【第7回】めざすは「グローバル・ニッチ・トップ」、事業を承継しさらなる発展をめざす サツマ電機(株) 専務取締役 梶川 久美子氏(静岡)

梶川久美子専務

サツマ電機(株) 専務取締役 梶川 久美子氏(静岡)

 東名高速沼津インターに隣接し、JR沼津駅・三島駅まで約6kmの場所に位置する産業基地、沼津工業団地協同組合。その中に、サツマ電機(株)(梶川久美子専務、静岡同友会会員)はあります。同社は、クレーン業界をはじめとして製鉄高炉業界等の先端技術に対応した高頻度、高品質のブレーキの開発、製作、販売を一貫して行っている企業です。現在、専務取締役を務める梶川氏は、2016年11月に代表取締役となり、事業を承継します。

祖父が創業し父が育てた会社を承継するため、入社を決意

創業者・梶川清蔵氏

 1970年2月に梶川氏の祖父・清蔵氏が、付き合いのあった大手電機メーカーに請われる形で、電動機用制御ブレーキ製造の専門工場として会社を設立しますが、そのわずか5カ月後に急逝。当時専務だった梶川氏の父・弘一氏が実質的な経営者となり、27歳にして会社の手綱を握ります。その2年後に生まれた久美子氏は、経営者としての父の背を見ながら幼少期を過ごしました。

 梶川氏は両親から「将来はお嫁にいくもの」と育てられ、大学卒業後はスポーツアパレル業界に就職。その後、人の生き方に強く関心を持ち、転職コンサルタント会社を経て、大学のキャリアセンターで働きます。その4年後の2011年3月11日、東日本大震災が発生。ボランティアとして赴いた被災地で、「日常」が消滅するという事実、そこから立ち上がる人間の強さを目の当たりにしました。そして、人生は一度きりだと痛感し「自分にしかできないことは何か」と自問します。「身近で困っている人の役に立ちたい。会社が立ち行かなくなると、社員の生活も立ち行かなくなる。そうならないよう、自分の経験や力を発揮できるかもしれない」と考えた時、梶川氏は「家に戻ろう」と、サツマ電機(株)に入社する事を決意しました。「一度きりの人生、会社を経営する家に生まれたという特別な環境のなかで自分に何ができるか、それを前向きに捉えた結果」と梶川氏は言います。

「教育」というキャリアを生かし、社内を徐々に改善

社内のコミュニケーション

 入社してからの梶川氏は事業承継を見据え、常に「自分が社長だったらどうするか、同じ結果を出すために自分はどうアプローチするか」と考えながら、自分とはキャラクターの異なる社長を見てきました。その一方で梶川氏は、徹底して社長を立ててきました。専務が社長をないがしろにすれば、組織の体を成さなくなります。会社の最終目的を果たすため、各々がその役割をいかに全うするかが肝要であり、これは社員も役員も同じだと梶川氏は考えています。

 また、社員との関係性づくりと変革について、同友会の諸先輩から「急激に変えようとしてはいけない」と失敗談を交え教わっていた梶川氏。変化を焦らず「気がついたら社内が変わっていた」ということをめざしました。これが奏功し、社員とひどく衝突するようなことはありませんでした。「社員の文句が多い」とも聞いており、入社後それを実感した梶川氏は、全員と面談。以後、期に2回、全従業員と面談をするようにしたところ「コミュニケーション力がないのではなく、コミュニケーションの場がない」ということに気づき、現場から離れてのミーティングを設けました。さらに、社内の教育がないことに着目し「教育をしたらもっと伸びるのでは」と考え、半期に一度、外部講師による全社研修を始めました。それからというもの、社員同士のコミュニケーションが以前より活発になり、少しずつ自発的に動くようになりました。

次期社長がめざす「グローバル・ニッチ・トップ」

工業用ブレーキをつくる

 今後の展開について梶川氏は、「工業用ブレーキ業界の世界トップシェアをめざす」と大きな夢を語ります。すでに進出している東南アジアで、スケール、規格、ニーズなどさまざまな違いに直面し「世界の壁」を感じながらも、「いつかこの夢を成し遂げられる会社づくりをしていきたい。現社長は会社を日本で大きくした。この規模をそのまま守るのではなく、さらに次のステージをめざさなければ、それは成長とは言えない」と、次期社長としての想いを話します。

 また、梶川氏は同社のモットー「信頼に応える確かな製品作り」を「自社のアイデンティティ」と語ります。工業用ブレーキは、「行ってきます」と工場に出勤したお父さんが「ただいま」と帰ってくるという“工場の当たり前”を創るものです。このことを守り発展させるため、製造に加えて有償メンテナンスサービスを始めようと、体制づくりに取り組んでいます。「お客様の信頼に応える製品作りとサービス」を新たなモットーとし、事業領域の拡大に挑みます。

 「従業員の幸せ感や個性、特性を大事にし、個々の成長に社長の想いを押し付けないというのが大前提。私にできることは、土壌を育てて光と水をやることです。花は思い思いに咲き、その色を決めることはできません。その上で一度きりの人生、チャレンジをしていきたい。社長就任後はスピード感のある経営をしたい」と語る梶川氏。「世界のSATUMA」をめざす次期社長は、現社長から受け取るバトンを持って、従業員とともに大きな夢の実現に向かっています。

会社概要

設 立:1970年
資本金:1,000万円
事業内容:電気機器製造業  クレーン、一般産業機械・圧延補機用ブレーキ、電子ユニット、ハンドリフター
従業員数:36名
所在地:静岡県沼津市足高292-26
TEL:055-921-2577
URL:http://www.satumadenki.co.jp/