【第31回】5年間の療養を乗り越えて 選ばれる会社づくりに全力 (株)センティス21 代表取締役社長 保坂 剛志氏(山梨)

保坂剛志社長

(株)センティス21 代表取締役社長 保坂 剛志氏(山梨)

 防犯・防災設備の販売施工、メンテナンスを主とするセキュリティー事業部、工事現場などに警備員を派遣する警備事業部の2つの柱で営業する(株)センティス21(保坂剛志代表取締役社長、山梨同友会会員)。いずれの事業部も山梨県内でのシェアはトップクラスにあります。

 両事業とも法規制強化の流れのなか、これからも伸びる業界といわれています。一方では人材の確保難が続いており、仕事はあっても受けられない現実があります。また、同業種間での人の流動化も激しく労務単価も上昇し、利益の出にくい体質になっているといわれます。

 大学を卒業後、東京の商社で営業職を務めていた保坂氏は1997年に帰郷、父か社長の同社に入社することとなります。

赤字のセキュリティー事業部の立て直し

 入社後は、年間で2,500万円ほどの赤字を出していたセキュリティー事業部の立て直しを命ぜられました。後継者としての自負もあり、必死に新規開拓に奔走。売上を3倍に伸ばし5年で黒字化を実現しました。

 その過程ではさまざまな問題がありました。考え方の違いで社長との衝突は絶えず、特に現場の従業員への指導方針の違いが日常的な問題になっていました。事業部を立て直し、軌道に乗ったころ、これまで無理を強いてきた体が限界に達します。

5年間の長期療養

 突然呼吸が苦しくなり、出社しようにも運転もできず体が動かなくなります。いわゆる「パニック障害」に襲われました。2003年から2008年まで、長期に渡り自宅での療養が続きます。

 当時はパニック障害など精神的な病に対する理解もなく、周囲からは怠けているとみられることもありました。保坂氏は療養中であってもなんとか会社の売上に貢献すべく、少しでも体の動く日は自転車で自宅周辺を営業に回り、売上を確保していました。

不安定な中で専務取締役に就任

 療養が続くなか、社長から2007年に専務取締役への就任を要請されます。保坂氏は「役が付けば、それも励みになって復帰できるだろう」という父親の考えがあったと思うと振り返ります。2008年に入り徐々に仕事に復帰できるまでに回復し、同時にセンティス21の子会社である「あさひ警備保障」の代表取締役にも就任することとなります。

センティス21の代表取締役へ

 現場に完全に復帰した保坂氏は、数年後の社長交代を見据えて準備を始めました。まず取り組んだことが「経営理念の成文化」です。山梨同友会の経営理念合宿に参加し、父がつくった社是である「誠実・信頼・実行」を引き継いだ経営理念を完成させました。

 「成文化した理念を発表したい」と申し出ますが、「今それを発表されても困る。止めてくれ」と当時の社長であった父の弟からストップがかかります。「不満でしたがその時に発表していたら従業員も混乱し社内の結束が崩れていた」と振り返ります。

 2015年、47歳にして会長である父から社長のバトンを引き継ぐことになりました。特に面と向かって父から社長就任を依頼されたことはないという保坂氏。一方で父に対し事業承継についての考えを聞いたこともないといいます。

社員の皆さんと

「人を信じる」父の姿勢を受け継いで

 「父が伝えたかったこと、それは人を大事にするということ、気づくまで待つという姿勢。つまり人を信じるということだと思う」と保坂氏。人を大事にするということは、一人ひとりの顧客はもちろん、従業員に対しても仕事ができないからとクビを切ることがなかった父親の一貫した姿勢にあると語ります。

 社長就任時の朝礼では「明るく笑顔で働ける会社づくりに全力で取り組む。従業員皆さんの協力をお願いします」と力強くあいさつしました。これまでは営業の第一線で売上確保のために走り回ってきましたが、現在は社内で従業員一人ひとりと向き合っていくことを大切にしています。また、今までは断っていた小学校からの職場見学を積極的に受け入れ、社内でのあいさつ運動の実施や講師を招いてのラジオ体操を開催するなど明るい社風づくりに取り組んでいます。

「社長になった今、苦しい判断でも決断を下すのは自分自身。働く人に選ばれる会社でありたいし、給料だけではなく、働きやすさ、楽しさを社員には実感してもらいたい」と笑顔で語る保坂氏。会社には専務時代に成文化した経営理念が大きく掲げられています。

会社概要

創 業:1987年
資本金: 2500万円
事業内容:セキュリティー事業、警備事業
従業員数:170名(内 臨時社員100名)
所在地:山梨県甲府市後屋町363
TEL:055-243-6851
URL:http://www.centise21.com/