【第18回】歴史を継ぐということ 共栄印刷(株) 専務取締役 有賀 真治氏(福島)

有賀真治専務

共栄印刷(株) 専務取締役 有賀 真治氏(福島)

 郡山中央工業団地に位置する共栄印刷(株)(有賀真治専務、福島同友会会員)は1967年創業。創業者は父、現社長は兄。有賀氏は専務として、会社を盛り立てています。

 小学校6年生のころの文集には、将来の夢に「印刷業」と書いていました。小さいころからずっと工場に出入りしていて、会社は身近な存在でした。「継ぐかどうかは別としても印刷業に関わりたいと思っていたのは本当です」有賀氏。

 写植会社やカメラ店、地元の印刷会社等の勤務を経て、25歳で同社に入社します。

気づきと同友会

社屋

 日々業務に励んでいたある日、社内で東京営業所を開設する話が出ます。当時、有賀氏に役職はついていませんでしたが、当然のように自分が行くもの、行けるものだと思っていました。しかし、会長と社長からは揃って「君が行って何ができるのだ!」と一喝され、悔しい思いをしました。「今思えば現場の経験が長かったため、自分は何でもできると思い込んでいました。自分が井の中の蛙であるということに気づいたのは同友会に入会してからでした」と振り返ります。

 徐々に会社が大きくなり、営業社員が増えたということもあり、生産管理課を新しく立ち上げました。それぞれの営業社員は仕事ができても、個人商店のような状況になっており、営業と現場の橋渡しをする立場が必要だということに気づいたからです。

 前任者からの名義変更で、福島同友会に入会したのもその折でした。同友会と後継者塾内でのさまざまな出会いの中で、自分の知識不足をまざまざと見せつけられ、経営の勉強をしようと決心します。早い時期から会役員を歴任し、学びを深めました。

 同友会で学んで会社に取り入れた一つに「気づき」提案があり、今でも朝礼で毎日行っています。社外からのクレームは明らかに減少し、仕事が自分の部署だけでは完結しないということが社員の共通認識になりました。

東日本大震災をきっかけに

 同社でも、やはり東日本大震災はひとつのターニングポイントでした。自粛ムードもあり、印刷の仕事は減少し、売上も落ち込みました。

 そんな時だからこそ新たな仕事の一つとして、創業者でもある会長の自伝執筆・発行と自分史ノートの発売に着手しました。これまでの仕事は印刷請負業務がほとんどで、自社で定価の販売は行ったことはなく、初めての試みでもありました。

 さまざまな縁があって同じ会社で働いている社員です。創業者が改めて歴史を記すことで全社員、特に若い社員や社歴の浅い社員とも「共栄印刷」を共有することができます。また、歴史を知ることで、いつまでも変化しない本質的なものと、新しく変化を重ねて取り入れるべきことが見えてきました。

兄弟での経営

 有賀氏は兄弟での経営を「経営については、あくまで最終決定をするのは兄である社長ですが、自分の意見は遠慮せず、きちんと伝えることとしています。立場は違っても、会社を良くしていきたいという思いは一緒です。営業分野は社長、現場は自分とある程度は住み分けができているということも良い方向に働いています」と語ります。

M&Aから始まる事業継承

 2016年2月、突如舞い込んだM&Aの話。相手は創業80年を越える老舗の会社です。有賀氏は責任者として先陣を切り、相手方の会社の社員との面談、ミーティングを始めました。相手方の看板を残すという選択をしたのも、「歴史」を大切にしたかったから。いずれの会社にも伝えるべき理念があり、それがブレてしまってはいけません。バトンを渡すのが自分の子どもでも、自社の社員でも、はたまたM&A先の会社でも同じです。

 お互いの会社の社員が良いところを見せようとしているということ、お互いの得意とする技術などを共有できたということもあり、仕事の精度は上がっています。現在は本社・東京営業所・グループ会社でテレビ会議システムを導入しており、今後さらにネットワーク環境整備等に取り組む予定です。

 2017年には創立50年を迎える共栄印刷。「自社と印刷業界をこれからも存続させ続けることが自分の使命です」と語る有賀氏の挑戦は続きます。

社是
顧客に満足を 私達はお客様に価値ある印刷物を提供します
会社に利益を 私達は我社の「存続と発展」を目指し 地域社会に貢献します
社員に幸福を 私達は楽しく働ける職場 豊かな生活造りを目指します

スローガン
共に創り 共に絆(つな)ぎ 共に歩む

会社概要

創 立:1967年
設 立:1972年
資本金:1,000万円
年 商:5億5,000万円
事業内容:一般印刷(パンフレット、カタログ、出版印刷、新聞・広報縮刷版、名簿、チラシ、官庁の予算・決算報告、定期刊行物・自費出版)
従業員数:34名(男性27名・女性7名)
所在地:福島県郡山市田村町上行合字西川原7-5
TEL:024-943-0001
FAX:024-944-5977
URL:http://www.kyoei-p.co.jp/