【第7回】郷土に勇気を与える会社であり続ける (株)水上商会 代表取締役社長 水上 博司氏(石川)


いつかお客様や地域に喜ばれる会社に

水上博司社長

(株)水上商会 代表取締役社長 水上 博司氏(石川)

社屋

 水上博司氏((株)水上商会社長、石川同友会会員)約20年前に父親が創業した会社に二代目として入社、間もなく主のLPガス販売から新たに建築、水道部門を拡充しました。地元の白山麓は少子高齢化や人口減少、空き家や耕作放棄地の増加など地域の課題が山積みの地域です。またそのころは二代目を継ぐにあたり経営者として何をめざすのか、世の中のこともあまり知らず常に孤独感がありました。そんななか、7年前に同友会を勧められて、よい会社、よい経営者について考えさせられることになります。

 石川同友会へ入会してすぐに、社員に「よい会社にするために経営指針をつくろう」と話すと、逆に社員から「よい会社とはどんな会社でどこにあるのか」と聞き返されました。それなら実際に見に行こうと、伊那食品工業(株)へ視察に行きました。そこでは、社員の誇りに満ちた顔や立ち居振る舞いに驚き、地域と共に歩む手本を見ることができました。水上氏はそこで「いつか、お客様や地域に喜ばれる会社になろう」と社員に語りかけました。

三位一体に取り組む

経営指針発表会

 経営指針の発表は6回目を迎えました。経営理念は「エネルギーを通してすべての人のくらしと未来にわくわくを提供します」。物質的なエネルギーだけでなく、人と人との間に流れるエネルギーも含め、お客様には元気を、地域には勇気を、社員には希望を与えるようなチームワークをつくっていこうという思いから作成しました。

 その後、新卒採用は会社のエンジンになると考え、取り組みを始めます。若い新卒者を雇用すると、会社の雰囲気が新鮮になり、新たな課題も見えてきます。社員の自主性を重んじる取り組みとして、社員教育プロジェクト、環境整備プロジェクト、お客様満足プロジェクトを実行し、さらに「企業変革支援プログラム」を活用して労使見解(中小企業における労使関係の見解、中同協発行パンフレット『人を生かす経営』所収)をベースに到達点の共有化を図っています。経営指針、社員教育、新卒採用、と三位一体の経営に取り組むようになりました。

地域と業界にも理念を

 次に水上氏は「よい経営環境をつくる」ということについて考えます。中小企業は自社だけでは解決できないことがたくさんあり、結局は力を合わせるということだと思うようになりました。一人の自主では何もできない、どう分かりあうかという民主があり、連帯で力を合わせていくことが地域づくりであり、これがよい経営環境と合致すると考えます。

 そこでまず、いろいろなところで理念をつくる呼びかけをしました。その結果、地域で「愛と笑顔があふれる地域(まち)Z(ゼット)」という理念ができ、町会のお祭りや催事にはお揃いのTシャツを着て、合言葉としてこの理念を交わしあい、地域の絆を深めています。

 業界ではリーダーが変わるたびにやることが変わって、これではいけないと思い理念をつくる提案をし、皆で作成しました。理念の「あなたの地域(まち)を守ります。好きやから♥~愛着、安全、安心、信頼~」を掲げ、理念に沿った事業を行うようになりました。例えば子どもたちに火育(ひいく)*と食育に取り組むイベントなどを行ったり、地域に独居老人が増えるなか、業界として定期訪問を実施し、ゆるやかな見守り活動を行っています。

*安全な火のおこし方や扱い方、火を使った調理など、子どもたちが「火に親しみ、火を学ぶ」体験を通じて、豊かな心を育み、生きる力を高めること。

思い出をつくる地域コミュニティー

COTO×COTO

 ある時、見守り先のお年寄りが入院し、見舞いに行くと、ご飯も食べられず歩けない状態でしたが、一言「何も楽しみはない。わしは思い出だけで生きている」と言われました。そのとき「思い出を作ることの大切さ」に気づかされ、「こういう人にも勇気や希望がある社会にするためにも、楽しい思い出や楽しいつながりを提供していきたいという思いが込み上げてきた」と水上氏は言います。

料理教室

 そして、経営理念(社会性)「地域社会を愛し感謝を忘れず、母なる郷土に勇気を与える会社であり続けます」の具現化として、新社屋の建設と同時に「わくわく幸せ工房COTO×COTO」というコミュニティー施設を作りました。「コトとコト、人と人がつながる場所」をコンセプトに料理教室やワークショップ、体験教室や展示会など開催しています。地域コミュニティーの創造とライフスタイルの提案を大きな目的としています。

地域づくりと経営を一体化

 さらに地域づくりの挑戦として、同じ地域の他団体と手を取りあい、地域の絆づくりを図っています。そこでは、地域貢献は地域の人だけでなく、地域の外にも届く価値を生み、人を呼んでくることも大切なことであり、地域を守ることだけではないことを学びました。 

 「地域づくりには大事な視点が二つある」と水上氏は言います。一つは、愛する地域の課題を仲間と共有し、それぞれの強みで改善する役割を担うこと。もう一つは、愛する地域の未利用資源を生かし、仲間と新たな価値を創造するということ。そして、地域の一員である経営者として、地域の暮らしを支え、地域資源を生かし、地域の課題を克服し、地域の若者を雇用できる中小企業でなくてはならないと思っています。

 「自社の経営だけを考えていては永続が難しく、経営指針の中に地域のこともあわせて考え、地域づくりと経営を一体とした実践ができるように、これからも皆で知恵を出しあっていきたい」と結びました。

経営理念

エネルギーを通してすべての人のくらしと未来にわくわくを提供します

●絶え間なき進化・成長を通して、お客様に元気を与える会社であり続けます。
●地域社会を愛し感謝を忘れず、母なる郷土に勇気を与える会社であり続けます。
●夢のある人生に向かい、お互いが希望を与え、力を合わせる会社であり続けます

企業概要

設 立:1973年
資本金:2,700万円
事業内容:LPガス販売、上下水道工事全般、住宅・マンションの建築・改修工事
従業員数:17名
所在地:石川県白山市小柳町ろ121-1  
TEL:076-273-0234
FAX:076-273-3466
URL:http://www.maidosan.net/index.html