【第11回】社員と同友会の仲間に支えられ (株)センレイ 代表取締役社長 小玉 紘平氏(福井)

小玉紘平社長

(株)センレイ 代表取締役社長 小玉 紘平氏(福井)

(株)センレイは、1984年創業。主に塗装、防水、アスベスト処理工事をする会社で、小玉紘平氏(福井同友会青年部会員)は2015年の10月に創業者である父親(小玉暁会長、福井同友会会員)から会社を引き継いだ、2代目社長です。

同友会との出合い

業務の様子01

 紘平氏は高校三年生の時、周囲が就職活動を始めるなか、「うちの会社にくるだろう?」と父親に言われ、就職活動もしないまま高卒で同社に入社。それは、2歳年上の兄が美容師になるために大阪の専門学校に通っていたこともあり、「自分が父親の会社を継がないと」という、漠然とした思いからのものでした。しかし、仕事を高校卒業の延長線くらいに考えていた紘平氏は、「仕事で成果を出すことよりも大学や専門学校に通う友人たちと遊ぶ方に真剣な毎日だった」と当時を振り返ります。

 それから6年。仕事で成果を出すことを考えるようになった紘平氏でしたが、まだ「この会社をこうしたい」という思いはありませんでした。それが分かっていたのでしょうか、長年同友会に籍を置いている父親から「40歳以下の経営者・後継者が集まる会があるから、行ってこい」と言われます。それを受け、何となく青年部会の活動に参加した紘平氏の同友会1年目は、毎月開催されていた青年部会の例会に2回足を運んだ程度でした。

経営者として

 そんな紘平氏に転機が訪れたのは翌年。2010年5月に自身が青年部会の例会で経営報告をしたことをキッカケに、同友会と深くかかわり、自主的に参加するようになります。

 当時は、青年部会の定時総会で一人ずつ「まだ経営報告してないよね?何月にしようか?」といったように年間の報告者を決めており、指名されて断り切れずに経営報告をすることに。当然、「やらされ感」は強く、何を報告すれば良いのかも分かりません。また、同友会がどんな会なのかも理解しないまま臨んでいたため、打ち合わせでも大人気ない発言を繰り返していました。「それでも、先輩達は温かく受け止めてくれ、何とか報告ができる状態まで付きあってくれたことに、同友会の仲間の素晴らしさを感じた」と紘平氏は言います。

 そして、報告をしてよかったことが二つ。一つが、自分のことを覚えてもらえたことと自社を知ってもらうのに良い機会になったこと。もうひとつは、例会の終わりに司会が「せっかくなので」と、連れてきていた同期入社の社員に振り、話を振られた彼が発した一言を聞けたこと。「紘平と社長(現会長)はけんかをすることもあるけれど、自分は紘平についていくだけ」。「この言葉を聞いて、初めて『経営者として、このままではだめだ』と思った。このことは、一生忘れることはない」と紘平氏は語ります。

経営理念を成文化

業務の様子02

 同友会のよさを実感し始めた紘平氏は、主体性を持って同友会の活動に参加するようになりますが、短期間で劇的に会社がよくなる訳ではありませんでした。しかし、他ブロックの合同例会や青年経営者全国交流会に参加するようになり、全国の会員と接し、その実践の事例に触れることで、さらに同友会のよさが分かるようになりました。
 
 その内、今度は青年部会の役職を打診されるようになりました。最初はとても嫌でしたが、「頼まれごとは試されごと」と、自社の発展に繋がると思って引き受けます。そうなると、言われるようになるのが経営指針。特に、経営理念です。「よく『理念で飯は食えない』などと言われるし、言われて嫌な方がいるのは分かる。自分もずっと嫌だった。―でも」。続く紘平氏の言葉はこうです。「つくってもいないのに否定するのはおかしい」。そして、大阪同友会の「経営指針を創る会」に参加し、経営理念を成文化しました。紘平氏は「経営理念は成文化しようと思えばできないものではない。きれいな文言で表現することが目的でもない。経営者として、この会社をどうしていく、ここで働いていく社員をどうするのかという覚悟を持つためのもの。だから、自分は成文化して良かった」と声を大にします。

危機を乗り越えて

 その2カ月後、紘平氏入社後初めての大事件が起こります。同社は元々、受注した仕事を下請けが全部やっているような会社でした。ですから、売上が上がっても利益はわずか。利益率を考えれば、設定した目標売上を達成しても赤字ギリギリです。ですが、紘平氏も父親も「売上を上げていけばどうにかなる」と思っていました。そんな状況で、入ってくる予定だった大金が入ってこない。銀行に泣きついても、すぐには借りられない。

 社内でそんな話をしても、どうやって現状を打破すればよいのか分からない。分からなくて、同友会の先輩経営者に相談すると、現状を聞いた先輩は「できるなら、決算書を3期分持って、社員を連れてまたおいで」と言いました。「正直な話、自分や会社に見切りを付けられるのが怖かったが、これを本音で話しあわないと、仮に会社が一時よくなったとしても続かない」と思った紘平氏は、そのままを社員に伝えます。ありのままを聞いた社員たちは「じゃあ、自分たちも行く」と言ってくれ、先輩に「今、まず何をしなければいけないのか」を教えてもらいました。

 それを踏まえて社員と話をした結果、元々技術(資格免許)を持っていた社員が現場に出て、外注に出しているお金を社内で回そうということになりました。結果、そうすることで、何とか持ちこたえることができましたが、それはひとつの方法であって、社員と本音で話ができたことが重要でした。また、「本音で会社の現状を見てもらえる仲間が同友会にいたこと、そのキッカケをつくってくれた父親に対する感謝の気持ちでいっぱいだった」と紘平氏は振り返ります。

代表取締役就任。そして・・・

 それからさらに4年。紘平氏は代表取締役になり、会社は過去最高の経常利益を達成しました。しかし、紘平氏はこれを「自分が社長になったから」だとは思っていません。もちろん、目標にしてはいましたが、その準備を父親がさせてくれたお蔭だと思っています。父親に対する恩返しは、共通する「この会社をよくしたい」という思いに対し、自社がよくなっていっていると業績で示すこと。社員が持っている、「この会社で働くことを通じてこうなりたい」という思いをうまく引き出していくことができれば、社員にも、お客様にも選ばれる会社になると思っています。「もっと色々なことを同友会で主体性を持って学び、自社で実践することで、最短距離で目的に近づけると思っている」と、紘平氏は締め括りました。

経営理念

・私達はたがいに尊敬しあい夢の実現を目指します。
・私達は塗装業を通じ地域に感謝される企業を目指します。

会社概要

創 業:1984年
設 立:1985年
資本金:1,000万円
従業員数:5名(役員を含む)
事業内容:建築塗装工事、防水工事、アスベスト処理工事、床塗、リフォーム工事、環境工事
所在地:福井県福井市文京7丁目8-25
URL:http://www.kk-senrei.co.jp/