは、生分解性プラスチックよりもはるかにボトルとしてのバリアー性などの性能に適していました。

 成形試験を繰り返し2013年秋には、バイオマス度87%のサトウキビ由来バイオマスポリエチレンを100%使用したバイオマス製スクイズボトルのブロー成形に成功することができました。しかし、残念なことに、東日本大震災以降は、客先の環境問題への関心はすっかり影を潜め、市場の反応は「通常のプラスチックと変わらないし環境にもいい。だから何?」という冷ややかなものでした。

オリジナルのスクイズボトルで市場を広げる

スクイズボトル

 状況を打破するために行き着いたのは、スクイズボトルでした。「バイオマスプラスチックを使って、自社で金型を持っている商品のスクイズボトルをつくれば、製品仕様や価格も自社で決められるので、環境にやさしい商品が価格競争に巻き込まれずに、世に送り出せると考えたのです」と語る上地氏。

 スクイズボトルとは、あらゆるスポーツシーンで、水やスポーツドリンクなどの水分補給用に使用されるボトルのことで、胴体部を握ることにより中身が吐出される構造となっています。もともと日本興産で生産していたスクイズボトルのベース材をサトウキビ由来100%のバイオマスプラスチックに切り替えました。自社工場で製造ラインを持っていることで、一般プラスチック製に比べ、ほとんど変わらない価格帯での生産を可能にしました。

 また、このボトルの表面にオリジナルの印刷を少ない数量の注文に応じることで、企業、学校関係のスポーツチーム、サークルなど、少ロットでのオーダーも舞い込むようになりました。「10本から受注対応するので、子どものサッカーチームのロゴを入れたスクイズボトルをつくってほしいなどB to Cの注文が増え、お客様から少量対応が嬉しいとの感謝の声を聞くことも増えました。最近はペットボトルの持ち込みが制限される会場での使用など、スクイズボトルのニーズは高まりつつあります。いつか、自分の故郷である沖縄のオリオンビールや泡盛も、自分の手がけた環境にやさしい素材の容器に入れて販売できたらいいですね」と語る上地氏。環境にやさしいオリジナルのボトルに夢が広がります。

会社概要

創 業:1986年
資本金:1,000万円
事業内容:プラスチック製容器等製造
従業員:16名
所在地:埼玉県羽生市下新郷1052-2 
TEL:048-563-3934 
URL:http://www.nihon-kousan.com