【第25回】社長が変われば会社が変わる第二創業 有限会社 上室製茶 代表取締役 上室(かみむろ) 和久氏(鹿児島)

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有限会社上室製茶 代表取締役 上室(かみむろ) 和久氏(鹿児島)

 上室和久氏(上室製茶社長、鹿児島同友会会員)は鹿児島県志布志(しぶし)市で祖父の代から続く製茶業の3代目。志布志市は鹿児島県内でも製茶業が盛んな場所です。1997年父親の代で法人化を行い、今期で20年目を迎えます。

3代目として入社

 上室氏は、幼少期から家族が一緒になって働く姿が楽しく見え、父親の働く姿や生き方を見ながら年齢を重ねるごとに製茶業への夢が大きくなり、高校進学時には家業を継ぐことを心に決めていました。地元の農業大学校を卒業後は、静岡の同業者で2年間修業を積み、上室製茶に入社しました。入社時、父である社長は息子が帰ってきたことで戦力アップ、そして経営のスピードアップができると楽しみにしていたようです。上室氏自身は「利益追求がすべてではない!お茶の素晴らしさを伝えることが自社の使命!」という理想論で仕事を行い、満足していました。

 入社4年後、年々栽培面積を増加させていきました。しかし売上が順調に伸びていくはずが、なぜか徐々に製品単価が下がり始めます。原因には相場の低迷もありますが、自分自身の技術不足による品質の低下、生産コストの増加などで利益が出ない時期に突入してしまいました。「気持ちだけが焦り、今考えれば定着しない社員を『単なる労働者!自分たちの道具!』と考え、一時は『社員は頼りにならないから、自分が頑張るしかない!』と、がむしゃらに働き・勉強をして技術・感覚を磨いていた」と話す上室氏。若い社員は相変わらず、数カ月から1年で辞めていきましたが、経営は家族内で盛り立てつつ、伸び悩みながらもなんとか経営を維持していきました。またライバルの会社と差をつけたい一心で設備投資にも走りました。その年は売上がアップしましたが製茶業界の衰退期と重なり相場の下落に伴い、年ごとの返済額が重くのしかかり経営を圧迫する結果となりました。

同友会に入会

社屋

 経営の難しさを痛感しているころに鹿児島同友会に出合い、入会しました。グループ討論では、だれにも相談できずにいる自社の問題や親子間の問題を切実に話すことができ、悩みを相談する機会が持て、楽しく学べて心は豊かになっていました。しかし社内での実践が伴わず、社員の気持ちがくみ取れず、自分本位の社命を出してしまっていることを深く反省しました。あらためて同友会の三つの目的「よい会社をつくろう」「よい経営者になろう」「よい経営環境をつくろう」をしっかりと自分の胸に刻み始めました。

 そして「本気の学び」に手を差し伸べてくれたのが、「経営指針セミナー」でした。山積みになっている経営課題や悩みを抱えての受講で、すぐに自分の意識レベルの低さ、そして心の奥底では、まわりは自分の仕事のサポートのみしてくれれば良いと考えていた自分に気づきました。さらに経営力低下や社員が続かない原因をつくりだしていたのは自分自身と悟り、「原因を相手に求めたらいけない。まずは自分の見直しをしなければ」と気づきました。「長期間にわたり経営指針セミナーを受講して、経営理念や経営指針も大事だが、本当に直近で自社に必要な内容に気づかされたことも大きな収穫です。会社が変わる転機をもらい、とても感謝しました」と上室氏は言います。

新たな事業形態

商品

 「経営指針を作成した後は、社員をパートナーと捉え、コミュニケーションを取るように心がけ、意見や考えを聞くようになった」と話す上室氏。本業の製茶業の市場が年々縮小していく中で、新たに抹茶の原料の製造にも取り組むようになりました。抹茶は抹茶ラテやスイーツの材料など海外で大きなブームとなっています。抹茶製造は、社員に任せています。

 上室氏が幼少期のころは家業で休みの日も忙しく両親が働いている姿を見ていました。現在では、家業から企業になり社員も増えました。「社員にはそれぞれの家庭があり生活があり、家族サービスが充実できるように福利厚生も見直しをしています。よいものをつくってもつくる人がいない会社、人が集まってこない会社は農業界でも廃業になるのではと予想をしています。人育て、社内の仕組み、福利厚生を整備し、同じ製茶業のモデルケースの先駆者になりたい」と話す上室氏。今後の市場変化を常に意識しながらも会社の発展に前向きに取り組む、上室氏の挑戦はこれからも続きます。

経営理念

 自己の成長を「モノ」づくりに活かし農業の新たな価値を創造し物心両面の幸福の追求と地域社会・お客様にとって無くてはならない存在であり続けられるよう常に考え行動します。

会社概要

創 業:1947年
事業内容:お茶の生産、加工、販売
従業員数:6名
所在地:鹿児島県志布志市有明町伊崎田953-1
URL: http://chanokura.jp/