【第36回】会社に一体感を生む双方向のコミュニケーション (株)三渓設備 常務取締役 渡邊 光一氏(香川)

渡邊光一常務

(株)三渓設備 常務取締役 渡邊 光一氏(香川)

入社に至る経緯

(株)三渓設備(渡邊光一常務、香川同友会会員)は、祖父である渡邊秀武氏が1974年に創業しました。新築住宅の配管工事、浄化槽の設置や公共工事など高松市内を中心に香川県全域で工事を行っています。現在は父親である渡邊光章氏が代表取締役で、2年後に事業継承を予定しています。

 渡邊氏の少年期の休日は、普通であれば友達と遊びたいところですが、手伝いをしたらお菓子を買ってくれたり、昼ごはんに食べたいものを食べさせてくれるなどしてくれたため、父親について行き、仕事の手伝いをしながら育ちました。

 高校へ入学してからも手伝いをしたり、アルバイトをしたりと学ぶことよりも働くことに興味があり、卒業と同時に父親の会社に入りました。今から考えると、どうせ父親の会社に入れるだろうという甘えもあったと感じています。

突然の社長の入院で芽生えた危機感

 入社してからは毎日毎日、目の前の仕事をこなすのに精一杯で、経営については考えることもなく日々を過ごしていました。またこのころの会社は一体感がなく、自分の言われたことだけをやっていればいい。自分は自分、他人は他人という風潮で、ベテランの作業員が「自分たちは先に帰るから、後は若い者で頑張れよ」というようなことを平気でいってしまうような社風でした。そのことに対して疑問はありましたが、自分もただ先輩に言われたことをこなすだけで、どうにかしてやろうという気持ちはありませんでした。

 そういった状況が何年か続いていたある日、突然社長が体調を崩し、渡邊氏が現場の手配、打ち合わせ、見積もりなどをやらなければならなくなりました。わからないことだらけで取引先からもクレームの連続でした。そんな状況の中、現場作業を終えてから毎日、両手いっぱいに書類を抱えて夜遅くまで病院にいる社長のもとに行って打ち合わせ、そのまま会社に戻って次の日の仕事の手配、そんなことを繰り返しながら父の退院までやり過ごしていきました。

 ようやく、社長は回復して業務に復帰しましたが、このことをきっかけに、自分は後継者としてしっかりとこの会社を継いでやっていくことができるのか不安を感じるようになり、経営についても真剣に考えるようになっていきました。

経営指針を創る会で気づいたコミュニケーションの重要性

 事業継承に不安を感じていた中で、参加した香川同友会の経営指針を創る会では、「何のために経営しているのか」をとことん考え続ける半年間でした。受講当初に、会社の規模拡大すること、売上を上げることばかりを考えていて、社員に対しての思いが全く入っていないという指摘を受けました。そこで、社長や同じ会社で働いている兄弟、社員たちとしっかりと話をしてきなさいと言われ、今後の会社のことについて話しました。話をすることで社員が会社に対して自分が考えていたよりもはるかに当事者意識をもって考えてくれていることがわかり、自分は今まで社員に対して一方的にこちらの伝えたいことだけ伝えていて、話をきくということができていなかったことに気づきました。

 そして、会社は経営者だけのものではなくて社員と経営者がパートナーとしてともにつくっていかなくてはならないということを学び、双方向のコミュニケーションを図っていくため、月に1回ランチをしたりするなど積極的に交流を図るようにしました。また、兄弟が仲良く同じ会社で働いている利点を生かし、現場や内勤それぞれをまとめてもらうようにしました。すると助け合いの風土と社内の一体感ができてきて、入社した当初の自分が良ければそれでいいという風潮もなくなってきました。

2年後の事業承継に向けて

 「2年後の事業承継に向けてまだまだ不安なことは多いです。今後の課題の一つとして、将来のビジョンを描きたい」という渡邊氏。将来のビジョンを描くことで、将来を担う若手の社員が自分たちの未来に希望をもてるようにわくわくするようなビジョンを考えたいと考えています。

 三渓設備は会社の強みである社内の一体感を生かし、一つひとつの課題に対して誠実に向きあい、社員が共に会社を支えていくパートナーであるということを忘れずに、地域になくてはならない会社をめざしています。

社員と共に

経営理念

三渓設備は技術を育て生きる(活きる)場を提供します。

会社概要

創 業:1974年4月
資本金:1,300万円
事業内容:住宅、アパート新築設備工事
従業員数:24名
所在地:香川県高松市三谷町2661-3
TEL:087-889-1890
URL:http://www.k-sankei.com/