【特別版】「感謝」と「承認」の風土創りと新しい働き方へのチャレンジ (株)現場サポート 代表取締役 福留 進一氏(鹿児島)

福留進一社長

(株)現場サポート 代表取締役 福留 進一氏(鹿児島)

はじめに

 私は創業社長です。大学卒業後はOA機器メーカーの営業として就職し、そこで現在の事業でもある建設業向けのシステムの新規事業を担当。その後38歳の時にこの事業で独立しました。

事実前提経営と価値前提経営

 自社の付加価値生産性と離職率ですが、離職率のピークは創業4年目。3~4期目後、さまざまな取り組みにより離職率は下がりますが、生産性はすぐには上がってきません。現在の付加価値は、3~4期目を上回っています。離職率の高いころは少数精鋭で生産性が高く、逆にできない人は辞めていく会社でした。そのころと比較すると、循環になってきたと思います。

 最初の4年程度は「事実前提経営」(今起こっている事に対処し、現在の利益を最大化する経営)をしていましたが、その後「価値前提経営」(中長期の理想的な状態を描いて、そこに向かって今何をするかを選択する経営)に舵を切りました。そのために経営指針の作成と新卒採用、「共育」を行い、給与アンケート・社員満足度調査・個人面談などを継続して実施しています。また新卒採用も継続することが重要なので、業績が厳しい時でも継続しています。採用活動で痛感したのは、他社と比較されるという当たり前の現実でした。自社のレベルを上げ差別化しないと埋もれてしまいます。

離職率について

ドラマのような巡り合わせ

 採用活動から一人ひとり弊社で仲間として働いてもらうまでの過程にはドラマがあります。

 例えば4年間務めてくれた営業Sさんの退職。創業社員の一人が飲み会の席上で、彼に「ずっと現場サポートで頑張るんだよね」と聞いたところ、黙って何も応えなかったそうです。当時の現場サポートは事実前提経営の真っ只中で、将来を描けない会社では社員は頑張れないということを痛感し、経営指針成文化セミナーへ参加。結果としてはSさんの退職に伴う社員募集により2名も採用することができました。この2人は現在の本社営業グループ長と営業企画グループ長です。人が入れ替わっても強い組織があり、組織が成長すると良い人が来ることを学びました。

 次に、4月に入社予定の内定者Nさん。彼は大分出身で福岡の国立大学の大学院生です。地元の大手メーカーに内定をもらい弊社を選択することを悩んでいましたが、口説き続けました。その後、大反対のご両親に3日間話してやっと納得してもらったそうです。その彼は、入社前にもかかわらず地元の建設会社に、いろいろと話を聞かせてほしいと訪問したそうです。その行動力に期待が高まるばかりです。ほかの社員もそれぞれドラマがあり、一人ひとりの人生に真剣に向き合っています。

採用活動の取り組み

 弊社の採用には「価値観を共有できる人を優先して採用する」という方針があります。一次選考での面接は私が務めますが、その役割は弊社に入りたいと思ってもらうことです。学生に選んでもらうために私が面接を受けるようなスタンスです。二次選考後に、不採用の通知を送付する際には、必ず理由と社長のコメントを入れています。説明会などでは座談会を行い、多くの社員に触れてもらうようにし、会社のありのままを見せています。内定辞退率0%、新卒3年以内の離職率0%という数字も、ミスマッチが起きないよう、ありのままを見せているからだと思います。

社内制度を機能させるためにどうするか

 会社の状態を氷山に見立ててください。目に見える海面上が制度やシステム、海面下に「仕事のやり方」、その土台となる「人と人との関係」です。システムや制度は、「個の欲求と組織の欲求を相互に補完できるシステム・制度が整っている」これが理想です。海面下の「仕事のやり方」の理想は、「自律した個々の社員が、仕事のやり方を工夫し付加価値生産性を高める仕事のやり方を常に考えて実行している」経営者共通の課題だと思います。そして最も大事なところが「人と人との関係」であり、理想の姿は「『感謝』と『承認』によって、笑顔あふれる社風が醸成されている、変化を許容できる先進的な風土がある」ことだと思います。自社では、無制限時短勤務やフレックスタイムなどシステム・制度として多数実践しています。仕事のやり方については、自律主義が大事だと考えます。「人と人との関係」では、社員は仲間という考えに基づいてさまざまな仕組みがあります。例えば経営幹部が長期疾病者の復帰のためのガイドラインを作成したことがありました。社員を仲間だと思っているからできたことです。

会社概要

設 立:2005年
資本金:1,500万円
年 商:3億4,500万円
事業内容:建設業向けクラウドサービスの企画・開発・販売・サポートおよび付随するコンサルティング
従業員数:39名(うちパート・アルバイト4名)
所在地:鹿児島県鹿児島市武1丁目35-4
TEL:099-251-9971
URL:https://www.genbasupport.com/