【第6回】夢は大きく、志は高く!有言実行の事業継承  (株)田中建設 代表取締役 田中 一氏(愛知)

田中一社長

(株)田中建設 代表取締役 田中 一氏(愛知)

「大手工務店規模にしたい」

社屋(概観)

 (株)田中建設(田中一社長、愛知同友会会員)は、建設設備部門と建築部門に分かれ、工程管理を行っています。また「稲穂会」という同社の協力会社の組織を運営しており、職人同士が互いに助け合うことで、連携力のある施工が実現しています。

 創業者であり、現社長の田中一氏は、現在63歳。現場監督を15年間経験したあと、「大手工務店ほどの規模にしたい」と志を高く掲げ、36歳で同社を立ち上げました。「有言実行」がモットーのとてもパワフルな社長です。

お金のない苦しみ

 そんな田中氏ですが、やはり創業当初は苦労したと言います。建設会社は「建て替え業」とも言われ、多くの協力会社を束ねて建物を建てていきます。そのため、売上の20%の資金が会社にないと仕事ができないのです。しかし、当時はなかなか銀行からの融資が下りず、支払いのために親からお金を借りるなど、悩みは尽きませんでした。

 愛知同友会へは43歳で入会。その後、役員を引き受けても会社は火の車状態でした。しかし、会内でそのような素振りは見せず、周りの経営者に刺激を受けながら「絶対に黒字にする」と自分を奮い立たせました。また、当時は同友会で金融アセスメント運動が広がっていた時期ということもあり、銀行との付き合い方も学ぶことができました。そこで、会社の将来像を銀行へしっかりと伝えるようにし、少しずつですが銀行からの融資が下りるようになりました。

社員に伝える「3つの選択」

社内01

 田中氏は40代の時、「自分自身の経営者人生は60歳まで」と決めました。早めに社長の座を退いた方が、その分だけ後継者は長く経営することができ、自分の可能性を試すことができると考えたためです。では、後継者の育成のために田中氏が何をしてきたのか。田中氏は採用の面接の際に、「1.田中建設の社長になるか、2.独立して経営者になるか、3.田中建設を大きくするか」の三つを必ず問いかけると言います。同社の経営理念である「一人ひとりが成長する そしてすべての人に還元し共存共栄する」のように、現状維持で会社に勤めるのではなく、常に上をめざし成長していってほしいという熱い気持ちが込められています。田中氏が創業した節目の年齢と同じ30代半ばに社員がなった時、自分がどうなっていたいか考えてもらうためです。

現場経験が経営者感覚へ

 建設業界は許可業務のため、5年間の経営経験を積まなければ代表取締役になることはできません。入社した社員たちは、現場監督として決まった予算のなかで関連企業の職人を束ね、財務に関することに若いうちから触れることができ、「自然と経営者的な視点が身につくようになった」と田中氏は振り返ります。

 事業承継については、自分の年齢も考慮しながら、計画的に社員を役員へ登用していきました。そのなかで、初めての新卒で入社した渡邊亘氏(現・同社専務取締役、愛知同友会会員)へは、早い時期から「社長にならないか」と伝え、渡邊氏は三つの選択肢のなかから「田中建設の社長になる」ことを決意。同友会にも入会し、経営指針発表会を開催するなど積極的に学んでいきました。そして、2013年に初めて開催した経営指針発表会で、「2017年に世代交代をする」と宣言しました。

夢は大きく、志は高く!

社内02

 予定していた60歳までの経営者人生が5年延びた形にはなりましたが、現在では渡邊氏を中心に採用や事業計画などを立て、田中氏はそれを厳しくも温かい目で見守っています。また、経営指針発表会は毎年開催し、金融機関や取引先、協力会社や同友会の会員も参加しています。そして、長期課題の一つとして取り組んできた社長交代の時期は着々と迫り、田中建設・第2章が始まろうとしています。

 かつて、創業当初は「会社は俺のものだ」とワンマン経営をしていたという田中氏。同友会での学びのなかで、「会社は社会や社員みんなのもの」だと気づくことができ、社員全員に社長になれるチャンスを与えることで、一人ひとりが意見を出しやすい社風を作りました。今後は、働きやすい職場づくりや社員が学ぶことのできる場の提供と、稲穂会の職人が高齢化している現状から、若手職人の育成にも力を注いでいきます。会社の成果は自社だけではなく、協力会社の集まりである稲穂会の力がなければ成し得なかったと、常日頃から田中氏は社員だけではなく、経営指針発表会に参加する稲穂会メンバーの前でも伝えています。

 「大手工務店ほどの規模にしたい」と志を高く掲げ、田中氏1人から始まった田中建設。26年の時を経て、田中氏の想いを引き継いだ渡邊氏を中心とした会社に変わっても、「夢は大きく、志は高く!」という夢は続きます。

経営理念

一人ひとりが成長する そしてすべての人に還元し共存共栄する

会社概要

創 業:1990年
設 立:1990年
資本金:2,000万円
従業員数:9名
事業内容:土木、建築工事請負業、建造物の営繕工事請負、建築用材料の販売、建物の設計及び建築工事の監督、損害保険の代理業
所在地:愛知県名古屋市昭和区安田通二丁目10-2
TEL:052-331-7215
URL:http://www.tanaka-kensetu.net/